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一条きらら 近況

【 近況&身辺雑記 】

ビデオの映画

1986年06月11日 | 過去のエッセイ
 自宅の2軒隣のビルの1階に、レンタルビデオショップができたのは初夏のころだった。
 映画のビデオを借りたいと思いながら、店舗を眺めるだけでいつも通り過ぎていたのは、夏から秋にかけて書き下ろしを2本書くので自制していたためだった。いったん借り出すと夢中になってしまいそうな気がしたのである。
 9月中旬に、ようやく店に入り、入会手続きをして、ワクワクしながら3本借りて来た。
 最初のころは〈1泊〉で借りたが、自宅のマンションを出て徒歩1分の距離なので、当日に返却するようになった。1泊500円、当日返却300円で、途中から3千円か5千円のカードを買うことにした。
 9月から11月中旬までの2か月間に、53本借りたが、中断して観るのをやめたのもある。
 映画館で観た映画は、やはりビデオでは迫力に欠ける。それでも『ドクトル・ジバゴ』は、やはり感動した。映画館で初めて観て、数年後にテレビで観たから、3度目である。
 何と言ってもオマー・シャリフが素敵である。他のどの映画に出演したオマー・シャリフより、ジバゴ役が最高に素晴らしい。詩人であり医師であり、妻を愛しているが、情熱的なララに惹かれずにいられないジバゴ。
 しかも何年もの間、ララを想い続けて、男女の関係になるのはずっと後、ララが娘と2人暮らしの生活になった時である。2人が結ばれても、ララよりジバゴのほうが積極的で情熱的で、男の純真な気持ち、妻以外の女を愛した苦悩が、とても良く伝わってくる。テーマ音楽の『ララのテーマ』も素晴らしい。この曲には、私にとって忘れ難い思い出があるので、胸に熱いものがこみあげてくる。私が高校生のころ、初めてこの曲を聞いた。
 この映画をビデオで観た夜は、昂奮して眠れなくなってしまったほどだった。レンタルではなく、このビデオをどこかで売ってないだろうかと思った。
 最近、借りて来たビデオで観たのは『ハスラー』と『ハスラーⅡ』である。『ハスラーⅡ』はちょっと期待はずれ。ただし、最後の「カム バック」というセリフは素敵である。『ハスラー』はやはり3度目に観た。
 好きな俳優は、アラン・ドロン、ゲーリー・クーパー、ジェームス・ディーン、ロバート・テーラー、グレゴリー・ペックなどだが、皆若いころのほうが美男子で、中年のドロンがいいという人もいるが、やはり若いころのほうが素敵である。ポール・ニューマンも『評決』など渋い味わいもあるが、若いころのほうがずっと好き。
『ハスラー』のポール・ニューマンは、何と言ってもギャンブラーの男らしさがにじみ出ている。決して荒々しいとか強い男ではない。むしろ、とてもナイーヴである。女性を愛している自分の心に気づかない。ギャンブルに取り憑かれている、男の情熱、非情な勝負師の世界。ポール・ニューマンの憂いを含んだ瞳が、すさんだ生活に落ちてもハスラーとして生き続けるといった男の役を、素晴らしく演じている。この映画にピッタリのキャストなのである。
 53本すべて洋画である。アメリカ映画が多いが、フランス映画もとても好き。イタリア映画も好き。
 最近観て面白かったのは、『殺意の夏』『哀しみのトリスターナ』『ジェームス・ディーン物語』『美しさと哀しみと』『レディ・ホーク』『誰がために鐘は鳴る』など。
 1日に5、6本観てしまう日もあるので、借りたいビデオが少なくなってきた。
 けれど、やはり映像より活字が好きな私は、就寝前にベッドで小説を読まないと眠れない。
 レンタルショップでビデオを続けて借りて、映画はそろそろ飽きてきたが、小説は一向に飽きないのは、活字中毒なのかもしれないと思ったりする。

※掲載誌・掲載年月不明
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