半年以上続いた各エリアの閉鎖も、感染する人たちが徐々に減り、少しずつ日常生活を取り戻し始めた。
まだまだ、感染の危険性は捨て切れないので、人々は蜜を避ける工夫をしながら生活をしている。
これはうわさだが、どこかの星のエイリアンが、宇宙へと開発を進める地球人の進出を防ぐため、その人口を減らそうとウィルスをバラまいているのではないかという人たちもいる。
ウィルスが最初に発生・拡大したエリアとウィルス感染が急激に広がったエリアが、お互いの対応を非難し合うニュースも流れた。
それに乗じて、エイリアンが人間になりすまして各エリアで事件を起こし、人々を暴動に駆り立て、ウィルスを撒いて、地球人の滅亡を図ろうとするドラマも評判になった。
キラシャは、『あたしが生まれる前にも、大流星群がやってくるといううわさがあったらしいけど、結局、本当に来ちゃったんだよね。
これって、本当なのかも…』とそんなドラマを見ながら思った。
『同じ人間なのに、なんで仲良くやっていけないんだろう。地球の仲間がいじめ合ってたら、それこそエイリアンの思うつぼじゃない…』とも思う。
パールとマイクも、アフカ・エリアから来たグループに何かと嫌がらせを受けながら、二人が助け合って生きてこれたのだ。
その話を聞くたびに、二人がアフカに戻ってからも、無事でありますようにと祈ってしまう。
『そういえば、あれもエイリアンの仕業だったのかな?』
キラシャ自身も、この平和なエリアで、危険な思いをしたことがある。
ウィルスが発生するより少し前のことだった。学校から帰る途中、気分転換に人通りがほとんどない場所を歩いていた時、目の前にすっと現れた男に、いきなり腕をつかまれた。
その瞬間、キラシャは気を失い、気が付くと自分がどこにいるかもわからない…。
未来のドームでは、転送装置を使った移動が許可され、早く目的地に着くことができるが、5年前にヒロが作った、Mフォンを使った転送を試しに使ってみたケンとキラシャ。
あの時は、大地震でエリア全体が混乱していたこともあり、ケンとキラシャが転送を無許可で行ったことは、その事情を防衛軍から情報提供があったためか、咎められなかった。
ただ、勝手にMフォンを改良し、他のエリアで実験をしたヒロには、半年の謹慎が命じられ、授業にはオンラインでの参加が認められた。
もっとも、謹慎期間中、ヒロは自作のロボットをクラスの自分の机に座らせ、他の子にちょっかいをかけて、気を引こうとして先生に何度も注意を受けていたし、
自分の部屋にいろんな部品を持ち込んでいたから、自分の目指すMフォンの開発に、ひとりで没頭していたようだが…。
あれから、Mフォンも進化して、転送の安全性が保障されるようになり、ドーム内でのMフォンを使った転送が、管理局から許可されるようになった。
火災などの危険な現場から、いち早く逃げるためにも有効なアイテムなので、今では多くの人が利用している。だが、それが犯行にも使われるようになってしまった。
その時、キラシャのMフォンに、ケンが連絡を取ろうとしていたらしく、Mフォンの反応がないことに異変を感じたケンが、すぐパトロール隊に連絡した。
例え、Mフォンが壊されていても、体内にあるピコ・マシンを通じて、キラシャの居場所は特定できる。
これは、ヒロが最新のMフォンでダウンロードできるように開発したアプリだ。
ケンはそのMフォンで、キラシャのピコ・マシンの反応を調べ、キラシャのいる場所の近くへと転送してきた。
キラシャのそばには、同じように拉致された人なのか、何人か黙ってうずくまっている。犯人は見えるところにはいないようで、どこに潜んでいるかもわからない。
救出には時間がかかったが、ケンのちょっとしたアイデアでキラシャは脱出でき、拉致されていた人たちもパトロール隊によって救出された。
キラシャを連れ去った人物のMフォンやピコ・マシンの反応はなかったので、それ以上の追跡は不可能とされた。
キラシャの被害は、Mフォンを壊されたことと、腕を強く引っ張られたあざだけですんだが、突然拉致されたというショックは、しばらく後を引いた。
それに、いち早く助けに来てくれたケンには、頭があがらない。
そんなキラシャに、ウィルスに対する外出規制が解除され、少し羽を伸ばしたくなったのか、ケンから海洋牧場に行かないかと、キラシャに誘いがかかった。
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