テレビを見ながら電話をかけている鞠子だが突然立ち上がって叫ぶ。
「世界一周? 一千万円? 何も聞いてないわ」
一階の徹はリビングで電話を切りながら
「鞠子は何も聞いてないってさ」
裕子は徹の向かいの席に座っている。
聡美は鍋を洗っている。
裕子「私、言ったと思うけど」
徹「バァちゃんは慌てものだからな」
裕子「私のことバァちゃんって言わないで」徹「じゃあ僕のことお兄さんって言わないでよ」
裕子「じゃあボクちゃんにする」
徹「バァちゃん」
聡美は二人に近づいて来て
「ケンカしないの」
膨らむ二人に
「よく似てるわ」
と笑う。
鍋やお皿も片付いて三人は二階の裕子のリビングに上がって行った。たくさんの段ボールを眺めいている裕子に徹は
「しかし一千万円ネェ、3ヶ月で一千万円」
「そう3ヶ月で一千万円」
聡美はイヤミたっぷりでな言い方をする
「お母さんは優雅ネ」
「そう優雅な人はね、上を見たらキリがないけどでももっと安いのもあるのよ」
首をかしげた聡美は、
「クルーズ船でしょ」
「聡美ちゃんクルーズ船でもあるのよ、三分の一で」
信用していない徹。
「それに安くても一ヶ月で百万だろ」
ため息まじり。
徹と聡美は一階のベッドルームに戻った。
ベッドに座っている聡美の肩を揉んでいる徹。
徹は二階を見ながら
「バァちゃんのことだけどそれでもいいの?」
聡美は
「マッサージ交代」
と言いながら今度は徹をベッドに座らせて肩を揉みはじめる。
「私の母も世界一周させてあげたかったもん。でももちろんお母さまのお金でしょ」う「もちろんだよ」
「でもいいのかな?お母さんは3ヶ月も船に乗って大丈夫かしら?」
とにやっと笑っていた。