先日、テレビで高橋真梨子が出演している番組を見た。
<高橋真梨子 in NEW YORK>というタイトルで、ニューヨークでの撮影と、1993年にカーネギー・ホールで歌った映像と、日本のテレビ局スタジオで歌う映像が交互に放映された。高橋真梨子のスタイルの良さに驚愕! Tシャツとジーンズの姿もスリムで若々しく美しかった。黒の服が多かったが、よく似合っていた。明るい栗色にカラーリングしてウェーブさせたヘア・スタイルも女らしく魅力的で、黒い帽子がとても素敵だった。
この番組で高橋真梨子が歌ったのは、『遥かな人へ』、『桃色吐息』、『五番街のマリーへ』、2008年発表の『目を見て語れ 恋人たちよ』、1993年の『My Heart New York City』、そして、私がこの世のあらゆる歌の中で最も好きな歌、と言っていい『for you…』。全部で6曲。『はがゆい唇』が、なかったのが残念だった。
何度聞いても素晴らしい『for you…』。この歌には思い出がある。高橋真梨子の歌を好きになったのは10数年ほど前。私はテレビで歌番組をあまり見ない。CDも、あまり聞くほうではなかった。けれど、高橋真梨子がデビューしたころの『五番街のマリーへ』は聞いたことがあって知っていた。いい歌だと思ったし、その声も歌い方も素敵だと思ったが、CDを買うとかコンサートに行くほどのファンではなかった。
10数年前、友人が高橋真梨子のカーネギー・ホールでのコンサートのVHSビデオを、私がカラオケで歌う時の歌を練習するようにと言って買って来てくれた。友人とは何度かカラオケを歌ったことがあるが、私の声に高橋真梨子の歌が合うと言うのである。そうかしらと、私は半信半疑だった。高橋真梨子の声はややハスキーがかった甘い感じの声で、私の声とは似ていない。それに、歌も難しそうで、最初はためらった。
当時はパーティや飲み会の後、故・菊村到先生に連れられ、カラオケクラブやカラオケルームへ、よく行った。菊村到先生は銀座が好きで、カラオケが趣味。自然、私はカラオケクラブで他の客たちが歌うのを聞いて覚えるようになった。デュエット曲はすべて、そうである。カラオケのためにテレビの歌番組を見るとかテープやCDを買って聴くという気にならなかったためである。
その高橋真梨子のVHSビデオを見ながら1人で歌って練習していたら、どの歌も好きになってしまった。数か月後、友人と銀座のフランス料理レストランで食事を共にした。その近くにあるシティホテルの2階にカラオケルームがある。室内は広く、ソファもテーブルも大きくてゆったりとしている。L字型のソファの一方に私が座り、もう一方に友人が座って、練習の成果を<披露>することになった。『桃色吐息』、『はがゆい唇』、『for you…』。私と違って、友人は子供時代にバイオリンの稽古をしたり、学生時代に仲間とバンドを作ったり、ロックもポップスもクラシックもジャズもさまざまなジャンルの音楽に精通している、と言っていい人だから、当然、音感がいいし、リズム感もある。その友人以外の人たちとのほうがカラオケの機会がはるかに多い私に、
「皆の前で恥をかかないように、上手に歌えるように」
と、よけいなお世話とは言わないけれど、そのカラオケルームで<特訓>してくれたのである。何度も同じ歌を、随所で注意されながら歌うと、何とか歌いこなせるようになった。そして、ついに、歌ってる最中に1度も注意されずに『for you…』を歌い終えたので、きっと褒めてもらえる──と、期待をこめて友人の顔を見ると、
「うーん、メリハリが不足。もっと感情こめて歌えば、メリハリが出てくる」
そう言ったのである。
(メリハリ……ですって?!)
