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長寿幸せ企業への「変化と継続」2022-25

第4章(5)これから100年間潰れない会社への挑戦 「なぜ今老舗の倒産が増加しているのか!?」

第4章『長寿幸せ企業』への取り組み

 これから100年間潰れない会社への挑戦「なぜ今老舗の倒産が増加しているのか!?

 「幸せ企業のサイクル」に入り込むことが出来ても、「長寿企業」つまり永続企業になることはさらに大変です。
内部環境だけでなく、外部環境の急激な変化や自然災害、事件・事故などの人的災害は永く経営していれば避けることは出来ません。それらの大きな経営危機からなんとか抜け出し長寿の糸を切らさないようにしなければなりません。

 中小零細ファミリー企業が永続企業であるために重要なのはどんなことなのでしょうか。「幸せ企業」の条件と重なることが幾つかありますが、次の4つの鉄則です。

  1. 自己資本比率50%以上=実質無借金経営

  2. 投資対策=新規事業と人(採用と教育)への投資

  3. 早い段階からの継承対策=後継者対策、相続及び相続税対策・保険対策

  4. 「不易流行」=「本末」の「本」と「末」、「人間学」と「時務学」

順番に見ていきましょう。

  1. 自己資本比率50%以上=実質無借金経営

     まずは、稲盛和夫氏の言葉を借りると、「平時においては土俵際でなんとか凌ぐような経営ではなくいつも土俵の真ん中で相撲を取ること(土俵ど真ん中経営)」です。
     それを実現するには、自己資本比率が少なくとも50%以上で、それに見合う流動資産があることです。自己資本が50%以上あっても、それに見合う流動資産がなく、換価できない土地や建物、付属構築物などがあるだけという状態では優良企業とはいえません。

     1円も借入金がない完全無借金企業でなくても、その借入に見合う流動資産があって自己資本比率が50%以上あれば「土俵ど真ん中経営」に近い優良企業と言えるでしょう。
     重要な経営指標はたくさんありますが、私は経営危機にある中小零細ファミリー企業で自己資本比率を良くすることに専念することで、やらなければいけないことがはっきりとしてくると考えています。

     自分の会社は赤字続きで債務超過目前なのに、自己資本比率50%以上なんて絶対に無理と思っている経営者の皆さん、井上経営研究所の俯瞰塾の会員さんで自己資本比率50%以上や無借金経営を達成された企業は100%皆さんと同じような状態だった会社なのです。熱意があって、変化を恐れず、やりたくないことも継続できる方であれば誰でも手に届くことなのです。

     

  2. 投資対策=新規事業と人(採用と教育)への投資


    4の「流行」とも関連しますが、永続するためには常に変化が必要です。特に企業の柱事業を常に変化させることが重要です。常に近い未来企業の柱となる新規事業を開発していかなければなりません。我が社は100年以上同じ事業でやって来れたのだから新規事業の必要などないということにはなりません。
     既に踏み込んでいるIT革命の時代は、産業革命の時代と変化のスピードが驚くほど違います。1世代同じことをやっていても頑張りさえすれば一世代約30年がなんとかなった19世紀から20世紀と違い、21世紀初頭でもう既に、よほどの参入障壁の高いオンリーワンの事業を除いて、10年黒字事業で居続けることが非常に難しい時代に突入しています。

     東京商工リサーチの調査では「2015年に倒産した業歴30年以上の『老舗』企業は2,531件だった。前年(2,647件)より116件減少したが、倒産に占める構成比は32.3%と前年比1.7ポイント上昇した。これは過去20年間で最高を記録した」とあります。
     堅実経営で土俵のど真ん中にいて、倒産しにくかった老舗企業といえども21世紀を生きぬくことは簡単ではありません。
     永続のために新規事業開発が重要なことはもちろんですが、新規事業はすべてが成功するわけではありません。未来の為にある程度のリスクを賭けてやることは大切ですが、新規事業が失敗することも前提にして投資計画立てることが絶対条件です。撤退などの失敗をしても、経営危機に陥ることのないような新規事業計画でなければなりません。不足する資金をすべて借りてスタートするような新規事業は失敗すればいっきに土俵際まで追い込まれることになりかねません。 とは言っても常に10年後に核となる新規事業を開発し続けることは永続のための鉄則です。
     また、長期経営計画と長期経営戦略をもとに早い段階からバランスのいい人材採用・教育への投資も必要です。

     

