一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

男性のお洒落感覚

2001年01月28日 | 女のホンネ
 先日、私はショックを受けた。男性の友人が、頭髪のシラガの一部を、黒く染めていたのだ。
「信じられない! 〇〇さんがシラガを染めるなんて!」
 と、私は思わず、彼の頭髪を見つめた。五十を過ぎてから、シラガが目立ってきた感じだが、まさか染めるとは思わなかったのである。
 何故なら、彼は古風な考え方の持ち主で、男には男の役割、女には女の役割があり、男は男らしく、女は女らしく、と言ったりする。
 その考え方では、女性が容貌や若さに気をつかっても、男性がそうするのはめめしい、ということになる。
 私が、そう言うと、取引先と会う仕事にさしつかえないように、と彼は答えた。
 クシみたいな染め道具が自宅にあったから使ってみただけで、自分で買って来たのではないらしい。
 私は、人間としての深みを感じさせる男性が好きだから、加齢とともに変化していく髪のことを気にする男性はめめしい感じがしていた。
 けれど──。
 数年前、実家で法事が行なわれる日、親戚が集まる前に、父が洗面所の鏡の前でクシを手にして髪を整えていた。
「あたしが、やってあげる」
 と、私は父の手からクシを取って、シラガ混じりだが年齢にしては量の多い髪をとかして整えてあげた。
 寝癖で後頭部の一部がもち上がっているのを鏡の中に見た父は、
「ここ、おかしくないか?」
 と、その部分の髪を指さして聞く。
「おかしくないわ。ふわっとしてたほうが、かっこいいわよ」
 と、私が答えたら、
「そうか、かっこいいか」
 と、父はうれしそうな声で言ったのだ。その時の父は78歳。その年齢でさえ、かっこいい、という言葉に敏感なことに、私は思いがけなくて、感動してしまった。
 その父は、もうこの世にいない。シラガの多い父の髪をクシでとかしてあげたのは、あの時一度きり。
 ──そうか、かっこいいか──
 うれしそうな父のその言葉を思い出した私は、シラガの一部を染めた友人の気持ちを少しだけわかるような気がした。
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