けれども、その日の夜のことです。
ふとんから起き上がった勘太は、暗やみに包まれたいつもの場所へ向かっています。
「お、おしっこ……」
勘太は、腹掛けの下を右手で押さえながら便所の中へ足をふみ入れました。まわりを見回してから、勘太がおしっこをしようとしゃがんだその時のことです。
「ふ~っはっはっは! ふ~っはっはっは!」
不気味な笑い声に、勘太は今までのことを思い出しながらおびえています。
「まさか、ここに化け物が……」
「よく気づいたなあ。おれがどこにいるのか知っているかな?」
勘太がキョロキョロとしていると、便所のあなから化け物らしき手が出てきました。不気味な声がひびきわたる中、勘太はさけび声を上げながら便所から飛び出しました。
「うわああああっ! ば、ば、化け物!」
お寺の中へもどると、勘太はあまりのこわさにふとんの中にもぐりこむとそのままねむりこんでしまいました。
次の日の朝、勘太はお千代の前で顔を赤らめながらモジモジしています。ふとんのほうを見ると、そこにはでっかいおねしょが見事にえがかれています。
「またやっちゃった……」
「ふふふ、やっぱりおねしょしちゃったんだね」
いったんはおねしょをしなくなった勘太ですが、結局はいつもと同じようにおねしょをしてしまいました。勘太は、腹掛けを両手で押さえながらはずかしそうな表情を見せています。