小関順二公式ブログ

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大学選手権で最も心を動かされた本格派、則本昂大(三重中京大)の快刀乱麻

2012-06-17 01:51:04 | 2012年観戦記・大学野球

◇6月13日(火曜日)
大学選手権/東京ドーム
大阪体育大2-1三重中京大

 この原稿を書いているのは6/17の午前1時すぎ(準決勝はこれから)。この時点で大学選手権出場選手中、最も心動かされたのが三重中京大のエース、則本昂大(4年・右投左打)である。信頼するスポーツライター、西尾典文さんから春のリーグ戦の投げっぷりを携帯のメールで知らされていたので、おおよそのタイプ(自己最速154キロ)は知っていたが、選手は実際の姿を目の前で見ないと本当のことはわからないとつくづく思った。
 投球フォームは古典的な本格派風、と言っていい。体全体を躍動させ(と言っても大阪体育大の宮川将のように体にブレが生じない)、バックスイングは少し体から離して内回旋。昔、こういう投げ方の投手がいたなあ、と懐かしい気分になった。
 最大の長所はストレート。スピードガン的な速さ+打者近くでの伸びがあり、投げ方こそ違うが昨年のセ・リーグMVP、浅尾拓也(中日)を思い出した。東京ドームのスピードガンは最速147キロを計測。しかし、目の前にいたスカウト氏のスピードガンは常に東京ドームのスピードガンより3、4キロ高い数字を弾き出していた。東京ドームのスピードガン表示は低く抑えられ、スカウトのスピードガンは正確、というのが私の認識。とすれば、則本の実際のスピードは150の大台を超えている可能性がある。実際、そのくらいのスピード感はあった。
 変化球は横変化のスライダーがあり、このときヒジを下げることがままある。もちろんよくない。他には125キロ程度のチェンジアップがあり、落差が大きくよくキレる。これらの球がもう少し精度を増せばドラフト1位の声はすぐかかるだろう。個人的には、今のままでもドラフト1位でいいと思っている。
 私がこの試合で楽しみにしていたのは則本ではなく、昨年いいピッチングを見せてくれた大体大の左腕エース、松葉貴大(4年・左投左打)のほう。持ち味の立て変化のカーブ、スライダーは健在だったが、もっさりした投球フォームと低めに伸びないストレートには正直がっかりした。

※6/13の亜細亜大対八戸大、6/14の奈良産業大対大阪体育大。6/15の奈良産業大対早稲田大の観戦記は<ホームページ http://kosekijunjihomepage.com/ >に掲載します。


華麗なるオーバースロー川満寛弥(九州共立大)の奪三振ショー

2012-06-17 01:13:08 | 2012年観戦記・大学野球

◇6月13日(火曜日)くもり
大学選手権/神宮球場
九州共立大2-0広島経済大

 九州共立大の左腕エース、川満寛弥(4年・左投左打)がドラフト1位候補らしいピッチングをした。こちらの気が早いのだが、ひょっとしたらパーフェクトゲームをするのでは、と3回が終わった時点で思った。それほどよかった。
 3回まで打者9人に対し、奪三振が7。結果球は1人を除いてすべてストレートである。それも追い込んで遊ぶ(ボール球を投げる)ことなく3球勝負で三振を取る姿が目立った。右肩の早い開きがなく、腕の振りは真上。見ていて「きれいなフォーム」だなと溜息が出るような見栄えのよさ。スピードは最速143キロでほとんどは137、8キロだから、スピードガン的な速さはない。しかし打者はストライクコースをしばしば見送る。
 プロでタイプを探せば杉内俊哉(巨人)と言いたいが、186センチあるのでちょっと違う。今の姿を想像してもらうと困るが、高校時代の小嶋達也(阪神)が最も近い。体に密着させてバックスイングに入り、腕は背中のほうに入らず、それでもしっかりヒジが立っている。こういうフォームの左腕はいそうでいない。
 変化球はカーブ、スライダー、フォークボールがあり、最もいいのはカーブだろうか。まずコントロールがいい。観戦ノートには「(カーブは)ほとんどストライク」と書いた。
 この川満の好投のおかげで試合時間は1時間55分で済んだ。打線も俊足揃いで、投手陣には右腕の大瀬良大地(3年・右投右打)という来年のドラフト1位候補も控えている。準々決勝ではこの大瀬良が、強豪で昨年秋の明治神宮大会で敗れた創価大を3安打完封で退け、順調な仕上がりを見せた。準決勝で対戦する優勝候補の早大とって、厄介な敵になりそうだ。

