糸乃こまりのストーリー

川柳と小説〜下町とチワワはhttps://plaza.rakuten.co.jp/daigotyokotan

5 一千万円!?

2024-09-17 13:37:27 | 世界一周ひとり旅

鞠子は自宅で座ってケイタイを右手で持ちながら、左手で洗濯物をたたんでいる。近づいてきたチワワがたたまれていた靴下を加えようとしていた。

「だめよ。ダメダメ」

 ケイタイの相手の裕子の声がした。

「ダメなの?」

 靴下を取り上げながら鞠子は

「何のこと?」

「旅行のことよ。ねェ、いいでしょう?」

「別に私に聞かなくたって。でも誰といくの?」

「初めての一人旅」

「えーっ」

「それは大丈夫。はじめは一人でも向こうに行けば沢山いるの」

「ああ、団体旅行ね」

「あのねェ、もう少しオシャレな呼び方あるでしょ」 

「はぁ?」

「一千万円もかかるんだから」

 鞠子はギョッとした顔になる。ケイタイの

向こうでピンポーンと鳴った。

 裕子の自宅は二階。裕子は二階の玄関を開けながらケイタイを切った。

 ドアを開けると宅急便屋がお辞儀をした。

「お兄さん、ありがとうねェ」

 何束もの段ボールを宅急便屋が持っている。

「他にもあるんですけど、持ってきていいんですか?」

「お願い」

「お引っ越しですか?」

「昔の私とお別れするの」

「えっ?」

「いやねぇ。離婚じゃないわよ」

 裕子ははしゃいだ。まるで子どものようだった。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 4 銀座四丁目でお亡くなり | トップ | 6 プチ家出 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

辞書

ブックマーク

保護犬ブログ
ダイゴとチョコたん
失語症になって30年
スマホでホームページ 
川柳研究社
川柳
goo
最初はgoo
フレーバー・ティー  ハース&ハース
毒の舌蝶太夫
北海番屋
北斎ミュージアム
  • RSS2.0