



私は一番前の真ん中の席です。

私の旅は景色を眺めるのが主目的だからです。








本日はこれで終わりです。
地上は視えない世界のうつし世と言われますが、純粋な真心は神々のいる世界に通る仕組みは確かに存在しているようです。
しかし、自然から分離した人間の方が、その鍵穴からどんどん離れ、鍵穴を小さく見えなくしてしまっていたのです。
そこに無垢な少女の息吹がかかり共鳴し、見えないパイプが繋がり気泡が熱っせられ扉が開きました。
山の神、海の神、耳の神、放られた神々、鬼と呼ばれた神、鎖で縛られた神を真心を持って敬う気持ちと、それに伴う村人達の行為が、全ての竜宮界にエネルギーをそそぎ、夜明けを告げるきっかけとなりました。
沢山の馬の先頭を走った麒麟には、龍大宮天龍の一番弟子が騎乗していました。一番弟子は、大切に胸に仕舞い込んでいたものを、龍大宮に着くやいなや、深海の扉を開け天龍に差し出しました。
それは、少女が祠の中でみつけ大切に磨きつづけた穴の空いた石でした。
鎖で縛られた祠の中の大きな石を一滴ずつ穿ちながら、いつしか繋がるだろう人の優しさを待っていたのは龍大宮の王、天龍でした。
天龍の悲しみの根底に流れていたのは、自然や神と心が通わなくなり、自然を破壊したり神を畏れない行動をする人間の罪でした。
沢山の悲しみで氷った龍大宮天龍の心の霜は、村人の心と繋がることで解けていきました。
龍大宮天龍は、月にいる娘の乙姫トヨに再び会いにいきました。海の神と月の神は、地上に美しい世界を作ろうと再び硬く手を携えました。
海はかつての輝きを取り戻し、トヨは、月夜、眠っている人々に息吹を吹きかけました。そうして、だんだんと人々は植林をはじめたり、川や海の清掃をはじめたり、珊瑚保全や水を大事にする行動をおこしました。
乙姫トヨは、音秘めの役目である言霊の大切さを知らしめようと、さらに働き続けました。
そうして、
地上は自然環境だけでなく、
言葉にも愛を孕ませ、
自然を大切にするように、
自分の周りも美しい言霊で溢れさせようとする人が増えてきました。
少女は、何故耳が不自由に生まれたのでしょうか。
それは、
本当に大切な聲を聴くという難題を、
聞こえない耳に託されていたのです。
月の神界と海の深海と地上を繋ぐために、不自由な耳で、聲なき声を届ける使命を、耳が不自由という苦難の人生の中、少女は果たしたのでした。
人はそれぞれの御魂に合ったお役目があり、御魂には必ず神様の欠片があることを忘れなければ、それを行動や言葉に現すことは誰しも出来ます。
声なき聲を感じとり、愛を響かせることがもし周りにできるなら、
どのような環境にあっても
争いや差別とは無縁の、
深海の竜宮城のような美しい世界へ、
今いる場所を誰しもが変化させることが出来るそうです。