入浴をすませてドアを開けたとたん、電話が鳴り出したので、急いでバスタオルを使った。
裸で電話に出るわけにもいかず、慌しくネグリジェを頭からかぶって着る。
鳴り続けるベルの音に、せかされるように走って部屋へ入り、手を伸ばして受話器を取った。
「はい、もしもし……?」
そう答えると、
「どうしたの? ハアハア言ってるね。彼氏来てるの?」
電話の向こうで、男性の知人が冗談ぽく笑いながら言う。
「違います! 今、お風呂から出たばかりで、急いで電話に出たんです」
カン違いされないよう、正直に言った。
「お風呂上がり? じゃ、今、裸?」
「ちゃんと、ネグリジェ着てますっ!」
嘘ではないという証拠に、つい強調して言ったら、
「ふうん、今夜はネグリジェなんだ。何色のネグリジェ? ピンクとか白? それともブルー? 肌が透けて見えるやつ?」
と、興味深げな質問。まるでエッチな悪戯電話みたいな会話に、なりそうだった。
私は寝る時に身体のあちこちにまといつく感じのパジャマが嫌いで、1年中ネグリジェである。といっても、いつ男性がベッドに現われてもいい準備(?)ではない。肌が透けて見えるとかセクシー・デザインのネグリジェではなく、天然素材で肌触りのいい裾短かネグリジェ。寝るまで時間があり、テレビや映画を見たりして過ごす間はパジャマを着ていて、ベッドに入る時は裾短かネグリジェに着替える習慣。その夜はもう遅く、ベッドで本を読んで寝る予定だったから、ネグリジェを着たのである。
ただの知人である電話の相手に、そんな説明など、もちろんしない。
「今夜だけじゃなく、寝る時はいつもネグリジェなんです」
恥ずかしがる必要もないのに、つい、そんな口調になってしまう。
「じゃ、ネグリジェ派なんだ」
「ネグリジェ派?」
「うん。この間読んだ週刊誌にね、女性が一人で寝る時に、パジャマの習慣かネグリジェの習慣か、いろいろ分析してあってさ。ネグリジェ派の女性っていうのは、寂しくて男に抱かれたい願望が常にあるんだって。つまり欲求不満から、パジャマよりネグリジェ好みになるらしいんだ。どう思う?」
「そのとおりよ。毎晩、孤独なベッドで寝てるんですから」
素っ気ない口調で、そう答えたら、電話の向こうで彼はクックックッと笑う。
「週刊誌の記事って嘘。今の、カマかけたんだよ」
何をカマかけたのか、よくわからないけれど、とっさに考えた作り話にしては当たってなくもないような──。
裸で電話に出るわけにもいかず、慌しくネグリジェを頭からかぶって着る。
鳴り続けるベルの音に、せかされるように走って部屋へ入り、手を伸ばして受話器を取った。
「はい、もしもし……?」
そう答えると、
「どうしたの? ハアハア言ってるね。彼氏来てるの?」
電話の向こうで、男性の知人が冗談ぽく笑いながら言う。
「違います! 今、お風呂から出たばかりで、急いで電話に出たんです」
カン違いされないよう、正直に言った。
「お風呂上がり? じゃ、今、裸?」
「ちゃんと、ネグリジェ着てますっ!」
嘘ではないという証拠に、つい強調して言ったら、
「ふうん、今夜はネグリジェなんだ。何色のネグリジェ? ピンクとか白? それともブルー? 肌が透けて見えるやつ?」
と、興味深げな質問。まるでエッチな悪戯電話みたいな会話に、なりそうだった。
私は寝る時に身体のあちこちにまといつく感じのパジャマが嫌いで、1年中ネグリジェである。といっても、いつ男性がベッドに現われてもいい準備(?)ではない。肌が透けて見えるとかセクシー・デザインのネグリジェではなく、天然素材で肌触りのいい裾短かネグリジェ。寝るまで時間があり、テレビや映画を見たりして過ごす間はパジャマを着ていて、ベッドに入る時は裾短かネグリジェに着替える習慣。その夜はもう遅く、ベッドで本を読んで寝る予定だったから、ネグリジェを着たのである。
ただの知人である電話の相手に、そんな説明など、もちろんしない。
「今夜だけじゃなく、寝る時はいつもネグリジェなんです」
恥ずかしがる必要もないのに、つい、そんな口調になってしまう。
「じゃ、ネグリジェ派なんだ」
「ネグリジェ派?」
「うん。この間読んだ週刊誌にね、女性が一人で寝る時に、パジャマの習慣かネグリジェの習慣か、いろいろ分析してあってさ。ネグリジェ派の女性っていうのは、寂しくて男に抱かれたい願望が常にあるんだって。つまり欲求不満から、パジャマよりネグリジェ好みになるらしいんだ。どう思う?」
「そのとおりよ。毎晩、孤独なベッドで寝てるんですから」
素っ気ない口調で、そう答えたら、電話の向こうで彼はクックックッと笑う。
「週刊誌の記事って嘘。今の、カマかけたんだよ」
何をカマかけたのか、よくわからないけれど、とっさに考えた作り話にしては当たってなくもないような──。