今回は、京都から少し(?)離れた滋賀県守山市まで来ました。
何故なら毎年1月の第2土曜日にこの地では、古くから伝わる妖怪退治伝説にまつわるお祭りが開催されるからです。
それが、通称『守山の火祭り』。
『住吉・勝部の火祭り』です。
一般に伝えられているこの火祭りの由来は、だいたい次の通り。
今からおよそ800年ほど前。
当時の帝・土御門天皇(つちみかどてんのう。1196~1231年)が重い病にかかりました。
その原因を占ったところ、
「近江の国、栗太・野洲両郡の境に大沼があり、ここに棲む齢数千年の大蛇が天皇の命を脅かしているからだ」
という託宣が出ました。
朝廷から討伐軍が派遣されましたが、大蛇を見つけることが出来ません。
そこで勝部神社に50日間の参籠を行います。
そして満願の日についに大蛇が姿を現します。
討伐軍は大蛇を斬り殺し、死体を焼いたところ、天皇の病は全快しました。
この伝説がこの祭の由来とされていますが、実はもうひとつ、次のような大蛇退治の伝説があるそうです。
飛鳥時代、物部宿禰広国という人物が湛度の淵(たんどのふち。現在の野洲川を指す)辺りで大蛇に出くわしました。
広国は刀で大蛇を頭、胴、尾の三つに切り捨てて退治しました。
その際、頭は守山の浮気(ふけ・現在の守山市内)に、尾は窪江(現在の大津瀬田付近)に飛び、胴体だけ湛度の淵に残ったそうです。
その広国が現在の地に祖神・物部大明神を祀ったのが、勝部神社の起源ともわれています。
毎年この日になりますと、頭が落ちたとされる住吉神社と、胴が残ったとされる勝部神社では、大蛇に見立てた大きな松明に火を点して、「御脳平癒」から転じた「ごうよ」「ひょうよ」とかいうかけ声と共に大勢の裸の若者たちが駆け回り、無病息災や五穀豊穣を祈願するというお祭りです。
(※なお、大蛇の尾が飛んでいったという瀬田には、このような火祭りは現在では残っていないようです。残念ながら)
『京都妖怪探訪』シリーズをやっている妖怪マニアの私としましては、是非ともこの祭を直に見てみたいと思い、守山の住吉・勝部の両神社を今回訪れることにしました。
まずは、より古式に則った方法で祭・神事を行っているという住吉神社の方から訪れてみます。
JR琵琶湖線・守山駅の東口。
ブレが酷く、写りが悪くてすみません(汗)。
まずは、ここから歩いて住吉神社を目指します。
神事は朝からあったそうですが、その日は私の都合で夜からしか行けませんでした。
せめて、ハイライトである奉火だけでも見たいと思って、大急ぎで向かいます。
住吉神社のある「浮気町」の交差点。
最初、「うわきちょう」と読むのかと思っていましたが、交差点の標識にはローマ字で「Fukecho」と書いてあったので、「なんだ、“ふけちょう”と読むのか」と少しほっとしました(笑)。
幹線道路からも離れた、住宅の間の小さな道を通っていきます。
人の流れを追って、辿り着けました。
ここが「大蛇の頭が飛ばされ、落ちた」という住吉神社です。
きっと普段は、町中にひっそりと建っている静かな神社なのでしょう。
なお、このお祭りでは火を使うためか、消防の方がたくさん来て居られました。
境内に入りますと、既に多くの参加者や参拝者が訪れていました。
境内の中には、大蛇の頭に見立てた大きな松明が並んでいます。
松明を運ぶ、ふんどし姿の男たちが登場。
いよいよ、ふんどし姿の男たちが松明を持って出てきます。
そして、大蛇の頭に見立てた大松明に火をつけます。
盛大に燃え上がります。
そんな火のついた大松明を、男たちがかけ声と共に担ぎ上げていきます。
近くで見ようとすると、火の粉がふりかかることもあるので、少し注意が必要です。
火のついた松明は、神社のそばを流れる小川の水につけて消化します。
全ての松明が運び出されても、盛大に火は燃え続けます。
激しく燃えさかっていた火もようやく鎮められ、火祭りは終わりを迎えます。
こうして、今年も無事に住吉の火祭りは終わりました。
JR琵琶湖線を挟んだ反対側にある、「大蛇の胴が残った」という勝部神社では、住吉神社とほぼ同時進行で火祭りが行われています。
勝部神社の火祭り(奉火)は、住吉神社のそれから半時間ほど遅れたスケジュールによって行われるそうです。
住吉神社の火祭りが終わった後ですが、それでも急いでいけば、勝部神社の火祭りも(終わりの部分だけでも)見られるかもしれない。
そう考えた私は、この後勝部神社まで走りました。
さて、今回の記事はここまでにします。
次回は、この続き。
勝部神社の火祭りの様子をお伝えします。
住吉神社への地図はこちら。
住吉の火まつり(「滋賀県観光情報」より)
http://www.biwako-visitors.jp/search/event_734.html
*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm
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