見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

手作りの魚道

2008-10-23 22:32:09 | 北海道の風景
浜中町に珍しい魚道ができた。

小学校が廃校になろうとしている地域住民の焦燥感が原動力となり、
大掛かりな手作り魚道という一つの事業として完結した。


人口7000人の町に小学校を12校置いたという浜中町の政治的英断には敬意を表すしかないが、議会を含む全町的な議論に「限界だ」という結論が出るのは当然の流れだろうと思われる。
無論、町内に反対論がないわけではないが、12小学校統合の流れはもう止めることができない。

問題は、統合のために廃校となる小学校地域の喪失感と不安をどうするかというところにある。
小学校を中心として形成されるコミュニティの連帯感は軽視できない。
運動会もPTAもなくなろうとする今、新たなコミュニティ力を確認する場を強く求めていた住民の方々と、地域に流れる川にできた堤防がために遡上できない魚たちの問題を取り上げていた地元のNPO「霧多布湿原トラスト」との対話から、魚道造りの事業がスタートした。
「地域住民が一つの目的を共有して取り組む地域や未来の子供たちのための活動」が生まれたのである。

無機質なコンクリートの魚道は見たことがあるが、巨大な三角柱の水制を並べた魚道は初めてだ。
堤防の落差1mを、水制で作る50cmのプールによって遡上し易くするという一見単純なしくみだが、水量計算や水圧を考慮した科学的な根拠に基づき専門家がデザインしている。
耐久性やコストの問題が残り、自治体は手を出したがらない工法だという。


だからこその、NPOと地域との協働ならではの事業となった。実費の120万円はすべてNPOが拠出した。
地域で産出されるカラマツ材、砂等を用いるという工夫を加え、のべ200人以上の住民が手弁当で参加した。


数年後に廃校が決まっている小学校でも、廃校前に、鮭の稚魚を放流する児童活動を考えるという。
イワナ、ヤマメ、イトウ、サケ・・・様々な魚が遡上する姿が目に浮かぶ。


写真を撮っている最中にも、橋の上に車を止め、自分たちの作業で作ったお洒落な魚道を覗き込む住民の方々の姿がぽつぽつとあった。
小学校が無くなっても、地域で力をあわる場は作ることができる。協働すれば形にできるものは必ずあるというシンボリックな魚道が地域の財産となった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 野生化した洋ナシ | トップ | 山の恵み »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

北海道の風景」カテゴリの最新記事