一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

『唐人お吉』 (帝国劇場100年 名作 あの舞台・NHK)

2011年11月22日 | テレビ番組
 珍しく、テレビで日本の舞台の公演を観た。
 演目は『唐人お吉』。帝国劇場で、1994年の公演。主演は佐久間良子と、林与一。演出は石井ふく子。脚本は服部佳。
 番組表を見て録画した時は、最初の少しだけ見て消去かもという気分で、あまり期待していなかった。たまに、日本の舞台公演を録画するが、最後まで見ることは、ほとんどないからである。
 演目の『唐人お吉』は、『蝶々夫人』みたいな話と思い、あまり惹かれなかったが、主演の佐久間良子と林与一は好きな俳優なので、ちょっと見てみたいという気持ちだった。
 見始めたのは、そろそろ寝ようと思った時刻である。最近の私はわりと早寝早起きなのだが、寝室へ行く前に、マルチ・リモコンを手にして<予約リスト>と<録画リスト>を表示させて確認するという習慣がある。つくづく、テレビ依存症気味を自覚し、我れながら未練がましいと感じながら、1日の終わりにマルチ・リモコンをなかなか手放せないのである。
 録画リストで、この舞台のタイトルを眼にした時、
(ハードディスクの容量が不足しそうだから、これは、ちょっと見て消去しようっと)
 と、他の番組の録画もよくあることだが、そんな気持ちだった。 
 ところが、思いがけなく夢中になって観始めてしまい、眠気が遠のいてしまった。『唐人お吉』のストーリーは漠然としか知らなかったが、『蝶々夫人』のヒロインとは全く違う。外国人と肉体関係を持つことに偏見があった時代というのは共通しているが、その恋も生き方も人生も、まるで違う。佐久間良子が演じる少女時代のお吉に惹かれて観始め、時間の経つのを忘れてしまうほど夢中になり、もう、この上なく深く感動させられた。
 お吉のキャラクターも興味深かったし、娘時代から晩年までの波乱に富んだ人生、愛し抜いた男性との恋、結婚時代の苦悩、酒に溺れ自殺するまでが描かれているのも、とても興味深かった。娘時代から中年、晩年までのお吉を演じる佐久間良子の素晴らしい演技に魅せられどおしだったし、感情移入のあまり、涙があふれそうになるほど胸が熱くなった。お吉を死ぬまで愛した、船大工の鶴松役の林与一も、とても素晴らしくて印象に残った。他のキャストも皆、個性的な演技で、良かった。もちろん、演出と脚本の素晴らしさも感じられた。
 一幕ごとにスタジオで、容姿も声も美しい佐久間良子が、作品の解説と、公演のエピソードを語ったのも興味深かった。
 翌日、ネットで調べたら、この公演は何度も再演されている。初演は1983年。道理でと思った。まさに適役であり、素晴らしい熱演であり、〈佐久間良子のお吉〉が鮮烈に濃厚に描かれている舞台で、最高の名演、最高の名作だと思った。
 約2時間半、胸を熱く揺さぶられ、感動の余韻とともに、急いでベッドに入った。時計を見ると、午前1時を回っている。いつもより夜更かししてしまったが、
(何て素晴らしい舞台、生で観たら、感動と陶酔のあまり、終演後に身動きできなかったかも……!)
 と、ベッドに入って目を閉じてからも、昂奮がなかなか醒めなかった。生で観たら素晴らしいのは、その舞台に限らないけれど。
 期待しないで録画したら、思いがけなく楽しめたり感動したりする番組に、たまに出会えるので、テレビ依存症人間でもいいかしらなどと思っている。
                              

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