(6)「経費削減対策」 第1回
経費削減対策の重要な道具-「ものさし」
私に相談されるほとんどの皆様は
「経費削減は既にとことんやっており、乾いた雑巾からはもう1円の経費も削減できない」
とおっしゃられます。
しかし、私が実際にお伺いして「経費削減対策」を実行しますと、削減できる経費が山ほど出てきます。私に言わせれば中小企業の皆様の行われている経費対策は「経費節約」であっても「経費削減」とは言えない場合が多いのです。
ではなぜあなた自身では経費節約しか出来ないのでしょうか?
その原因は大きく2つあります。
① 経営者自身では「見栄」、「プライド」、「しがらみ」を断ち切ることが出来ないこと。
② 経費削減の「ものさし」がないこと。
会社が正常な時と再建期間中とでは経費に対する「ものさし」が違っていなければなりません。会社が正常なときには適正な経費であっても、経営再建や経営改善の期間中には使うべきではない経費がたくさんあるのです。
適切に経費を削減するためには、今まで使っていた「ものさし」(=判断基準)を捨て、新しい「ものさし」で経費について考えなければならないのです。新しい「ものさし」とは、自社の身の丈に合った「ものさし」です。
特に、資金繰りが苦しい時期には、会社が順調な時期と同じ「ものさし」を使うべきではありません。少なくとも、会社が正常な状態になるまでの間は、特別に厳しい「ものさし」を使うことが求められます。そうしなければ、会社が倒産してしまうかもしれないからです。
私が経費削減に使う「ものさし」は、以下の3点です。
(1) 「この経費を使わなければ、売上高に大きな影響が出るようになるか」
(2) 「この経費を使わなければ、利益額に大きな影響が出るようになるか」
(3) 「この経費を使わなければ、商品・サービスの品質、安全性、信用性など、会社の根幹に大きな影響が出るようになるか」
元帳や経費帳で一項目ずつ「この3つのものさし」をあてて判断していかなければなりません。例えば新聞を何誌も購読している方に言いたいのは再建期間中のあなたが取引先との会話に世界情勢を話している余裕はないということです。再建期間中のあなたの会社は新聞など必要ありません。自宅で1誌購読していれば後はテレビやインターネットで十分です。正常企業に戻られた後、適正な報酬を取ることが出来るようになってから、好きなだけ雑誌や新聞を再購読するべきです。
もうひとつ重要なことは
経費削減は贅肉を殺ぎ落とすことが目的であり、筋肉まで削ぎ落としてしまうと、売上に大きな影響を当ててしまい、縮んだ胃袋のようにますます売上が減少して再建計画が頓挫してしまうことがありますので人件費や販売経費を削減する際には慎重さが必要です。
また、経費削減対策のみ実行されても会社は良くなりません。経費削減対策は経営再建プログラムの一部であるということをご理解ください。
私が、経営危機に瀕した中小零細ファミリー企業の再生・再建から健全化、さらに『長寿幸せ企業』への道をお手伝いする上で柱としているのが
①徳性 : ブレない経営を支える柱
②知恵と技能 : 知識や技術を行動することによって会得したもの
③習慣 : これらを息をする如く継続していき習慣化できること
④変化 : 時代に応じて、事業の柱などを変えていくこと
です。
各項目については、今後このブログでそれぞれ詳しく解説していきますが、
要約しますと、
①は、
-
嘘をつかないこと
たとえば、粉飾決算はプログラム着手後はすべて公にして頂きます。私のクライアント様には1社たりとも粉飾されている企業はありません。というのも、私は以後粉飾をやめるというお約束できない企業の【経営再建プログラム】には着手しないからです。粉飾は「天に向かってつばを吐く」行為です。
「赤字決算を避けるために・・」
「借り入れするために・・」
「経営審査事項1のために・・」
といって
「今期だけだから、来期利益が出たら元に戻すから・・」
と言って始めてしまった粉飾は、ほとんど戻せることはありません。
それより悪いのは、自分自身に嘘をついて騙してしまうからです。赤字決算であれば、金融機関等から
「同対策を打つのか?経営改善計画書を作成してほしい。」
など色々注文つけられますが、それもありません。赤字の決算書や試算表を見ることもありませんので、粉飾からしばらくすれば、経営者自身も会社が赤字であることも忘れてしまいます。ということは、経営改善や経営再建に取り組もうなどと考えませんので、体質は何も変わりません。結局、赤字状態が続いて、粉飾金額もどんどん増えて、「倒産への負の連鎖」に入り込むことになります。
