起床して歯磨きと洗面をすませた後、真っ先にすることは床掃除。ホコリは夜中に天井から床に落ちてくるから朝が一番汚れている、床掃除は朝がいいということは知っていたが、朝から掃除なんてと、やる気が起こらなかった。
ところが、引っ越した翌日から、床拭き掃除を始めた。築2000年の建物だがリノベーションされているから、新築同様。見た目はどこもきれいだが、引っ越し当日は業者の人たちが搬入作業で出たり入ったりして、かなりのホコリが天井に舞い上がっているはず。朝が一番、そのホコリが床に落ちているからと、数日間のつもりだったのが、その床拭き掃除が好きになり、習慣になってしまったのである。
転居前のように立ったままワイパーを使って拭くのではなく、屈み込んで、手にしたシートでていねいに拭いていく。そのほうが徹底して拭けるし、運動にもなると気づいた。折りたたんだシートを、きれいな面に変えては裏表使って拭くが、すべてバリアフリーだから拭きやすい。転居前と違って和室はないし、カーペットはダニの温床だから敷かないほうがいいという情報を知っていたから、居室2つの床と、キッチンや洗面所やトイレや廊下から玄関まで拭くと、シートを裏表使っても3枚。布埃や髪の毛や繊維屑など、毎日、どこかに落ちている。
(やっぱり、お掃除って毎日するものなのね)
今ごろになって、そう思う。以前はワイパーで、ほとんど一日おき。ホコリで人間死なないもンねと、時々、2日か3日おきになることも。けれど、朝、床掃除してきれいだと、歩き回る時に気分がいいことも知った。
転居して間もないころは、エアコン取り付け業者とか買った家具の搬入や組み立ての業者とか、カーテンレール取り付け業者とか、ひかり電話移転工事とか、その他、頻繁に業者が出入りしたので、帰った後には必ず念入りに床拭き掃除をした。作業の邪魔らしくスリッパをはかないせいか業者が何度も往復した廊下を拭くと、シートが黒くなるほど汚れが付いていた。母は来客が帰った後、掃除機をかける習慣があったと、床拭きしながら思い出し、
(きれい好きな性格って大変なのよね。でも、運動になるっていうメリットがあるもンね)
そう呟いたり。
掃除は床掃除が一番時間がかかるから、気分が最も意欲的な朝に向いている。床以外の洗面所、トイレ、浴室、キッチンなどの掃除はラクなのである。つくづく進化していると感じたのは、リノベされて新しいから掃除が簡単というより、掃除がラクにすむように作られているからだ。以前のマンションではクレンザーをつけたりして時間がかかったのに、現在は週に1回でも、すぐきれいになる。固いスポンジやクレンザーは傷がつくから禁止と取扱説明書に書いてあるが、柔らかスポンジかウェスで少し撫でれば、すぐきれいになる。
床掃除が終わると、コーヒーを飲みながらテレビの前のソファに座る。ビデオの録画予約をした後、録画の〈テレビ体操〉を行う。インストラクター指導の体操5分とラジオ体操第1か第2を5分だから、わずか10分。1年以上、1日も欠かさず、毎朝続けている。毎日変わるオリジナルの体操はストレッチの要素もあり、朝の身体にふさわしい動きが多い。昔は全然、興味もなかったのに、ちょっと見てみようと思い立って録画し、やっているうち、予想以上に楽しめることを知った。第1より第2のほうが好き。子供のころしか経験がなかったラジオ体操は、大人にはきっと、もの足りないに決まっていると思っていたら、そんなことはないと知った。寝違いもしないし身体のどこにも痛みがない幸運に感謝のような気持ちや、全身をのびのびと動かす心地良さが湧いてくる。インストラクターの指導どおり完璧な動きで、朝の身体の筋肉をほぐしたり伸ばしていく心地良さや、南東の朝の陽射しが差し込んでくるリビングにも愛着のような感情が湧いてきて、このマンションを選んで良かったと満足感に包まれたり。
転居後、しばらくしてからネットで読んだ記事。
――人生100年時代、引っ越しを伴う住み替えは、気力も体力も伴うもの。いずれ住み替えようと思うなら、早いに越したことはない。――
その文章を読んで、
(気力も体力も伴うって、本当にそのとおりだったわ!)
