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ーいざ、富山footbath(足湯)県へー銀行建築⑩<富山銀行と富山第一銀行>

2021-04-08 18:16:42 | 旅行

 さて、次は富山県の銀行建築についてです。

 富山県には3つの地方銀行があります。規模が大きい順に「北陸銀行(本店富山市)」、「富山銀行(本店高岡市)」、「富山第一銀行(本店富山市)」です。

 人口や経済規模からみて富山県に3行は多すぎで、再編の必要性がかねてより指摘されています。

■本店建物は歴史とアート

 それはそれとして、各銀行の本店建物は観光の視点から興味深いものがあります。

 まず第二地銀の富山第一銀行ですが、かつての相互銀行で、1989(平成元)年に普通銀行に転換しました。愛称は「富山ファーストバンク」。

 同行の本社は、富山市の中心部に、2015(平成27)年に完成した再開発ビル「TOYAMAキラリ」の中にあります。この建物は、日本を代表する建築家・隈研吾が設計しました。

          

    (モダンなビル「TOYAMAキラリ」。写真下、茶色の服を着た女性の真正面が

     富山第一銀行本店の正面入り口。このビルの一部を同行が使っている)

 金沢市に2004(平成16)年に完成した「金沢21世紀美術館」(著名な建築家である妹島和代とそのパートナーの西沢立衛が設計)は、金沢への観光客の多くが同美術館を目指すほど注目されていることもあり、アートコンプレックスが強い富山としては、当県にも世界的な建築家の手によるお洒落な建物を目指す考えから、「TOYAMAキラリ」は生まれたのです。

 筆者は何度も行っていますが、流石に富山市の目玉建築だけに、力の入った、味わい深い設計であることを感じさせられます。

 そのビルには、富山第一銀行の本店のほかに、現代ガラス作品を展示する「富山市ガラス美術館」と、「富山市立図書館」が入っています。

 富山第一銀行が、本店をこのビルに設けるとは、なかなかの経営センスだと感じました。富山市以外の顧客から「お宅の本店はどこにあるの?」と聞かれてすぐ分かるからです。富山市内で誰もが知っている建築物は、県庁や市役所を別にすれば、富山城、次は歴史ある百貨店「大和」、その次が恐らくキラリではないでしょうか。

 移転前の富山第一銀行本店ビルもなかなか目を引きました。市の中心部、総曲輪2丁目に現存しています。昭和26年に竣工したこの旧本社ビルの外観は、かつて東京・丸の内にあった旧第一銀行の本店建物をコピーしたものです。円柱の柱が並ぶ白亜の石造り建築。キラリ内にある新本社は、正面玄関を入ってすぐのファサードなどに旧本店ビルのイメージを引き継ぎました。

            

               (富山市内に残る富山第一銀行の旧本店ビル)

 

           

     (富山キラリ内の富山第一銀行本店の通路。旧本店建物のイメージを引き継いだ)

                    ◇

 次は富山銀行についてです。

 同行の本店は富山市ではなく、富山県第二の都市、高岡市にあります。

2019年に完成した現在の本店ビルは、あいの風とまや鉄道・JR西日本の高岡駅コンコース古城公園口に建っています。

          

          (富山銀行本店のクリスマスイルミネーション。2020年12月25日撮影。

         建物壁面にクルスマスツリーや雪模様が浮かび上がった)

 英語表記の「Bank of Toyama」は2013年に、「The Bank of Toyama」から改称しました。グローバル化の時代にあって、ボーダーレスに活動することと、富山の銀行であることを強調するのが狙いだといいます。

 新しいこのビル自体は目立った特徴があるわけではありません。すっきりした現代風のオフィスビルという感じです。

  新しい本社ビルを建てると、その会社について「今が、経営面のピーク」とささやかれることが多いようです。過去、そういう事例が少なくなかったからのようです。

  富山銀行がそうだというわけではありません。ただ、同行の経営に問題がないかといえば必ずしもそうではなく、財務内容や収益性から見て必ずしも誇れるものではないようです。

  地銀再編はこの先避けられないとみて、いくつかの経済雑誌は、全国の地銀の“善し悪しランキング”を載せ始めました。どの財務指標に重きを置くかで、その順位は変わりますが、富山銀行の場合、残念ながら複数の経済誌で「危険度」の順位が上位にありました。調査した全国の地銀103行中、不名誉にも1位だった雑誌もありました。ちなみに地銀の預金残高は最小クラス。

  それはさておき、同行の旧本店は注目に値します。(下の写真)

 高岡駅から歩いて12分のところにあります。

 

              

       (土蔵造りの家が建ち並ぶ高岡市・山町筋に建つ赤レンガづくりの富山銀行旧本店。

               大正3年竣工)

 清水組(現・清水建設)の田辺淳吉が設計しました。東京駅などを設計した辰野金吾の弟子です。(辰野がこの銀行も監修したとの説がありますが、実際はタッチしていなかったとのこと)

 県内唯一の本格的西洋建築です。外装に赤レンガと白御影石を使い、屋根は三角破風。各部屋の天井には、漆喰の鏝絵(こてえ)装飾があります。2階役員応接室にはステンドグラスがはめ込まれています。

 この建物は高岡共立銀行時代の1914(大正3)年に建てられました。同行はその後、合併を経て高岡銀行に、その後も合併を繰り返して現在の北陸銀行になりました。

 富山県には明治時代、60行近くの銀行があったそうです。太平洋戦争中には「北陸3県1行案」も浮上していたと、北陸銀行の社史にありました。                         (以上)

 



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