墓参りの日であり、今は亡き祖父母を振り返り、日中戦争で亡くなったという祖父の兄に想いを馳せる日であり、そして再び戦前と同じようになりつつある我が国の現状に懸念を抱く日でもあった……。
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今年の始め頃に亡くなった祖母の納骨式とご先祖の墓参りとをかねて、久しぶりに親戚一同集まって、田舎の墓へと行った。
田舎の墓所には先祖代々の墓の他にもうひとつ、我々一族にとって縁のある墓がある。それは先の戦争で、わずか20代にして亡くなったという祖父の兄の墓だ。先祖の墓と、墓所の片隅にひっそりとたたずんでいるその墓とは、一年ぶりに訪れた時には、すっかりと苔で覆われていた。まずはその墓についた苔を、洗い落とす作業から始めなければならなかった。
祖父の兄の墓を掃除している時に、墓に刻まれていた戦死時の肩書きも読むことが出来た。「陸軍特務上等兵」。特務といえば、諜報活動とかする、あれだ。こう言えば「何か偉そう」とか「かっこいい」とかいうイメージで見る人もいるかもしれないが、実際は「最前線で一番やばい任務をやらされて、いざとなったら使い捨て」という、考えてみればものすごく損で悲惨な役回りだ。そのあげく、20代で戦死だ。祖父と違って、生前の写真は遺ってない。ただ、田舎の寺の住職が当時描いたという肖像画が遺るのみだ。そして実を言えば、墓の下にも祖父の兄の遺骨はないそうだ。戦地で回収されなかったそうだ。
そう言えば、祖父の兄は中国大陸へ出征して、そこで病死したと聞かされていたが……それなら何故、遺体が回収されなかったのだろうか? どういう状況で亡くなったのだろうか……? 幼い時に聞かされた時は、そんなもんかと聞いていたが、今思えば疑問がわいてくる。
幼い時、祖父に戦争に行った時のことの尋ねようとしたことがあった。
当時は、いわゆる平和教育というのがまだ行われていて(今も行われているのだろうか? 最近の小学校教育の事情は私にはよくわからないのだが……)、その時は「家族から戦争の話を聞いてくる」という宿題があったのだ。
当時は健在だった祖父母に、内地にいた時の話から聞いた。田舎辺りまで空襲警報が発令されて大変だった、とか。それから更に、祖父に戦地に行った時の話を聞こうとした。しかし祖父は、何故かその時の話をしたがらない。しかし私はなおも食い下がって聞き出そうとした。
すると突然、祖父は
「もうええやろがあっ!」
と、私の方を恐ろしい目できっとにらみ、半ば涙ぐみながら怒鳴りつけた。私は祖父の怒るところを何度も見たのだが、あのような険しい表情をしたのは、あの時だけであった。
それ以上のことを聞き出す勇気は結局、私にはなかった。
私は祖父の触れてはならない(祖父が決して触れて欲しくはなかった)何かに触れてしまったのだろうか? 戦地での体験は祖父にとって、私の想像もできないほどの傷を与えたのか? 戦地で何があったのか?
その祖父も今から10年以上も前に他界している。今となっては、もはや知る術はない。
そう言えば、祖父の遺した軍隊手帳があった。私が持っているよりもいいだろう、と考えて地元の博物館に寄贈したのだが……。せめてその前に、もう少しきちんと読んでおけばよかったか。旧仮名遣いで書かれていたのが読みづらくて、読むのを途中でやめたのだが……。
墓参りと祖母の納骨式も無事に終えることができた。
だがその間、普段はほとんど考えたこともなかったような祖父兄弟のことに想いを馳せることになった。
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追記:
思い出したのだが、先の大戦前の社会状況について、生前の祖父が話したことがあった。
もっとも、直接祖父から聞いたのではなく、祖父の死後父の口から聞いたのであるが。
戦争が起こる前の、日本の社会状況はどんなものだったのか? それには、次の2つの特徴があったという。
(1)エロ・グロ・ナンセンスが流行した。
(2)大量失業が慢性化・常態化して、社会全体に「ええ、もうどうでもいい!」という投げやりな雰囲気が漂っていた。
現在の日本の状況と照らし合わせてみて、どうだろうか?
そう言えば先日、加藤鉱一氏の自宅と事務所が放火されてたというニュースを聞いた。加藤氏が「首相は靖国に行くべきではなかった」とか「アジア外交は崩壊に近い結果になった」とか発言したのが原因と見られているが……。恐ろしいのは、それに対して「あのような反日的発言をしたのだから、やられて当然」とかいう意見を言う人が少なからずいること、それに対して大手マスメディアがまともに追求しているようには見えないことだ。
前々の日本も、テロやクーデター未遂などが相次ぎ、しかもそれを肯定もしくは容認するような空気が、社会に漂っていたというが……。
戦争体験者の中には、「また戦争が起こりそうな気がしてきた」などと思っている人がいるのではないだろうか……?
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