「守山・住吉の火祭り」をとりあげた前回記事の続きです。
今回は、それと同時に行われる「勝部の火祭り」をとりあげます。
「土御門天皇を病にさせて苦しめたという大蛇を斬り殺して焼いた」とか、「現在の地に物部大明神(勝部神社)を祀った物部宿禰広国という人物が大蛇を退治した」などの大蛇退治の伝説を由来とする2つの祭。
住吉神社には大蛇の頭が飛んで行き、勝部神社には胴体が残されたと伝えられています。
毎年1月の第2土曜日に行われるこの2つの祭は、県選択無形民俗文化財にも指定されています。
前回の「住吉の火祭り」が終わった後すぐ、JR琵琶湖線を挟んだ反対側にある勝部神社まで走りました。
勝部神社の火祭り(奉火)は、住吉神社のそれから半時間ほど遅れたスケジュールによって行われるそうです。
急いでいけば、勝部神社の火祭りも(終わりの部分だけでも)見られるかもしれない。
そう考えた私は、その後勝部神社まで走りました。
一旦、JR琵琶湖線・守山駅に戻り、その西口から。
地図を頼りに夜の道をひたすら走ります。
勝部神社の入り口の鳥居まで来ました。
ところで写真には、いくつもの光の玉みたいなものが写っています。
空気中の浮遊物がカメラの光に反射したのでしょうか?
それとも……?
それはともかく、この辺には人影が見当たりません。
もしかしてもう終わったのか、と不安にもなりましたが、とりあえずここから境内に入ってみます。
参道を少し進んでいくと、まだまだたくさんの人が集まっていました。
住吉神社よりも広い境内には、何倍もの多くの参拝者が集まっていました。
祭りのハイライトである奉火の真っ最中だったようです。
大勢の人ごみの中、炎からはある程度の距離がありました。
それでも凄まじい熱気が、火の粉と共に飛んできます。
そんなもんですから、まだ1月の寒い夜なのに結構熱かったのです。
やはり、大蛇に見立てられた松明が燃えています。
凄まじい炎を上げている様子がおわかりいただけるでしょうか。
炎を背景に、大勢のふんどし姿の男たちがかけ声をあげながら躍り出てきます。
あれほど大きく、激しかった炎も消されはじめます。
祭りも終わりが近づいているようです。
そして、大蛇に見立てられた松明が、男たちによって運ばれていきます。
松明が運び終わった後、境内に男たちが集合。
わずかに残った残り火。
この残り火にもご利益があるようで、それを持ち帰ろうとする人も居ます。
こうして、今年も火祭りが終わります。
さて、以下は私の推測というか、想像というか……いや、勝手な妄想の類にすぎないということをお断りした上で話します。
確か本シリーズでも、以前似たような由来のお祭りをとりあげたことがありましたね。
それは、第120回『奈良橿原のシャカシャカ祭り』です。
本シリーズでも時々ふれることですが、妖怪や鬼・怨霊などの伝説の裏には、しばしば隠された歴史の真実があるものです。
特に戦争や権力抗争などの暗い歴史の真実が。
大蛇を退治した伝説と、それが由来になっている五穀豊穣を祈るお祭り。
同じ関西地方とはいえ、奈良橿原と滋賀守山と2つの遠く離れた地に、結構広い範囲に似たような要素を持った伝説とお祭りがある。
しかも奈良橿原の方は、村人に危害を加えた邪悪な妖怪であるはずの大蛇の霊を弔ってすらいる。
ここに何かあるような気がしてくる。この裏に何らかの隠された歴史があるのではないか。
おそらくは、大蛇として退治された者の正体は……大蛇に象徴される人や集団ではないか。
例えば、かつて広大なその地方を支配していた豪族とか。あるいは先住民とか。
彼らには蛇や竜を神として崇める習慣があったため、大蛇として表現されたのかもしれない。
そういった人々を駆逐し、その共同体を焼き払い、その土地も財産を我がものとすることによって支配地と富を増やしていった。
そんな事実が大蛇殺し伝説と、「大蛇を葬って五穀豊穣を得る」という祭りの背後にあるのではないか。
ここではそれに対して、批判がましいことを言ったりするつもりは全くありません。
おそらくは、どこの国にも、どの民族にも、こうした裏歴史や黒歴史みたいなものがあって、そうしたものも鬼や妖怪などの伝説に形を変えて後世に伝わっているのではないか。
鬼や妖怪などの伝説やその背景を知ろうとする意義のひとつは、そういった知られざる歴史の真実の一片に触れることにあるのかもしれない。
そんな気が私にはしてくるのです。
長くなってしまいました。
それでは今回はここまで。
また次回。
勝部神社への地図はこちら。
勝部の火まつり(「滋賀県観光情報」より)
http://www.biwako-visitors.jp/search/event_733.html
*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm
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