一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

対照的な記者会見

2014年03月17日 | 最近のできごと
 テレビで記者会見を見るのは興味深い。おびただしいテレビ・カメラや取材陣を前にして、会見を開く人の表情や言葉から、どのような人間かが、ある程度わかるのが楽しいからだ。その人間性や性格や生き方や生活ぶりなどが想像させられたりする。興味深い記者会見があると、1日に何本も放送される報道番組を片っ端から録画予約して、同じ断片映像を繰り返し見てしまう習慣がある。
 最近の、本物作曲家&偽作曲家騒動での、2人の記者会見が対照的と私には感じられた。本物作曲家の記者会見では、こんな会見は開きたくなかったとでもいうような、不本意で辛(つら)い気持ちが伝わってきて、可哀想でたまらなかった。共犯という言葉を口にしての謝罪は本心であり、どんなに心苦しかったことかと想像された。会見の言葉は終始、客観的であり、正確であり、正直であり、無駄がなく、すべて真実だと思った。報道陣の質問に対しても、頭の中で言葉を選んで端的に正確に率直に答えていると思った。作曲の才能については、よくわからないが、私には信じられる人という感じがした。
 報酬についての報道陣の質問で、700万ぐらいというのは真実だと思うし、18年間の報酬にしては少な過ぎることに驚かされた。
 何故、この時期にという疑惑が多い中で、良心の呵責に耐えきれなくなったことと、発覚しそうになったことの不安感のためではないかと私は想像した。
 その会見の報道番組では、過去に取材した偽作曲家のVTRの断片映像が何度も流されたが、後頭部を壁に打ちつけたり、音が降りて来るとか、他にも言葉やしぐさや風貌から、何となく演技と虚偽の匂いが感じられた。後頭部を壁に打ちつける映像を見るたび、クスクス笑ってしまったほどだった。
 そのVTRの断片映像からさえ感じられた演技と虚偽の匂いを、直接会った取材者たちは本当に微塵も感じなかっただろうか。取材対象者たちに数えきれないほどインタビューしたりカメラ撮影しているプロの人たちなら、感じ取っていたはずである。CDを買う人たちやコンサートに行く人たちと違って、個人的に直接会って話しているのだから。けれど、「ま、いいか」ではないにしても、彼らにも生活があり仕事があり、収入が大事である。真偽の追求など、なまじしたために、仕事がオジャンになって収入が得られないことにでもなったら困る、ということではなかっただろうかと私は推測した。
 その後、開かれた、偽作曲家の記者会見。長髪・口ひげ・サングラスがないから別人ではと何かの記事タイトルにあったが、過去に取材したVTRの断片映像と同一人物以外の何者でもないと言いたくなった。謝罪会見どころか、まるで晴れ舞台のように堂々としてさえ見えた。さすが若い日に俳優やロック歌手を目指した人間と、感心したくなるくらいだった。本物作曲家の記者会見と違って、発せられる言葉は客観性に欠けたり、不正確だったり、感情的なコメントが多かったように感じられた。さまざまな憶測の聴力については、直接会って話してみないとわからないが、テレビで見る限り、手話通訳が必要なほど耳が不自由というふうには見えなかった。
 長髪・口ひげ・サングラスの他に、杖だの手の包帯だの小道具に見える物をいろいろ使って、日本のベートーベンとまで持ち上げられる虚像を創り上げたのだから、大したものと冗談で言いたくなる。収入面ではかなり稼いだのではと推測されるが、タレントになっていたら案外成功したのではないかとさえ思えるほどだった。テレビ・ドラマに出演している下手な俳優やタレントより、はるかに演技能力もありそうに見える、と言いたくなる。
 偽作曲家であることが、いつかバレるかもという不安は、本物作曲家の不安の千分の一万分の一ぐらいで、えーい、バレたらバレたでその時のこと、というような心理だったかもと想像すると笑いがこみあげてくる。それだけの度胸も勇気も演技力もあるのだから、作曲家より芸能人に向いているのではないかと思ったりした。
 若い日に俳優やロック歌手を目指した人間だから自己顕示欲が人一倍あって、イベントだのインタビューだのコンサート会場だの数々の取材など、実に多く姿を見せコメントもしているが、もし、マスコミに一切、露出しなかったら、どうだっただろうか。マスコミ取材すべて断って、表に顔を全く見せなかったら、バレなかったということはないだろうか。
 他に2人の記者会見が対照的と感じられるのは、本物作曲家は偽作曲家に対して非難や批判も責任転嫁も一切していなくて、むしろ渡された企画書のような物がヒントになったこともあると庇っているように感じられたが、偽作曲家は本物作曲家の会見の言葉の嘘とか、報酬をつり上げるとか、感情的に非難や批判をしていたことだった。
 ところで出版界にゴーストライターはいるし、別に悪いことではなく、公に名乗らない決まりの職業で、ゴーストライターを経験した作家も少なくない。スポーツ選手や政治家やタレントの本は、吹き込まれたテープに基づいて虚飾を混じえ文章化して原稿を完成させるのが、ゴーストライターの仕事と誰もが知っているし、流行作家の作品でもないとは言えないと編集者から聞いたことがある。本の世界だけでなく作曲も絵画もその他、ゴーストライターは存在するらしい。だから、ゴーストライター問題とかゴーストライター騒動という見出しは、おかしいと思う。
 また、本物作曲家&偽作曲家騒動にはNHKもかなり慌てた様子に見える。ドキュメンタリーは好きで、よく見るが、昨年、番組表でNHKスペシャルのそのタイトルに、少し迷ったものの、あまり興味が湧かなかったので録画予約しなかったから見ていない。
 昨日の午前、NHKの情報番組で、『調査報告』が10分ぐらい放送された。視聴者への詫びと、当たりさわりのない、弁明に聞こえる説明が多かった。その中で、提案→撮影→ナレーション等映像編集→放送と、ごていねいにも制作過程の順序まで表示していた。「何故、気がつかなかったのでしょうか?」の番組アナウンサーの質問に、取材スタッフだったか調査担当者だったかが、偽装工作に気づくことができなかったと、その理由を延々と説明し弁明していた。その時、私は、「気がついてたでしょう」と、テレビ画面に向かって言いたくなった。NHKホームページで詳細をということだったので、『調査報告書』を読んでみた。こちらも契約ディレクターへの疑惑を払拭したいような弁明的説明が、印象に残った。ドキュメンタリーって、やらせがあったり、こんなこともあったり、そんなものなのねという思いがした。
 ところで、本物作曲家&偽作曲家騒動について知人友人と話題になると、皆、「どっちもどっち」と、そんな感じの意見ばかりなのである。そうかしらと反論したくなるが、いつものように報道番組とネット記事に振り回されてしまったことになるのだろうか──。



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