私は頭に血が昇るのを感じ、マイクをテーブルの上に荒々しく置くと、すっくと立ち上がり、
「あたし、プロの歌手になるとかCD出すとかするわけじゃないからメリハリのある完璧な歌い方なんてできなくていいの! もう、歌わない!!」
と言うなり、次の瞬間、泣き出してしまった。友人は慌てた。何とか私を宥めるような言葉を口にし、もう1回歌ってごらん、と言うので、歌ったら、今度は褒めて拍手してくれたので、うれしくなった。
その後、さまざまな機会でカラオケを歌う時、高橋真梨子の歌を歌うと、誰もが褒めてくれる。その歌、合ってる、とか、一番いい、とか。それを友人に話すと、自分のお陰と自慢する。確かに感謝しているけれど……。
最近、食事の後で友人はカラオケに誘わないのである。
「どうして、カラオケ行かないの?」
私は聞いた。
「このごろ、歌うと、喉が痛くなるんだ」
仕事の付き合いでカラオケに行っても、歌わないことにしていると言う。
(本当かしら……)
私とカラオケに行くと、歌ってる途中でつい注意したくなり、いつかみたいに泣き出されたら宥めるのも面倒だし……そう思って誘わなくなったのかもしれないと、私は疑っている。
<高橋真梨子 in NEW YORK>というタイトルで、ニューヨークでの撮影と、1993年にカーネギー・ホールで歌った映像と、日本のテレビ局スタジオで歌う映像が交互に放映された。高橋真梨子のスタイルの良さに驚愕! Tシャツとジーンズの姿もスリムで若々しく美しかった。黒の服が多かったが、よく似合っていた。明るい栗色にカラーリングしてウェーブさせたヘア・スタイルも女らしく魅力的で、黒い帽子がとても素敵だった。
この番組で高橋真梨子が歌ったのは、『遥かな人へ』、『桃色吐息』、『五番街のマリーへ』、2008年発表の『目を見て語れ 恋人たちよ』、1993年の『My Heart New York City』、そして、私がこの世のあらゆる歌の中で最も好きな歌、と言っていい『for you…』。全部で6曲。『はがゆい唇』が、なかったのが残念だった。
何度聞いても素晴らしい『for you…』。この歌には思い出がある。高橋真梨子の歌を好きになったのは10数年ほど前。私はテレビで歌番組をあまり見ない。CDも、あまり聞くほうではなかった。けれど、高橋真梨子がデビューしたころの『五番街のマリーへ』は聞いたことがあって知っていた。いい歌だと思ったし、その声も歌い方も素敵だと思ったが、CDを買うとかコンサートに行くほどのファンではなかった。
10数年前、友人が高橋真梨子のカーネギー・ホールでのコンサートのVHSビデオを、私がカラオケで歌う時の歌を練習するようにと言って買って来てくれた。友人とは何度かカラオケを歌ったことがあるが、私の声に高橋真梨子の歌が合うと言うのである。そうかしらと、私は半信半疑だった。高橋真梨子の声はややハスキーがかった甘い感じの声で、私の声とは似ていない。それに、歌も難しそうで、最初はためらった。
当時はパーティや飲み会の後、故・菊村到先生に連れられ、カラオケクラブやカラオケルームへ、よく行った。菊村到先生は銀座が好きで、カラオケが趣味。自然、私はカラオケクラブで他の客たちが歌うのを聞いて覚えるようになった。デュエット曲はすべて、そうである。カラオケのためにテレビの歌番組を見るとかテープやCDを買って聴くという気にならなかったためである。
その高橋真梨子のVHSビデオを見ながら1人で歌って練習していたら、どの歌も好きになってしまった。数か月後、友人と銀座のフランス料理レストランで食事を共にした。その近くにあるシティホテルの2階にカラオケルームがある。室内は広く、ソファもテーブルも大きくてゆったりとしている。L字型のソファの一方に私が座り、もう一方に友人が座って、練習の成果を<披露>することになった。『桃色吐息』、『はがゆい唇』、『for you…』。私と違って、友人は子供時代にバイオリンの稽古をしたり、学生時代に仲間とバンドを作ったり、ロックもポップスもクラシックもジャズもさまざまなジャンルの音楽に精通している、と言っていい人だから、当然、音感がいいし、リズム感もある。その友人以外の人たちとのほうがカラオケの機会がはるかに多い私に、
「皆の前で恥をかかないように、上手に歌えるように」
と、よけいなお世話とは言わないけれど、そのカラオケルームで<特訓>してくれたのである。何度も同じ歌を、随所で注意されながら歌うと、何とか歌いこなせるようになった。そして、ついに、歌ってる最中に1度も注意されずに『for you…』を歌い終えたので、きっと褒めてもらえる──と、期待をこめて友人の顔を見ると、
「うーん、メリハリが不足。もっと感情こめて歌えば、メリハリが出てくる」
そう言ったのである。
(メリハリ……ですって?!)
私は頭に血が昇るのを感じ、マイクをテーブルの上に荒々しく置くと、すっくと立ち上がり、
「あたし、プロの歌手になるとかCD出すとかするわけじゃないからメリハリのある完璧な歌い方なんてできなくていいの! もう、歌わない!!」
と言うなり、次の瞬間、泣き出してしまった。友人は慌てた。何とか私を宥めるような言葉を口にし、もう1回歌ってごらん、と言うので、歌ったら、今度は褒めて拍手してくれたので、うれしくなった。
その後、さまざまな機会でカラオケを歌う時、高橋真梨子の歌を歌うと、誰もが褒めてくれる。その歌、合ってる、とか、一番いい、とか。それを友人に話すと、自分のお陰と自慢する。確かに感謝しているけれど……。
最近、食事の後で友人はカラオケに誘わないのである。
「どうして、カラオケ行かないの?」
私は聞いた。
「このごろ、歌うと、喉が痛くなるんだ」
仕事の付き合いでカラオケに行っても、歌わないことにしていると言う。
(本当かしら……)
私とカラオケに行くと、歌ってる途中でつい注意したくなり、いつかみたいに泣き出されたら宥めるのも面倒だし……そう思って誘わなくなったのかもしれないと、私は疑っている。