京都の闇に魅せられて(新館)

笑路・素盞鳴神社のそろばん小僧伝説 @ 京都妖怪探訪(651)





(記事中の写真はクリックで拡大します。プライバシー保護等の為、人の顔部分に修正を加えていることがあります)


 どうも、こんにちは。
 シリーズ前回に引き続いて今回も、京都の亀岡・笑路(わろうじ)にある妖怪伝承地を訪れます。
 今回は前回の「そろばん坊主」(もしくは「そろばん小僧」とも呼ばれる)の伝承が遺る素盞鳴(すさのお)神社です。


 シリーズ前回の西光寺の前から、南側に延びる山道を進んでいきます。






 雑木林の中に、その小さな神社の鳥居が見えました。








 ここが目指す素盞鳴(すさのお)神社です。
 その名の通り、スサノオ神(須佐之男命)を祀る神社です。
 この神社の歴史は、シリーズ前回の西光寺より遙かに古いようです。
 後の源氏発展の礎を創ったとされる平安中期の武将、源満仲が、丹波地方を領有した時、各地にスサノオ神を祀る神社を建てたそうで、ここもそのうちの一社でしょう。

 ご覧の通り、小さな神社です。





 この境内の大木の下には、毎夜午前一時に一人の少年が現れ、算盤(そろばん)の稽古をすると、伝えられているそうです。
 さらにその少年の正体は、神社の隣に建つ西光寺を開山した万安英種(ばんなんえいしゅ)という僧が、幼き日夜中に人知れず勉学に励んでいた姿であるとされています。
 その少年の姿をした何者かが、「そろばん坊主」あるいは「そろばん小僧」と呼ばれていたそうです。
 こちらで万安英種(ばんなんえいしゅ)という人物について少しだけ調べますと、幾つもの寺の要職を務め、また寺を創建や再興をする等の活躍をしてきた人物のようです。
 そのような人物ですから、高い学識も備えていたのでしょうから、そういう噂や伝承も遺されたのかもしれません。
 しかし・・・。
 シリーズ前回の西光寺の「そろばん坊主」は、計算違いを叱責されて自殺した小僧の幽霊であったのに対し、こちらは非業の死を遂げた幽霊というわけではない。
 隣接した2つの場所に出現する、2人の「そろばん坊主」の違いは、一体何か?
 しかも非業の死を遂げた幽霊でもない、偉人の幼少期の姿が夜中に出現するというのは何故? かという疑問が沸いてきますが。
 以下は、確実な根拠やソースがあるわけではない、私個人の推測か想像に過ぎないのですが。
 おそらく西光寺と素盞鳴(すさのお)神社の2人の「そろばん坊主」は、元々は同じ存在だったのかもしれない。それが一体どういう経緯を経て変化していったのか。
 何らかの理由で、一方は「偉人の幼少期の姿」に。しかしもう一方は、「自殺者の幽霊」に。多分、前者の方が元々の姿だったのではないかな、と思います。何しろ「地元の偉人」であり、昔の日本社会というのは現在よりも偉人・英雄崇拝の気風が強かったでしょうから、そういう伝承も生まれたのではないかな、と。
 その伝承が、どのように「叱責して自殺した小僧の霊」に変化していったのか。
 その経緯とかを調べるのも面白いかもしれませんが、残念ながら歴史・民俗学等のプロ研究者でもない私には、それ以上追求することは出来ませんでした。


 境内には小さな末社も。






 本殿へ礼拝。











 「そろばん小僧は毎夜一時に境内の大木の下に現れる」
 こう伝えられていますが、境内や周辺は、結構高い木が多く、そのうちどれがそろばん小僧の現れる大木なのかはよくわかりませんでした。
 また、訪れたのは9月でしたが、この境内はヤブ蚊も多くて結構大変です。
 夜中の一時頃まで残って、そろばん小僧が現れるかどうかを確かめたいという思いも起こりましたが、車で訪れたわけでもない、周辺には宿泊施設等も無さそうで、野営する準備もありません。付近には民家や田畑もあり、野営とかしたら近隣住民の方々に迷惑をかけてしまう恐れもあります。
 以上の理由から、夜一時まで粘ってそろばん小僧伝説の真偽を確かめるのは、残念ながら今回は断念しました。





 結局、いろいろと謎だらけのまま去ることになりましたが。
 これがプロ研究者でもない素人の活動の限界というヤツかな、とも思いましたが。
 謎は謎のままで置いておく、というのもまたそれはそれでいいかも、と。
 そう思うことにして、この伝承地を後にしました。






 今回はここまで。
 また次回。





*亀岡・笑路の素盞鳴神社についてはこちら




*『京都妖怪探訪』まとめページ
https://kyotoyokai.jp/




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