糸乃こまりのストーリー

川柳と小説〜下町とチワワはhttps://plaza.rakuten.co.jp/daigotyokotan

焼きそば

2024-01-04 18:04:23 | こんぺいとう
横浜のデパート。裕子はデパ地下をキョロキョロ見ながら店の周りをぐるぐる回っている。
 え、え、え、え。いつも何気なく買いに来ているのに見つからない。どうしてもわからないから悪いかなと思いつつ佃煮屋さんに近づいた。
「いらっしゃいませ」
「すいません、そうじゃなくて、いつも買いに来ている焼きそばのお店が見つからなくて」 
 普通だったら店員は「はぁ?」って聞くんだろうけど、さすが横浜のデパート。店員は優しく
「和風ですか?洋風ですか?中華ですか?」
とニッコリ笑った。
「あっ中華です」
「それでしたら」
 店員は棚の奥からデパ地下の全店が書いてある資料を引っ張り出してきた。すごいなぁと思った途端、裕子は違うことを思い出した。あっ!! またうっかりだ! すいませんと言って裕子は急に佃煮屋から離れた。
 佃煮屋の店員が裕子の背中に
「お客さまどうなさいましたか」
と叫んでいた。 
 ついでにデパ地下に来てるんだからエレベーターで上に上がらなきゃいけないのに降りようとしていた。やだやだ。こんな風にこの頃うっかりが多い。
 横浜駅に向かったバスで横浜駅の一つ前で降りなきゃいけないのに降りるのを忘れた。「一つ前で降りる一つ前で降りる」
と思ってるうちに
「焼きそば焼きそば」
に変わっていた。
 やっと駅か出てきた。あそこに行って間に合うかな? でも取りあえず行ってみよう。大事なことだもの。裕子はそう思っていた。
 




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