昨日、東京オペラシティ・アートギャラリーで「谷川俊太郎展」を見てきた。
石中同窓生でデザイナーであるトッシュロのお仲間が担当したお仕事ということで、1月の同窓会の際に招待券をいただいていたのだ。
谷川俊太郎は「かっぱかっぱらった」などが私には馴染み深い。
詩人の「~展」ということだが、特段のイメージもなく訪れた。
最初の展示が冒頭の写真である。
暗いスペースに複数のモニターが並び、そこに谷川自身の朗読と合わせて、文字が明滅する。音響とビジュアル、色彩と形、それらが詩に新たな彩りを与えている。
なかなかのインパクトである。
ブルーという色の選択。今思えば、海の底で詩を聴くような静謐のイメージ。
ちょっと異世界に迷い込んだような浮遊した感覚。
次のスペースは、詩人にまつわる品々の展示。海外生活時代の写真集、詩作ノート、収集したラジオや工具、彼が作詞した曲のレコード、書簡、Tシャツ、…etc
詩を作るのはパソコンで。これはキーパンチ、変換、推敲などをPC上で再現しているらしい。
面白いのは、このさほど広くないスペースでは観覧者が互いに気を遣いながら歩かなければならないということ。誰かが展示物の前で見ていると、その前を人は通れない。後ろにもあまりスペースがない。そうすると、他の展示物を見に行くことになる。観覧者は決まった動線をたどるのではなく、不規則なルートで会場を歩き回る。大海を回遊するように。そこには不自由さが生む自由さ、ランダム化されることの楽しさがある。谷川の詩を愛する人たちが、はじめは個々バラバラだったものが、シャッフルされて、交じり合い、溶け合う。
それは同時に、詩、あるいは、詩人を、複数の人間で味わう、そんな面白さでもある。
詩はふつう、一人で読む。その意味で、詩を読むことは孤独な行為だ。それを大勢の人間が交錯しながら味わう。そんな面白さがあった。この楽しみ方もいい。
次は、一篇の詩が壁に大きく映しだされ、それを仰ぎ見るようにして読むスペース。
詩はふつう本の活字を読むわけで、文字の大きさは1センチもないだろう。それがこのように壁一面に表示されると、詩の見え方が変わる。逆に言えば、ふだん私たちは詩を小さなもの、本の中に収まるようなサイズのもの、そんなイメージで見ていたのではないか。そんなことを思わされる。このように大きな文字で、壁一面に詩が広がっていると、詩って実はこんなに大きな、広々としたものだったんだ。そう思えてきた。そこで詩を読んでいると、何か心が伸び伸びしてくる。
空間の異化、詩の異化。なかなかに楽しい谷川俊太郎展であった。
同展は3月25日(日)まで行われている。残りわずかなので、ご興味ある方は是非。
最後に、トッシュロさん、面白い体験をさせてもらってありがとう。
20180320 谷川俊太郎展に行ってきた。
付記1
同じチケットで他に二つの展示を見ることができた。
一つは「東京オペラシティアートギャラリー収蔵品展 なつかしき 寺田コレクションより」。
二川幸夫の写真は日本の古来の民家が土地の風景とともに収められている。家の造りの工夫に実用性だけでない遊びや優雅さを感じ、昔の大工たちの人柄が偲ばれるようである。
芝康弘の絵画は、アニメと写真の中間のようなタッチに見える。主に自然の中で遊ぶ子供が描かれているが、ノスタルジーというより、子供というのは今でも自然の中に放りこめば喜々として遊ぶものなので、「なつかしさ」という枠にはめず、自然の中で暮らし遊ぶ子供たちの皮膚感、瑞々しい感性を感じながら見ていいのではと思った。
川瀬巴水の版画は浮世絵版画の「新版画」ということだが、おそらく明治から昭和中期にかけての風物を題材にしているのだろう。古い技法を持ち出して今何かを作っているという感じがしなくて、浮世絵という技法を使って、かつての風物を掬いとる、その掬い取り方に新鮮さを感じる。
もう一つは「宮本穂曇展」。絵画を見ていて、具象でも描かれているものが具体的に何であるのか判然としない場合には、何かその絵じたいが私に問いかけているように思うことがある。絵の中に画家が何を描いているのかよりも、その絵の中に私には何が見えるのかと、問いかけてられているように感じるのだ。この画家の絵も、最初に全体のイメージを感じ、その後に何か隠し絵を探すかのように、私の視覚の像の中に、私はいろいろなものを見たてる。しかしやがてそれに疲れると、私の視覚像の中に何かの姿が浮かび上がってくる。その驚きを楽しむことができる。そういう意味で想像力をかきたてられる絵であるといえよう。
付記2
東京オペラシティは、新宿区西新宿にある複合施設。最寄駅は京王線の初台だが、新宿駅からも徒歩15分ほどである。
付記3
平日午後4時入場だったが、けっこう人が入っていました。
付記4
一部を除き撮影可能ということで、その模様をカメラに収めた。
付記5
最近つぶやいていないが、気に入った曲。
Martin Garrix & Matisse & Sadko - Forever (Official Music Video)
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