「勘太、きょうもこのかっこうでねるつもりか?」
「い、いや……。その……」
佐次郎の一声に、勘太はしどろもどろになって何も言い出せません。勘太がいつもおねしょすることは、同じ屋根の下でくらす佐次郎たちも知っています。
「そろそろねる時間だから、早くふとんの中へ入って」
子供たちがあわててふとんの中へ入ろうとすると、お千代は勘太のようすを見てすぐに声をかけました。
「勘太くん、ねる前に便所へいかないといけないでしょ」
お千代の声に、勘太はしぶしぶ外へ出ることにしました。お寺の外は、すっかりと暗くなっています。
「こ、こわい……。おばけが出てきそう……」
勘太は暗やみの中を歩こうとしますが、足元がふるえてなかなか前へ進むことができません。