見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

漁師のまちの夏祭り

2008-09-23 21:33:37 | 北海道の風景
辺りは秋の気配だが、霧多布という浜地域で夏祭りが開催された。

「浜中町の各地区の祭りがひとつになれば、本当に見応えのある盛大な祭りになるんだけどね」と海辺でペンションを経営するオーナー。

酪農と漁業が浜中町の大切な2大産業であるが、
「山」で酪農を営む農家と、「浜」で生きる漁家との生活サイクルも文化も異なるため、祭りを同時期に同じ趣向で開催するのは困難なのだという。
漁師のまちもいくつかの地区ごとにそれぞれの祭りを開催する。
昨夜は、浜中町の中心部にある漁師のまちの祭りだった。



「一地区の小さな祭りだよ」と言われたが、ゲストも滞在中なので出かけてみることにした。
漁師のまちの中心地に近づくにつれ、サーチライトの光で周囲は明るくなり、激しい掛け声が聞こえてきた。

霧多布神社境内の入り口から、屋台の夜店が中心部の交差点までずっと続く。
辺りを照らし、スピーカーを通す激しい掛け声が聞こえるのは、その交差点からだ。
人混みをすり抜けながら、交差点に近づくにつれ、耳を覆うほどの掛け声に、対話は不可能となった。
スピーカーのボリュームが限界まで開放されているに違いない。



交差点では、豪華に飾られた4台の山車がにらみ合うように停車し、それぞれが相手を凌ぐ勢いで、太鼓を叩き、笛を吹き、独自の囃子を奏でている。
山車の上では、半被や鉢巻に身を包んだ各地区の若衆が、他の山車を威嚇するかのように太鼓や笛を鳴らし、「ラッセー!ラッセー!」と囃子声を掛け合う。
「小さな祭り」の気合と熱気ではない。



激しい応酬が続き、やがて山車が徐々に動き始めた。
どうやら、トラックを豪華な飾りを付けて改造して山車にしたようだが、「車」というより、「船」のイメージだ。
それぞれ個性的な「船」は、威勢の良いお囃子を乗せて地区内をゆっくりと周り始めた。



「漁師の祭りですよねえ」とリョーコさんが感動しながら言った。
地区ごとに船を出し合い、睨み合い、囃子を競い、汗を流しながら町内を練り歩く、激しい祭りだ。山車の上で半身裸で太鼓を打ち続ける若者たちの姿も逞しい。

7000人の町の中の、わずか一地区の祭りにしては、予想外に醍醐味あふれる一幕に煽られ、祭り気分が高揚した。
いつもなら通り過ぎるだけの屋台のたこやきや、大阪焼きや、サツマイモ揚げの列に端から並び、できたての熱い塊りを頬張った。
やっぱり、祭りには心が躍る。



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