逆に、粉飾を表に出して金融機関等に頭を下げるとどういうことになるでしょうか?会社の財務状態がはっきり表に出ますので、その程度によっては一気に経営危機に陥ります。金融機関もこれ以上の借り入れには応じてくれないでしょう。ここでよく考えてみてください。これがあなたの会社の本当の経営状態なのです。こうなれば、どんな経営者でも必死になります。この状態で【経営再建プログラム】などに取り組む人は、健全企業に戻るために「見栄、プライド、しがらみ」を捨てて大変な対策に挑むため、再建成功の確率はぐっと上がってくるのです。
その上、粉飾した分が税務上の繰越欠損金2となれば、繰越期間の間、赤字分が利益と相殺されるまで税金を支払う必要がなくなり、【経営再建プログラム】で上げた利益をそのままキャッシュフローとして活かすことができますので、財務体質も急激に良くなります。
これをできない方は、本当は赤字決算なのに、税金まで支払い無駄なお金を使ってしまいます。行き着く先は、資金繰りのために親、兄妹、親戚、友人などに無心をし、「倒産への負の連鎖」の坂道を転げ落ちていくことになります。
今これをお読みになっている経営者で、「自社のことを言っているようだ」と思い当たる方は、自社がどのような状態にあるかを俯瞰的な眼で見るために、私の無料経営相談を受けられことをおすすめします。
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「ありがとう」を言えること(客の側であっても)
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時間を守れ、細切れの時間を大切にできること(目上の人との待ち合わせには余裕を持って待ち合わせ場所に行き、待ち時間を活用する準備ができるようにする)
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使ったものを次の人のために元に戻せること(立ち上がった後の椅子やトイレの蓋など)
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礼儀を守れること(迎え三歩に見送り七歩など)
これらに加えて経営者には「自己犠牲」の精神が必要となります。
徳性の乏しい私は、これをお教えする立場などにはありませんが、徳性を高めるために「人間学」を一緒に学び、行動していきます。この特性は全ての判断や行動の「心柱」にしていきます。
②は、経営再建や経営改善プログラムの間に、「今ある売上で最大の利益を絞りだす知識や技術」を学んで頂き、実践して頂き、単年度黒字化を達成(1年以内目標)を目指します。具体的には自社で月次決算や中長期の予想概算キャッシュフローを算出できるようになります。「売上対策」以外の「資産対策」や「経費削減対策」などはここで学びます。
③、すべての対策が即効性があるのではありませんので、これらを③習慣化していくことにより「知恵と技能」に変わっていきますが、実はこの「継続」「習慣化」が一番難しく、プログラムに着手された企業の何割かがここで脱落していきます。これをクリアーして安定的な健全事業化(目標3年以内)ができます。
④が「変化」です。①から③ができても「変化」することができなければ、企業も死滅します。ダーウィンではありませんが、「生き残れるものは、大きいものでも、強いものでもなく、変化できるもの」なのです。②の経営再建プログラムを終了した段階で初めてスタートするのが「売上対策」=「新規事業開発」です。
1 「経営事項審査」とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査です。公共工事の各発注機関は、競争入札に参加しようとする建設業者についての資格審査を行うこととされており、当該発注機関は客観的事項と主観的事項の審査結果を点数化し、順位付け、格付けを行います。(一般財団法人建設業情報管理センターHPより)
2 平成28年度税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年
次回は、第3章 「経営危機の乗り越え方」 (10)経費削減対策-第2回 です。
このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。
井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に
- 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
- 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
- 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業
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