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(どうしても坊やを返して欲しいお母さん:と(どうすることも出来ない死神:の話のやり取りです。
「わしに手向かってもどうすることもできないぞ。」
「でも、神様はきっと助けてくださいます。」
「わしは神様の使いで、この温室の世話をしているのだ。」
「神様がお召しになった木々や花々を天国へ持って行くのが私の役目なのだ。
そしてそれらを天国へ植えるのが私の仕事なのだ。
どんなにしおれた花でも、天国では生き生きとして、美しく蘇るのだ。」
「そんなところで蘇ったとて何になりましょう。」
お母さんは泣きました。
「どうぞ坊やを返してください。
私の手から連れ去らないでください。」
お母さんはそう言ったとたんに、側の花を両手に1本づつしっかりと握りました。
「坊やを返さないというのなら、みんな引き抜いてしまいます。
もうどうなったってかまいません。知らないわ。」
「触ってはいけない。お母さん。」
「あなたは自分の赤ちゃんが死ぬのをとても悲しんでいるのに、他のお母さんの
赤ちゃんを失う悲しみはどうでもいいのかね?」
「何ですって? 他のお母さん?」
お母さんはハッと驚いて手を花から引きました。
「さあ、あなたの眼を持ってきました。
湖の底にあまりにも美しく光っていたものを何気なくすくった。
それは真珠だった。
あなたの両目だったのだな。
さあ、今あなたの眼が見えるようにするから、見えるようになった眼でしっかりと見るのだ。」
死神とお母さんは深い井戸の前にいました。
「井戸の中を覗きなさい。たった今、あなたが引き抜こうとした二つの花の運命を見なさい。
あなたが何を引き抜こうとしたのか?
眼をそらさないで考えなさい。
じっと見つめなさい。」
お母さんが井戸の中を覗くと、底が明るくなり、一人のとても幸せな一生が映りました。
その姿が消えると、今度はとても不幸であらゆる苦しみと悲しみが映し出された
辛い一生が映り出されました。
「ああ、私の坊や!
坊やは生きていて幸せになれるの?
それとも苦しい思いをするの?」
お母さんはこらえきれずに叫びました。
「それを教えることはできない。
ただわしに言えることは、
この二つの内の、どちらか一つが、あなたの赤ちゃんの運命なのだ。」
お母さんは、体をねじらせて手をよじって、顔面蒼白になりました。」
続きは最終回になります。
大人に諭すアンデルセンの気持ちが伝わってきます。
こうご期待!