※6/13の亜細亜大対八戸大、6/14の奈良産業大対大阪体育大。6/15の奈良産業大対早稲田大の観戦記は<ホームページ http://kosekijunjihomepage.com/ >に掲載します。


当てにいくな、多木裕史

2012-05-14 14:42:41 | 2012年観戦記・大学野球

◇5月13日(日曜日)晴れ

東京六大学リーグ/神宮球場

早稲田大14-2法政大

  まず目についたのは、法大のスターティングメンバー。私が見た5/6からこの日までのスタメンの変遷を紹介する。

5/6(明大戦)5/7(明大戦)5/12(早大戦)5/13(早大戦)

(9)建部賢登 (9)建部賢登 (9)建部賢登 (6)多木裕史

(7)岩澤寿和 (7)岩澤寿和 (8)伊藤慎悟 (9)建部賢登

(4)高木悠貴 (4)高木悠貴 (7)岩澤寿和 (7)岩澤寿和

(6)多木裕史 (5)西浦直亨 (6)多木裕史 (3)伊藤諒介

(5)西浦直亨 (3)伊藤諒介 (5)西浦直亨 (2)土井翔平

(3)伊藤諒介 (6)多木裕史 (4)高木悠貴 (4)高木悠貴

(2)土井翔平 (2)土井翔平 (2)土井翔平 (5)西浦直亨

(8)伊藤慎悟 (8)伊藤慎悟 (1)三嶋一輝 (8)伊藤慎悟

(1)石田健大 (1)三嶋一輝 (3)大城戸匠理(1)石田健大

  4試合のうち、同じスターティングメンバーだった試合が1つもない。5/7の多木の6番は前日の3打数0安打が降格理由だろう。伊藤諒介の5番昇格は前日の4打数2安打3打点、5/12の岩澤の3番昇格は5/7の6打数2安打、打点1……という具合に、いずれも前日(前週)の成績と密接に関連している。言ってみれば「信償必罰」の法則がある。

 これを徹底すると選手が結果にこだわるようになり、打者は強くバットを振ることができなくなる。とくにその傾向が顕著なのが多木で、上記4試合の打撃結果は次の通り。

 5/ 6(明大戦)……[1]二ゴロ[2]空振り三振[3]遊飛[4]死球

 5/ 7(明大戦)……[1]一ゴロ[2]空振り三振[3]死球[4]中犠飛[5]二ゴロ

 5/12(早大戦)……[1]二飛[2]投ゴロ[3]右飛[4]三飛

 5/13(早大戦)……[1]空振り三振[2]二ゴロ

 すべて凡打には目を瞑って内容に注目すると、内野ゴロが5、内野フライが3と、当てにいった様子がよく見える。とくに左打者の遊飛、三飛は評価できない。ショートの頭を越すヒットを打ちたいという、腰が引けた考え方が垣間見えるからだ。多木にはもっとのびのびとバットを振ってもらいたい。

 大差で勝利した早大には好材料がたくさんあった。投手では先発した吉永健太朗(1年・右投右打・182/80)、リリーフした有原航平(2年・右投右打・187/93)が見事なピッチングを展開し、野手では6番を打つ茂木栄五郎(1年・三塁手・右投左打・171/75)をはじめ、ともに4、5番を打つ4年生の杉山翔大(一塁手・右投右打・172/78)、地引雄貴(捕手・右投右打・183/75)がよかった。

 有原はダルビッシュ2世の呼び声こそかからないが、数多出現したダルビッシュ2世とくらべても本家本元に最も似ていると思うし、吉永はコントロールと変化球の精度は言うことなしで、ストレートの球速にもう少しこだわりを持ってもらいたいと思った。まあ、これは粗探しである。野手の3人については、いつかどこかで書くことにする。とにかく3人ともよかった。

[註]5/2の西武対楽天、5/11のロッテ対ソフトバンクの観戦記は<ホームページ>に掲載。http://kosekijunjihomepage.com/


やっぱり凄かった東都の走り!

