韓国銃乱射事件と徴兵問題
THE PAGE 7月8日(火)15時9分配信
6月下旬、韓国北東部の軍事境界線近くで、韓国軍の兵士が銃を乱射して同僚を殺害する事件が起きた。
この兵士は22歳の兵長で、あと数カ月で除隊になるという時期だった。
韓国では以前にも軍部内で乱射事件が起きたことがあり、社会問題のひとつとなっている。
■軍隊でのいじめは社会問題に
韓国メディアの報道によると、この兵士は軍部内で陰湿ないじめにあっていたという。
周囲の兵士からからかわれていたことを恨みに思い、犯行に及んだとされている。
徴兵制が存在しない日本ではあまりピンと来ない人が多いが、韓国では若者の徴兵制について以前からさまざまな議論があり、今回の件も今後の徴兵制を考える上で重要な事件といえそうだ。
日本に住む30代の韓国人男性はこうもらす。
「私が徴兵されていた頃もいじめ問題はありました。
それまで自由奔放暮らしていたのに、いきなり規律の厳しい環境に置かれたら、誰だって不満が爆発しますよね。
そこで、誰かをいじめたり仲間外れにしたり、ということはありました」。
■本音は「できることなら行きたくない」
韓国に住む若者の反応はどうなのか。
韓国メディアなどの報道を見るかぎり、歯切れは悪い。
自分たちも軍隊に行かなければいけない身だとはわかっているものの、「できることなら行きたくない」というのが本音だからだ。
だが、それを公に口にすることは、はばかられる。
兵役は韓国の成人男性の“義務”だからだ。
韓国の徴兵制は朝鮮戦争後に実施されており、現在も続いている。
18歳で徴兵検査の対象となり、心理検査、身体検査などの判定と医師の診断などにより正式に入隊が決まる。
陸軍と海兵隊は21カ月、海軍は23ヵ月、空軍は24カ月間、兵役につく。
だが、兵役を免除される場合もある。
虚弱体質や病気、視力が極端に弱い場合や、一芸達人などだが、多くは財閥や政治家の御曹司などがコネを使って徴兵を逃れるケースで、世間の批判を浴びている。
■兵役に行ってこそ一人前の男
それでも逃げ切る場合があるが、韓国社会では「男性は兵役に行って当たり前」であり、行っていない男性は一生後ろ指をさされ、一人前とはみなされない。
実際、会社の飲み会や親戚の集まりなど、宴会でつきものなのは兵役の思い出話で、とくに「兵役時代にやったサッカーの話」は、おおいに盛り上がるという。
それだけ、兵士同士の団結力も強くなるし、人生で最も厳しくつらい時期を共有した経験があとあとまで強く印象に残るのだろう。
兵役時代は家族や恋人とのつらい別れなどもあり、兵役をめぐる悲喜こもごもは韓国ドラマなどでも頻繁に描かれている。
だが、冒頭のような問題もあり、兵役期間を短縮するという案はこれまでに何度も浮上しては消えている。
(10年前と比べて、現在の兵役期間はどの軍隊でも数カ月単位で減少しており、今後も少しずつ減少していくことは予想されている)。
■入隊しやすい環境づくり
しかし、東アジアの現状や北朝鮮との関係を見てもわかる通り、韓国政府が徴兵を撤廃することはないだろう。
軍では、「同伴入隊服務制度」など、友人と一緒に入隊し同じ部署に配属するなど、若者が軍隊に“入りやすい”環境づくりをしているが、韓国も日本同様、人口が減少していくのは必至。
そうした中で、今後どのようにして徴兵制を維持していくのか、悩ましいところだろう。
(中島 恵・ジャーナリスト)
THE PAGE 7月8日(火)15時9分配信
6月下旬、韓国北東部の軍事境界線近くで、韓国軍の兵士が銃を乱射して同僚を殺害する事件が起きた。
この兵士は22歳の兵長で、あと数カ月で除隊になるという時期だった。
韓国では以前にも軍部内で乱射事件が起きたことがあり、社会問題のひとつとなっている。
■軍隊でのいじめは社会問題に
韓国メディアの報道によると、この兵士は軍部内で陰湿ないじめにあっていたという。
周囲の兵士からからかわれていたことを恨みに思い、犯行に及んだとされている。
徴兵制が存在しない日本ではあまりピンと来ない人が多いが、韓国では若者の徴兵制について以前からさまざまな議論があり、今回の件も今後の徴兵制を考える上で重要な事件といえそうだ。
日本に住む30代の韓国人男性はこうもらす。
「私が徴兵されていた頃もいじめ問題はありました。
それまで自由奔放暮らしていたのに、いきなり規律の厳しい環境に置かれたら、誰だって不満が爆発しますよね。
そこで、誰かをいじめたり仲間外れにしたり、ということはありました」。
■本音は「できることなら行きたくない」
韓国に住む若者の反応はどうなのか。
韓国メディアなどの報道を見るかぎり、歯切れは悪い。
自分たちも軍隊に行かなければいけない身だとはわかっているものの、「できることなら行きたくない」というのが本音だからだ。
だが、それを公に口にすることは、はばかられる。
兵役は韓国の成人男性の“義務”だからだ。
韓国の徴兵制は朝鮮戦争後に実施されており、現在も続いている。
18歳で徴兵検査の対象となり、心理検査、身体検査などの判定と医師の診断などにより正式に入隊が決まる。
陸軍と海兵隊は21カ月、海軍は23ヵ月、空軍は24カ月間、兵役につく。
だが、兵役を免除される場合もある。
虚弱体質や病気、視力が極端に弱い場合や、一芸達人などだが、多くは財閥や政治家の御曹司などがコネを使って徴兵を逃れるケースで、世間の批判を浴びている。
■兵役に行ってこそ一人前の男
それでも逃げ切る場合があるが、韓国社会では「男性は兵役に行って当たり前」であり、行っていない男性は一生後ろ指をさされ、一人前とはみなされない。
実際、会社の飲み会や親戚の集まりなど、宴会でつきものなのは兵役の思い出話で、とくに「兵役時代にやったサッカーの話」は、おおいに盛り上がるという。
それだけ、兵士同士の団結力も強くなるし、人生で最も厳しくつらい時期を共有した経験があとあとまで強く印象に残るのだろう。
兵役時代は家族や恋人とのつらい別れなどもあり、兵役をめぐる悲喜こもごもは韓国ドラマなどでも頻繁に描かれている。
だが、冒頭のような問題もあり、兵役期間を短縮するという案はこれまでに何度も浮上しては消えている。
(10年前と比べて、現在の兵役期間はどの軍隊でも数カ月単位で減少しており、今後も少しずつ減少していくことは予想されている)。
■入隊しやすい環境づくり
しかし、東アジアの現状や北朝鮮との関係を見てもわかる通り、韓国政府が徴兵を撤廃することはないだろう。
軍では、「同伴入隊服務制度」など、友人と一緒に入隊し同じ部署に配属するなど、若者が軍隊に“入りやすい”環境づくりをしているが、韓国も日本同様、人口が減少していくのは必至。
そうした中で、今後どのようにして徴兵制を維持していくのか、悩ましいところだろう。
(中島 恵・ジャーナリスト)