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未だ新紙幣は手元にない。今回選定された北里柴三郎と津田梅子と渋沢栄一の知識といったら、医学者と教育者と実業家程度の知識しか持ち合わせていない。そんな生半可な知識で恐れ多いが、この三人の中で北里柴三郎と渋沢栄一を考えてみたい。
北里氏は世界的細菌学者であり、日本医学会の頂点にいた重鎮である。方や渋沢栄一氏は数々の会社を立ち上げた日本経済界の大御所だろう。これだけを見ると、世界と日本という単純な比較になってしまう。選定者が考えたのは、紙幣=経済という単純な図式ではないだろうか。
長年の友人に聞いてみた。友曰く、使う頻度という視点で考えたらどうなの? うーん、なかなか鋭いなーと素直に脱帽した。色んな詮索は人の勝手だが、紙幣の価値と肖像の関係は何にもない。渋沢栄一が北里柴三郎の十倍の偉人だと思う人は誰一人いない。とはいえ、新紙幣を早く見たい想いは変わらない。
追記
北里柴三郎が困っている時に、手を差し伸べたのがあの福沢諭吉である。人生の困難な局面で最高の師に幾度も巡り合ったと云われるが、運を引き寄せたのは、他ならぬ彼の二年間欠かさず拭き上げて、光る縁側と後世が讃えたそのひたむきな生きざまにあるのだと想う。唯の成功した学者ではなかったことを知っている人は未だ少ないようだ。