「おしっこがしたい……。で、でも……」
勘太は心の中でそう思っていますが、それをなかなか口に出すことができません。そんな勘太に、お千代はいつもの言葉をかけています。
「勘太くん、ねる前に便所へもう行ったかな?」
「もう行ったもん!」
お千代の一言に、勘太は強がる様子で返事をするとそのままふとんの中へ入りました。勘太は目をつぶっていますが、なかなかねむりの中へ入ることができません。
「本当におしっこが出そう……」
このままだと、勘太はおふとんにおねしょをやってしまいます。ふとんから出ると、勘太は音を立てないでそっと外へ出ることにしました。
勘太にとって、真夜中に外へ出るのは不安でいっぱいです。これから向かう便所には、こわいゆうれいがいるかもしれません。
「こわいよう……。でも、おしっこをしないと……」
勇気を出して足を進めると、いよいよ便所の前にたどり着きました。