◆賑やかな夏の星たちが西空に傾くと秋の夜空はずいぶん寂しくなり、南空の一等星フォーマルハウトが印象的です。秋の夜空は古代エチオピア伝説の舞台。アンドロメダ姫の腰の近くに双眼鏡を向けると、230万光年彼方のアンドロメダ銀河が見つかります。
◆小さな天体は太陽や惑星の引力の影響を受けやすいので、その軌道は複雑で不安定です。これらの天体はいつ地球との衝突コースをとるかわかりません。実際、小惑星の中には小惑星帯を外れて惑星軌道に接近するものがあり、これを特異小惑星と呼びます。惑星は昔から小天体の衝突にさらされてきました。金星は他の惑星とは自転の方向が逆です。火星の自転軸は不安定でフラフラしています。天王星の自転軸はほとんど横倒しです。土星や木星など巨大惑星には岩や氷でできたリングがあります。これらは小天体が衝突した結果ではないかと考えられています。もし直径数㎞の小惑星が地球に衝突したらどうなるでしょうか。6500万年前メキシコのユカタン半島に落下した隕石が地球環境を変化させ、地上の王者だった恐竜を絶滅させたという話は有名ですが、この隕石の直径はたった10㎞です。
◆宇宙の歴史の中では天体衝突はありふれた事件です。私たちが気づかないうちに地球に近づく小天体はたくさんあります。過去には月と地球の間を通り抜けた小惑星がいくつかありますし、ごく最近も地球とのニアミス事件がありました。1989年には直径400mの小惑星が地球から64万㎞を通過、1972年には直径80mの小惑星の破片がアメリカのアイダホ州上空60㎞をかすめて再び宇宙に戻って行きました。2000年1月にはカナダ上空で250トンの小惑星が地球大気に突入し、空中で大爆発を起こしました。また、1983年に加古川市在住の菅野さんが発見した「菅野・三枝・藤川彗星」のように地球にニアミスした彗星もあります。美しく尾を引いて私たちを楽しませてくれる彗星もひとつ間違えば人類の脅威です。
◆最近、世界中の天文台で地球近傍小天体NEOの本格的な探索が始まりました。今年1月に直径800mの小惑星2000BF19が発見されましたが、これはNEOの1つで2022年に百万分の1の確率で地球に衝突すると発表されました。このような衝突の危険を秘めた小惑星は数百個はあると推測されています。もしこれらの小惑星が地球に衝突したら、恐竜絶滅の時と同じことが起きるでしょう。天体衝突というとまるでSF映画のように感じますが、興味本位ではなくもっと科学的に監視していくことが大切です。