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虚飾の階段 ・・・ 女嘘つく

2011-02-14 06:17:52 | Weblog
  藤さわぎ 女嘘つくことに狎(な)れ

                      北村 寿満女



藤のうす紫の花房が 風に吹かれて波うつように騒いでいる。

  女の饒舌に似て。

女の嘘も口から出まかせ 風まかせ。


「まあお久しぶり。お元気でいいですわね

  (病気してやせたらどお。少しは見られるわ)」

「それが年のせいか すっかりダメなのよ

  (本当は年のわりに元気なんだけど あいさつとしてね)」

「何おっしゃるのよ。いつもお若く見えるのに

  (ナンテ 小ジワがずい分めだつわよ)」

「あらお世辞のいいこと

  (若く見えるはずよ。これでずい分 もと手かかってんだから。

     あんたも少しふんぱつしたら。今より見れるわよ)」

「お世辞じゃないわ ホントよ

  (お世辞でもうれしいくせに。

     ホントのこといったら 胆(きも)つぶすでしょうに)」

  ・・・ 虚々実々の鍔(つば)ぜりあい。外見はすずしい笑顔で。



しかし狎れるとは うまい字を使ったものです。

慣れるでは 嘘が口癖になっていて

  別に気にもとめていないことになるし

馴れるでは 親しさのあまりのふざけっこになるし


狎れるとなると しだれかかっての口説(くぜつ)同様

  うちに魂胆を秘めていることになります。

狎れるには 手練手管のにおいがするから いかにも女性的です。



女性的といったとて 女性全体をおとしめたわけではないから

  ・・・ お許し願います。

男でも この手を使えば女性的で

  昔ならさしずめ 女のくさったのいわれたものです。



この作者は いみじくも「狎れる」という字を使われたが

一句の底を探ってみると ・・・

「女嘘つく」の女に 自分自身を含めており

狎れに 嘘つくことに対するあさましさ

  ・・・ 痛みを感じているように思われます。



私たちは正直であらねばならないが

えてして嘘をつかねばならぬ破目におちいることの方が多いようです。

その時 嘘をついて平気というのでなく

  心ひそかに恥じるところに

  ・・・ 真人間への第一歩があるように思えます。





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