引っ越しは何度か経験があるが、今までで一番大変だった、私にとっては激動の引っ越しだった。当日、ダンボール詰めが終わっていなかったこと、業者の到着が午後5時前、新居の搬入終了が午後8時45分、買っておいたパンと飲物の食事をすませ、ガスの開通の予約時刻に間に合わなかったため、お湯が出ない。仕方なく、夜の10時に、思いきって、水のシャワーを浴びた。昼間は比較的暖かかったが、晩秋の夜遅くの水風呂ではないが髪も洗い全身を洗う水のシャワーは冷たくて、寒くてふるえるほどだった。生まれて初めての経験だったが、よく風邪をひかなかったと思う。ドライヤーはどのダンボールかわからないし、早朝から、ずっとダンボール詰めの作業をし続けて、疲れて眠くてスマホもテレビも見ずに睡魔に襲われた。
先日、編集者Kさんが郵送してくれた書類が転送されてきて、転居通知を出してないことと新住所をメールしたら、
――知らない街なので、これから色々と探検ができますね!――
と書かれていて、探検という言葉に男性らしい感性を感じ取ったが、確かにまだ自宅の周辺も駅前繁華街も、歩き回ると小さな発見の喜びが次々とある。
現在はまだ片付けが終わらず、主に〈捨て活〉の日々。大量の本や衣料などを捨てては減らし、粗大ゴミの予約もし、スッキリしたら、少しはインテリアも工夫して、私の小さなお城を作る。そう思いながらの整理整頓は浮き浮きワクワク。外出も楽しいけれど、一日中〈おうち時間〉というのも楽しいものである。
ところが、引っ越した翌日から、床拭き掃除を始めた。築2000年の建物だがリノベーションされているから、新築同様。見た目はどこもきれいだが、引っ越し当日は業者の人たちが搬入作業で出たり入ったりして、かなりのホコリが天井に舞い上がっているはず。朝が一番、そのホコリが床に落ちているからと、数日間のつもりだったのが、その床拭き掃除が好きになり、習慣になってしまったのである。
転居前のように立ったままワイパーを使って拭くのではなく、屈み込んで、手にしたシートでていねいに拭いていく。そのほうが徹底して拭けるし、運動にもなると気づいた。折りたたんだシートを、きれいな面に変えては裏表使って拭くが、すべてバリアフリーだから拭きやすい。転居前と違って和室はないし、カーペットはダニの温床だから敷かないほうがいいという情報を知っていたから、居室2つの床と、キッチンや洗面所やトイレや廊下から玄関まで拭くと、シートを裏表使っても3枚。布埃や髪の毛や繊維屑など、毎日、どこかに落ちている。
(やっぱり、お掃除って毎日するものなのね)
今ごろになって、そう思う。以前はワイパーで、ほとんど一日おき。ホコリで人間死なないもンねと、時々、2日か3日おきになることも。けれど、朝、床掃除してきれいだと、歩き回る時に気分がいいことも知った。
転居して間もないころは、エアコン取り付け業者とか買った家具の搬入や組み立ての業者とか、カーテンレール取り付け業者とか、ひかり電話移転工事とか、その他、頻繁に業者が出入りしたので、帰った後には必ず念入りに床拭き掃除をした。作業の邪魔らしくスリッパをはかないせいか業者が何度も往復した廊下を拭くと、シートが黒くなるほど汚れが付いていた。母は来客が帰った後、掃除機をかける習慣があったと、床拭きしながら思い出し、
(きれい好きな性格って大変なのよね。でも、運動になるっていうメリットがあるもンね)
そう呟いたり。
掃除は床掃除が一番時間がかかるから、気分が最も意欲的な朝に向いている。床以外の洗面所、トイレ、浴室、キッチンなどの掃除はラクなのである。つくづく進化していると感じたのは、リノベされて新しいから掃除が簡単というより、掃除がラクにすむように作られているからだ。以前のマンションではクレンザーをつけたりして時間がかかったのに、現在は週に1回でも、すぐきれいになる。固いスポンジやクレンザーは傷がつくから禁止と取扱説明書に書いてあるが、柔らかスポンジかウェスで少し撫でれば、すぐきれいになる。
床掃除が終わると、コーヒーを飲みながらテレビの前のソファに座る。ビデオの録画予約をした後、録画の〈テレビ体操〉を行う。インストラクター指導の体操5分とラジオ体操第1か第2を5分だから、わずか10分。1年以上、1日も欠かさず、毎朝続けている。毎日変わるオリジナルの体操はストレッチの要素もあり、朝の身体にふさわしい動きが多い。昔は全然、興味もなかったのに、ちょっと見てみようと思い立って録画し、やっているうち、予想以上に楽しめることを知った。第1より第2のほうが好き。子供のころしか経験がなかったラジオ体操は、大人にはきっと、もの足りないに決まっていると思っていたら、そんなことはないと知った。寝違いもしないし身体のどこにも痛みがない幸運に感謝のような気持ちや、全身をのびのびと動かす心地良さが湧いてくる。インストラクターの指導どおり完璧な動きで、朝の身体の筋肉をほぐしたり伸ばしていく心地良さや、南東の朝の陽射しが差し込んでくるリビングにも愛着のような感情が湧いてきて、このマンションを選んで良かったと満足感に包まれたり。
転居後、しばらくしてからネットで読んだ記事。
――人生100年時代、引っ越しを伴う住み替えは、気力も体力も伴うもの。いずれ住み替えようと思うなら、早いに越したことはない。――
その文章を読んで、
(気力も体力も伴うって、本当にそのとおりだったわ!)
引っ越しは何度か経験があるが、今までで一番大変だった、私にとっては激動の引っ越しだった。当日、ダンボール詰めが終わっていなかったこと、業者の到着が午後5時前、新居の搬入終了が午後8時45分、買っておいたパンと飲物の食事をすませ、ガスの開通の予約時刻に間に合わなかったため、お湯が出ない。仕方なく、夜の10時に、思いきって、水のシャワーを浴びた。昼間は比較的暖かかったが、晩秋の夜遅くの水風呂ではないが髪も洗い全身を洗う水のシャワーは冷たくて、寒くてふるえるほどだった。生まれて初めての経験だったが、よく風邪をひかなかったと思う。ドライヤーはどのダンボールかわからないし、早朝から、ずっとダンボール詰めの作業をし続けて、疲れて眠くてスマホもテレビも見ずに睡魔に襲われた。
先日、編集者Kさんが郵送してくれた書類が転送されてきて、転居通知を出してないことと新住所をメールしたら、
――知らない街なので、これから色々と探検ができますね!――
と書かれていて、探検という言葉に男性らしい感性を感じ取ったが、確かにまだ自宅の周辺も駅前繁華街も、歩き回ると小さな発見の喜びが次々とある。
現在はまだ片付けが終わらず、主に〈捨て活〉の日々。大量の本や衣料などを捨てては減らし、粗大ゴミの予約もし、スッキリしたら、少しはインテリアも工夫して、私の小さなお城を作る。そう思いながらの整理整頓は浮き浮きワクワク。外出も楽しいけれど、一日中〈おうち時間〉というのも楽しいものである。