◆皆さんは、星の明るさや大きさは絶対に変わらないものだと思っていませんか。古代の人々も星の輝きは永遠と考えていました。ところがこの広い宇宙空間には、以前はたしかに見えていたはずなのに今日は見えない、という何とも奇妙な星があります。秋の星座、くじら座のミラはアラビア語で「不思議なもの」という意味で、見えたり見えなかったりする文字通り不思議な星です。この星は古代エチオピア王家の伝説では、いけにえにされた王女アンドロメダに襲いかかる「化けクジラ」の心臓に位置しています。この星の正体は、約330日の周期で2等星から10等星まで明るさを変える「変光星」です。明るさの変わる周期が1年より短いので、ある年の秋には見えていたのに翌年の秋には見えないということもあります。
◆このミラは太陽の440倍もある年老いた赤色超巨星で、やがて大爆発を起こして消滅する運命にあります。この星は風船のように膨らんだり縮んだりしているので明るさが変わります。そして、膨らんだ時の明るさは太陽のなんと200万倍もあります。これら大きさの変わる星は「脈動変光星」と呼ばれています。蠍座のアンタレスも太陽の230倍もある巨大な星で、約5年の周期で大きさを変える脈動変光星の仲間です。このような不思議な星が、宇宙には3万個以上もあることが知られています。
◆ペルセウス座はギリシア神話の勇士ペルセウスの姿です。彼が左手につかんでいる怪物メドゥーサの額に輝くのがアルゴルという星で「悪魔の頭」という別名があります。この星は約2日半の周期で2.1等から3.4等まで明るさを変える「食変光星」で、その明るさは最大時で太陽の180倍です。明るさが変わる理由は、明るさの違う2つの星がお互いの周りをぐるぐる回っていて、暗い星が明るい星を隠した時に光がさえぎられるために起こります。この星の仲間も知られているだけで5千個以上あります。