  3. 早い段階からの継承対策=後継者対策、相続及び相続税対策・保険対策

     中小零細ファミリーの老舗企業の倒産が増えている理由は外部環境の変化の速さだけではありません。「なぜ今老舗企業の倒産が増加しているのか」の大きな原因の一つは、事業承継の対策が遅すぎることがあげられると考えています。
     第二次大戦後の昭和22年までは長兄への単独相続が原則でした。また相続税率も非常に低かったために中小零細ファミリー企業の相続で経営資産が分散することはありませんでした。
     次に、現在団塊の世代と言われる世代が事業承継した昭和4050年代は民法や相続税法は変わっていたとはいえ、長男が事業資産を一括相続するのに、他の兄弟などが遺留分などの権利を行使することは稀でした。マスコミも個人の相続の権利話題にすることも、個人がその権利を行使することもそれほどではありませんでした。それに、高度成長時代からまだ余韻のある時代で老舗には相続税を支払う余裕がありました。
     しかし、現代の相続はどうでしょうか。会社に利益があるとはいえ、老舗といえども経営者個人が後継者と他の兄弟などに公平に分配できる額の潤沢な現金資産を持つことは難しい時代です。
     例えば、相続人が長男の経営者と会社とは関係ない弟2人だとしましょう。被相続人の前経営者は会社の株(2億円の70%14000万円、残り306000万円は3人の兄弟が10%ずつ保有)と既に長男が相続し住んでいる個人所有の土地と家(2000万円)と預貯金(2000万円)の合計18000万円と仮定しましょう。
     遺言書で会社の株と個人は土地と家は長男に譲ると書いていても、弟2人は個人の権利を堂々と主張し、遺言書があっても、堂々と遺留分を請求できます。この場合の遺留分は9000万円ですので相続人の兄弟3人で一人3000万円をもらう権利があります。
     この時長男が取れる対策は・・

  • 3000万円の内、預貯金2000万円は弟にそれぞれ1000万円譲り、残りそれぞれ2000万円分の会社の株を譲り(持ち分は兄が60%の12000万円、弟はそれぞれ元々持っていた2000万円の株に加えて20%の4000万円となり弟二人合わせれば、持ち分は8000万円の40%になってしまいます。兄が3分の2を確保できないので会社に大きな影響力を持つようになります。)実態のない役員などにして、応分の給与を払い続けているところが散見されます。

  • 兄は会社に口を挟まれないようにしたい場合や、弟がまとまった現金を必要とする場合は弟たちは公開されていない中小零細ファミリー企業の株を持っているより兄に買い取ってもらうことを要求しますが、預貯金1000万円を2人の弟に譲り、残りの6000万円を兄が個人で借りて工面するしかありません。(会社で借りなくても、多くのケースで会社が絡んだ借入になっている)

 いずれの場合も、会社の財務体質は急激に悪くなります。しかし、後継者がはっきりした段階や兄弟が大学等卒業して進路がある程度決まったときから時間をかけて、事業承継対策として相続税対策や保険金対策をやっていればこのような危機は未然に防ぐ事ができます。

老舗企業の継承は社長交代のときでは既に遅すぎるのです。


 4.「不易流行」


「不易」=人間学、「本末」の「本」

 「不易」とはどんな時代にあっても変わらない原理原則です。「本末」の「本」です。
 この章のはじめに、「老舗企業として大事なことを漢字一文字で表現するとどんな漢字ですか」という質問で814社の回答で一番多かったのが、「信」(197社)、続いて 「誠」(68社)ということをご紹介しましたが永続企業であるもっとも大切な根底を支えるものは、信用や誠実さと言った目に見えない資産=「のれん」です。
 まさしく「信用」とか「誠実」とかの言葉で表現される「徳性」が永続企業の根底を支えるもので利益や資産もこれらに支えられてはじめてその価値が生きてくるのです。

 

「流行」=時務学、「本末」の「末」

 「流行」とは時代に応じて変化することです。「本末」の「末」です。
 事業などは時流を見据えながら変化していかなければなりません。事業が順調なときにこそ、新規事業に取り組んで、次の時代への変化の準備をしておかなければなりません。

 経営で言うと、経営理念の「使命(ミッション)」や「目的地(ビジョン)」、行動規範、社是など「徳性」に係るものが「不易=本」で、これを学ぶのが「人間学」です。本来、学問とは「人間学」のことでした。


「経営目標(ターゲット)」や「戦略(ストラテジー)」、戦術などに当たるのが「流行=末」で、時代や時流に応じて「知識や技術」を学び、実践し続けて「知恵や技能」にするのが「時務学」です。

 経営者はこれらを学び続けなければなりません。

 そうして「変わってはいけないもの」と「変わらなければいけないもの」を識別する力を持たない限り、永続企業であり続けることは出来ないと断言できます。
 

 「不易(=「本」)」と「流行(=「末」)」を取り違えて間違った選択をすることを「本末転倒」というのです。

 「本末転倒」しないように、学び続けましょう。

 

 次回は、第4章『長寿幸せ企業』への取り組み 

(6)伊與田覺先生から学んだ「人間学」(仮題)を予定しています。

 

 このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。

 井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に

  1. 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
  2. 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
  3. 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業

 に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。 

 1.「経営救急クリニック

 2.「長寿幸せ企業への道

 3.「事業承継・M&A

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