見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

アブの標本

2008-08-10 23:34:13 | 北海道の風景
今朝は5時半から、エスさんは捕虫を始めたらしい。
確かに辺りは明るくなっているが、私にとってはまだ真夜中だ。

気温が下がると虫たちは住処に潜むので、昨日は19時に撤退。
昼に様子を見に行くと、彼女は既に昨日から午前中までのアブを標本化していた。
在り合わせの材料を上手に用いて標本を作っているのが微笑ましい。



この辺りの早朝の気温は10度近くまで下がる。
エスさんは、防寒着を着こんでトラップの近くに敷いた断熱シートの上で、もくもくと観察と標本作りに専念している。



「どうしてアブなの?」
お茶を飲みながら、エスさん自身の話を聞いてみた。
「もともと、動物が好きだったんです」とエスさん。
170センチは十分超えるすらりとした長身。小学校時代から始めたサッカーを今も続けているという。昨日のオリンピックの女子サッカーの試合結果ももちろん知っていた。



「ここの湿原には、10種類はいます。これはゴマフアブ、羽にゴマのような点が見えますよね。これは緑の目に縞があんです。血を吸うのは全てメス。目の間に複眼が見えますよね。」
彼女は、寡黙な研究者の雰囲気を持ちながら淡々と語る。彼女の話を聞き、じっと観察すると、アブたちが美しく見えてくるから不思議。



「吸血昆虫に刺され難い色はありますか」
「黄色ですね」
そうか、ちょっと前まで黄色はトレードカラーだったのだが、今の手持ちは白か黒が中心だ。
「黒より白ですね。乳牛の斑点の、黒い部分の方が刺されているという観察記録がありますから」
なるほど、当分、外に出るときは黒を着るのは控えたほうが良さそうだ。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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実験場 (wine)
2008-08-11 23:31:00
kazuさんのフィールドも同様なのですね。ここも、大学や研究所の方々が頻繁に訪れ、自分にとって初めてのことばかり学びます。
先日は、「水文学」という学問の分野があることを知りました。「スイモンガク」は、水循環を対象とする地球科学のひとつだそうです。
人間の存在と地球環境について考え始めると、気が遠くなりそうな昨今です。
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Unknown (kazu)
2008-08-11 17:28:05
私も動物も植物も素人ですが、現場で黙々と研究する人たちとお話すると、専門的なことはわからなくてもとにかく面白くて机の上では味わえない何かが伝わってきます。こういう地味な研究をしている人たちが世界中にいるんだと知るだけでも感じるものがあります。
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