先日、尚絅学院大学の鳥羽先生から、大学敷地内で「正体不明の小さなネズミを捕獲したので、同定して欲しい」と依頼があり、確認したところ、カヤネズミの亜成獣だった。
これまでの確実な生息北限の記録は、宮城県川崎町にある(→全国カヤマップ(宮城県))。
宮城県名取市に位置する尚絅学院大学は、川崎町の生息地点とほぼ同緯度にあり、今回の発見は、もう一つの生息北限地点の確認ということなる。
尚絅学院大学のホームページに、発見の経緯などが掲載されたので、ご一読下さい。
私自身が2000年に行った北限調査では、宮城県内は名取市の仙台空港予定地のほか、河北町・津山町の北上川沿い、涌谷町の旧北上川河川敷、南郷町の鳴瀬川河川敷などで巣を探したが、残念ながら発見には至らなかった(→北限調査紀行Part2(宮城編))。
カヤネズミの生息北限の謎については、ずっと気になっている。
今回の発見で、ひさしぶりに北限調査の旅に出たい気持ちがふつふつとわきあがってきた。
カヤネット北限調査隊の中では10年以上も前に盛り上がったネタだが、じつは、青森県の平虚空蔵貝塚および赤御堂貝塚から、カヤネズミの骨が出土したという記録がある(→青森県貝塚データーベース)。
平虚空蔵貝塚は馬淵川流域の丘陵、赤御堂貝塚は新井田川丘陵に位置する。
いずれも太平洋側で、岩手県にほど近い場所だ。
両地点が近接していること、また、発見場所の地形から、このあたりがカヤネズミの営巣地であってもおかしくない。
文献記録のみで現物(骨)を確認していないので、真偽のほどは確認できないが、もし発見が真実であれば、おそらく縄文期には、カヤネズミは本州全土に分布していたのではないかと考えている。
Googleのサテライト画像を見ると、馬淵川(リンク画像の右上から左下に向かって伸びる青い筋)の川筋を内陸沿いにたどると、いくつかの支流や丘陵地を経て北上川につながっている。
ところが、海岸沿いにはこうした地理的な連続性が見られない。
カヤネズミが青森に生息していた頃とは、当然植生の分布も変わっているだろうが、カヤネズミの太平洋側の北進は、海岸沿いではなく、むしろ内陸から分布を拡大したとも考えられる。
という推測(妄想?)を、とあるケモノ学会で雑談している時に某氏に披露したところ、「おもしれー!」と大うけだったが、しばらくして某雑誌に投稿されてしまった。
せっかくあたためていたテーマを断りなく記事にするんじゃねーよ(暴言)と思ったが、うかうかと話してしまった自分にも落ち度がある。
いずれこの話は北限調査の記録とともに雑誌に投稿しようと考えていたのだが、青森の記録の真偽が確認できないので、いまのところ推測でしかないし、とりあえずここに書いておこうと思う。
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いつもありがとうございます! <:3 )~
「すぐそこに、カヤネズミ」お読みいただいてありがとうございます。
今年度の活動は今月で終了しましたので、来年の春まで、桂川に行く機会は少なくなります。
また来年の春なれば、観察会や保全活動なども再開しますので、よかったらぜひご参加ください。