◆太陽と海の島ハワイ。この標高4200mのマウナケア山頂には天文台が立ちならんでいます。世界各国が技術の粋を集めて作った巨大望遠鏡たちです。そしてここにまた1つ、新しい望遠鏡が仲間入りしました。国立天文台が10年の歳月をかけて建設したハイテク望遠鏡「すばる」です。
◆望遠鏡の歴史は今から400年ほど前にさかのぼります。1608年、オランダの眼鏡職人が2枚のレンズを組み合わせると遠くの物がよく見えることに気づきました。これが望遠鏡の誕生です。翌年、その望遠鏡を初めて宇宙に向けたのがイタリアの天文学者ガリレオです。彼が作ったのは1枚目のレンズで集めた星の光を2枚目のレンズで拡大するという「屈折望遠鏡」です。次に登場したニュートンはレンズの代わりに凹面鏡を使って星の光を集める「反射望遠鏡」を発明しました。現在に至っても光学望遠鏡は大きく分けるとこの2種類です。
◆方法はどうであれ望遠鏡の性能は口径(レンズや鏡の大きさ)だけで決まります。口径が大きければ大きいほど星の光をたくさん集めることができるので、遠くの暗い天体も見えますし、その詳しい様子もわかります。もっと遠くをもっと詳しく・・・。天文学者は次々と大きな望遠鏡を作り新しい宇宙の姿を見せてくれました。ガリレオはたった口径4㎝の望遠鏡で月の表面や木星の衛星、土星のリング、天の川の正体などを発見しました。ハーシェルは1.2mの望遠鏡で私たちが銀河系の中心にいることを確信しました。ハッブルは2.5mの望遠鏡でアンドロメダ銀河が私たちの銀河系の外にあることや宇宙が風船のように膨張していることを発見しました。そして、1948年にはアメリカのパロマー山に口径5mもの反射望遠鏡が誕生し、以後40年間はこれが技術的にも世界一の大型望遠鏡でした。
◆しかし、もっと大きな望遠鏡があればもっと遠く、もしかしたら宇宙の果てまで見えるかもしれません。天文学の研究が進むにつれそんな望遠鏡が必要になりました。そして、1990年、これまでの常識をこえた新世代の巨大望遠鏡が計画されました。その1つが「すばる」です。このように天文学の歴史は望遠鏡の進歩とともにありました。天文学者たちの情熱が望遠鏡をここまで大きく進化させてきたのです。