伝統工芸の本当のよさとは何なのだろうか、次代を担う若者たちへどのように呼びかけることが最も適切なのかと、長い間自問自答し続けてきました。
日本の「伝統工芸」というものへ、「伝統文化」という観点からアプローチすると、「アカデミズム」的なこと…しきたり、作法、ならわし、格式、うんちくなどなど…が立ちはだかり、毎日のくらしからかけ離れたものとして認識してしまいがちです。
確かにこうしたアカデミズムに重きを置く、いわゆる「茶の湯」などの日本的な文化の需要が、これまでこの業界を支えてきたことは厳然たる事実でしょう。
しかしそれで良しとしてしまうと、「作り手」と「使い手」は「家元」だけが残ればよいという方向に帰結してしまいそうな、一種の危機感を覚えます。
伝統工芸を取り巻くこのようなアカデミズム的な環境について、一歩踏み込んで考えてみると、これらは実はあくまで「使い手」側の鑑賞のし方、取り扱い方や方便などにより、昔から積み重ねられてきた「使い方」であるにすぎないことであり、工芸品自体が持つ美しさとは次元が異なる、第二義的なことがらであるということができます。
日本の伝統工芸の第一義、本質は、主役である「作り手」が、親や親方や先輩から長い時間をかけて受け継いだ、素材を見抜く力、施される技法の適切さや技術の高さ、使い手に対する細やかな配慮、これらを統合して美意識を表現する力などの「作り方」にあるはずです。
優れた「作り手」は、美しい自然から得た貴重な素材の性質、長所短所を知り尽くし、それに手を加え、最良の美しさを引き出すことに対する責任を自負します。
自然界から人間界への「橋渡し役」を担い、美しい自然に対しても、「使い手」の快適な生活に対しても責任を負いながら、日々研鑽を積んでいるのです。
また「優れた作り手」は「優れた使い手」でなくてはなりません。このような方を「名人」と世間では呼びます。
自然界から人間界への「橋渡し役」といえば、伝統的な調理や建築などの、くらしに関する手仕事も同様であることはいうまでもありません。
同時に、日本の伝統工芸の本当のよさもここにあると思います。
「作り手」が四季のうつろい、循環を深く理解し、里山の自然破壊を招かないよう配慮しつつ、自然の流れとともに制作活動を続けてきた、世界にまれな文化であるということです。
美しい素材を恵んでくれる自然の美しさを損ねては、元も子もなくしてしまうことを無言のうちに理解しているからです。
この意味で、「工芸は里山の一滴(ひとしずく)」であるということができます。
その理解の上で、それぞれの「等身大のくらし」の必要と思われるところに、胸を張って伝統工芸品を役立て楽しむことが、「工芸品愛好者」の王道だと思います。
身に余る贅沢な工芸品を購入する必要はありません。
「時間と自然は万人に平等」です。
ありがたくも、日本の自然は手を伸ばせば、誰でもどこでも容易に触れることのできる身近な存在です。
また当節、原発事故という現実を共有している私たちは、未来へ向けてますます「自然をいとおしむ心」を強くしていかなくてはならないと思います。
身のまわりの何気ない動植物や鉱物や自然現象を注意深く観察してみると、虫一匹、葉っぱ一枚、石ころ一個、雲一片に驚くべき美しさや生命力、何かしらのインスピレーションを強烈に感じることがあります。
老若を問わず、「緑なすわが国土」に身も想いも寄せ、自然という「共通項」を「くらしの原点」として生きて行きたいものです。
和の皿が好きな娘のハムエッグ 蝉坊
▲▲ 画像DATA;
バラ科の果樹の仲間と思われる幼木/
東京・文京区千石
▲ 画像DATA;
紅葉したカキノキ/Diospyros kaki Thunb./の葉/
東京・豊島区池袋本町
バラ科の果樹の仲間と思われる幼木/
東京・文京区千石
▲ 画像DATA;
紅葉したカキノキ/Diospyros kaki Thunb./の葉/
東京・豊島区池袋本町
《 関連ブログ 》
●けやぐ柳会「月刊けやぐ」ブログ版
会員の投句作品と互選句の掲示板。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu0123
●ただの蚤助「けやぐの広場」
川柳と音楽、映画フリークの独り言。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu575
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開通までに紆余曲折あったようで、黒四ダム掘削の苦労もかくのごとくなりかと…(笑)。
まずはおめでとうございます。
このようなカタチで、
蝉坊さんのお話を伺う機会が
また得られると思うと、嬉しいです。
ちょくちょく覗かせていただきます!