「西日の町」2005/10/7
湯本香樹実
舞台は北九州小倉を思わせる地で
主人公の少年とその母親との二人暮らしの西日のあたるアパートに
「てこじい」が突然やってくる。
てこじいは少年にとっては祖父、母親にとっては父である。
時代背景は昭和40年代あたりでしょうか...
てこじいは、しばらく行方不明で何をしていたのかもわからず
全身まんべんなく、膜でも張ったように汚れていて
この日から親子の住むアパートに同居することになる。
私は小説の中でも、親子愛とか、家族愛を扱った話が苦手ですが
この小説はスッと物語の中に入ることができました。
登場人物たちは、結構過酷な状況を生きてきたと思うんですが
悲観的でもなく、かといって前向きなわけでもなく
どこか淡々としていて
その状況を受け入れて生きて行くたくましさのようなものを感じました。
本の解説は、なだいなだ氏
(解説文より)
ここに、4.5の重りと5.5の重りを載せた天秤がある。
前者が希望、後者が絶望。
このままでは何遍あげても絶望に傾く。
てこじいのしたことは、0.5絶望の皿からとり、希望の皿に0.5移し換えてやった程度の小さな行為だ。
だが、それだけで、天秤はもう絶望に振れることはない。
希望に満ち溢れた人生ではないが
希望を失わないで、低空飛行で、生きていこうという人間にとっては、十分な一押しだ。
(解説文終わり)
少年の母親は、職場の上司と不倫関係にあって妊娠していた。
子供を産むか産まないかで悩んでいたが
てこじいに「あきらめろ」「そんな無理は通らん」と言われる。
子供をあきらめた娘に対して、てこじいは遠くの海まで潮干狩りに行って
盗んだ防火用のバケツに山盛りの赤貝を持って帰ってくる。
それを刺身にして3人で食べるのだ。
つかの間の一家団欒は、微笑ましいというよりは
そんなにたくさん食べて、お腹壊さないのって心配になってしまいました(笑)
そして、今度スーパーに行ったら赤貝の缶詰がないか探してみようって思いながら
すぐに忘れてしまう私..今度こそは!!
私は西日が好きです。
うちのマンションの部屋には西向きの窓はないですが
あったらいいなあと思います。
そして夕日が好きです。