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一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

整理整頓

2010年07月19日 | 最近のできごと
 夏に向かって、部屋が涼しくなるようにと、先月は毎日のように午前の数時間、整理整頓と掃除をしていた。何故、午前かと言うと、私にとっては1日のうちで最も意欲的な気分に包まれるのが朝であり、
(今日はあれとあれをして、午後何時ごろに外出して、あそこへ行き、その後、あそことあそこへ寄って、有意義な1日を過ごそうっと!)
 と、浮き浮きワクワク気分に包まれ、外出日も在宅日も、すべての予定をこなせるような気がして意欲と希望に満ち満ちた時間帯なのである。
 けれど、外出日はその意欲的な気分が夜まで続くが、1日中在宅の日は、午後になると次第に怠惰な気分に変わり、
(もう、今日は面倒だわ。明日にしようっと)とか、
(もっと時間的にも気分的にも余裕のある時にしようっと)
 などと呟くことになり、結局、すべての予定を、こなせなくなることが多い。
 まして、整理整頓や徹底した掃除は面倒だし疲れるし時間がかかる。
 それで、部屋が涼しくなるように整理整頓と徹底した掃除を午前の2~3時間だけ、CDを聞きながら、汗を拭き拭き、窓を開けたり閉めたり洗面所で手を洗ったりを繰り返し、その数時間は1度もソファにも椅子にも座らずにダイエットを兼ねて身体を動かし続け、ようやくパソコンの前に座って、
(ああ、疲れた~)
 と、電源を入れる、という日々だった。
(わあ、きれい~! すっきりして涼しくなったわ!)
 と、誰も褒めてくれないから自画自賛するのはキッチンや洗面所や浴室などの水回りだけ。やってもやっても捗(はかど)らないのが、本棚や机の下や引き出しの中や、収納場所の整理整頓である。なまじ大きな机のために、いくつもの引き出しと、机の下にスペースもあり、記録紙やら雑誌の切り抜きやらスナップ写真やら文房具やら、その他、細々とした物がどっさりとある。
(整理整頓のコツは不要な物をジャンジャン捨てることから始める、っていう記事を読んだわ。とにかく捨てなくちゃ)
 意欲的な気分でそう思うものの、その作業が予想以上に大変である。捨てようかどうしようかと迷う物が多いからだ。何かに役立つかもと思ったり、記念や思い出の品物なども雑然としまい込んであったりする。
 本棚の整理は3日間かかった。ガラス扉と小さな引き出しの付いた2つの本棚と、扉なしの1つの本棚から、すべての本を取り出し、引き出しの中も空にし、踏み台を使って固く絞った布で内側も外側も拭き、ふたたび入れ直していく作業。
(凄いダイエット効果あり、だわ……!)
 さらに、和室の押し入れと、2つの洋室のクロゼットと、廊下に面したクロゼットと、整理ダンスと2つのチェストと、食器棚とCD&DVDラックとキッチンの収納棚や洗面台の下やシンクの下などの整理整頓。以前、整理整頓のサイトで、すべてをいったん取り出してしまうことから始める、と読んだ時はつくづく感心した。収納してある物を、出しっ放しにできないのは当然で、あとは不要物を捨てたり整理しながら収納しないではいられないからだ。それがまた、予想以上に時間と労力を必要とする作業だった。
 そんなある日、机の下や引き出しや箱の中やファイルなどの記録紙類を整理している時、文字が薄れて判読し難いFAX記録紙が3枚出てきた。パソコン以前のFAXは、時間が経つにつれ、文字が薄れて消えていくのは知っていた。何のFAXかと見てみたら、故・菊村到先生からの手書きの文字だったので、なつかしくて喜びながらも、
(菊村先生からFAXなんて貰ったかしら?)
 すぐに思い出せなかった。その、文字が薄れて判読し難い文章を何とか読んでみたら、ある小説雑誌に挿絵画家の濱野彰親氏が<酒中日記>というエッセイで、その前月にカラオケ・パーティを楽しんだ様子を書いていると、その2ページぶんをFAX送信して下さったのだ。年に数回だが、菊村先生を中心に担当編集者たちが集まって、挿絵画家の濱野彰親氏と私も誘われ、10数人でカラオケを楽しんだころである。よく利用したのは銀座国際ホテルの2階と3階にある『パンドラ』というカラオケ・ルームで、そこで楽しんだ様子が書いてあるエッセイだった。
 ──べつにどうということもないのですが──
 と、FAX1枚目の菊村先生の独特の手書きの文字をかろうじて読み取っていくと、最後に、
 ──また、電話します。──
 そう書かれた文字に、一瞬、胸が詰まり、涙がこみあげてしまった。数えきれないほど長電話でお喋りした記憶がよみがえり、最高記録5時間45分の記録更新を、笑いながら約束したのに、果たされなかった。
 菊村先生からFAX送信されたのは、その1度だけ。コピー機を使っても現在の判読し難い文字のままでは寂しくなるだけなので、文字が薄れて完全に消えてしまうまで、時々、見られるように一番上の引き出しにしまっておいた。


                                              
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