2012-05-10 11:30:32 | 2012年観戦記・大学野球

 5月9日に行われた東都大学リーグ、東洋大対亜細亜大、日本大対青山学院大を見て思ったのは、やっぱり東都の全力疾走はすごいな、ということ。前で、明治大と法政大の全力疾走を誉めたが、「(打者走者の)一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12. 3秒未満」という全力疾走の基準タイムの回数ではなく、タイムそのものをくらべると、東都各校の走りの迫力に目を奪われる。

 一塁到達3秒台、二塁到達7秒台、三塁到達11秒台とハードルを上げて、タイムクリア選手を比較してみよう。(*印はバント)

 ◇5/7 明大対法大

一塁到達……高山俊3.92秒(明大1年)

二塁到達……0人

三塁到達……石川駿11.96秒(明大4年)

◇5/7 東洋大対亜大

一塁到達……*中村毅3.76秒(亜大3年)、坂本一将3.92秒(東洋大4年)

二塁到達……藤岡裕大7.50秒(亜大1年)、藤井史弥7.88秒(東洋大4年)

三塁到達……中村篤人11.77秒(亜大3年)

◇5/7 日大対青学大

一塁到達……*山口篤史3.80秒(日大4年)、*小林論尚3.95秒(青学大2年)、谷康士朗3.99秒(日大2年)

二塁到達……0人

三塁到達……井上彰吾11.27秒(日大4年)

 

 東都各校の走りの迫力は社会人野球に受け継がれている。社会人野球を見れば、社会人各チームのレギュラーに東都出身者が多いことに驚かされると思う。この走りはのちにプロ野球に伝播し、日本代表のWBC連覇によって今、世界にも伝わろうとしている。

 平日開催のため仕事をされている方は東都大学のリーグ戦を見ることは難しいと思うが、一度見てほしいと思う。世界の潮流になろうとしている全力疾走の源流は、この東都大学リーグの日々の戦いにあるのである。

 [註]5/9の東洋大対亜細亜大の観戦記は<ホームページ>に掲載しています。

http://kosekijunjihomepage.com/


三嶋一輝(法大)の予想順位は3位?

2012-04-23 12:16:09 | 2012年観戦記・大学野球

◇4月21日(土曜日)くもり
東京六大学リーグ/神宮球場
法政大2-1立教大

 神宮第二球場で行われた10時開始の東亜学園対創価戦が早く終わり、30分遅れでスタートしたこの試合が乱戦(結果は早大13-0東大)ということもあり、この球場に入ったときはまだ6回表の開始前だった。勝敗の興味は既にない。あとは選手の興味だけだが、見たいと思った早大の選手が運よくたくさん見られた。
 投手では横山貴明(3年・右投右打・180/79)、有原航平(2年・右投右打・187/93)、打者では河原右京(1年・三塁手・右投左打・173/76)、吉澤翔吾(2年・遊撃手・右投右打・180/85)、道端俊輔(1年・代打・右投右打・175/82)たちで、抜群によかったのが有原。
 1年春がよく、秋が悪く、というように調子の乱高下が激しい選手で、よく見えたから即いい投手だと言えないところがマスコミ泣かせだが、少なくとも素質の埋蔵量の多さは存分に見せた。投球フォームはスリークォーター。と言ってもありがちな左肩の早い開きがなく、腕の振りが叩き下ろし。ヒジが上がった林昌勇(ヤクルト)を想像してもらいたい。
 ストレートの最速は149キロ。昨年秋くらいから神宮球場のスピードガンは信頼が置けるので、正味の速さと思っていい。変化球は130キロ程度のスライダーがあるが、任されたのが9回の1イニングだけということもあり、ストレート主体で非力な東大打線を楽に抑えた。この調子が続けば、高梨雄平(2年・左投左打・176/74)、吉永健太朗(1年・右投右打・182/80)と3本柱が形成され、他校にとって脅威になることは間違いない。
 第2試合の法大対立大は法大の先発、三嶋一輝(4年・右投両打・176/75)がよかった。4月15日の慶大戦が悪かったので、有原同様、この日よかったから即いい投手と評価できないのが難しいところだが、ストレートの威力、スライダーの威力は大学球界上位と評価してもいい。
 ストレートの最速は147キロ。2回には立大の4番前田隆一(4年・一塁手・右投右打・179/77)の内角にこの147キロをねじ込み、バットを折って遊撃ゴロに打ち取っている。スライダー以外の変化球はフォークボール、チェンジアップがあるが、ほぼスライダー一辺倒と言ってもいいくらい偏る。
 当然、打者はストレートかスライダーに狙いを絞り、立大も中盤、スライダー狙いに切り替えてきたが、捉えきれなかった。変化が早いのでストライク/ボールの見極めは容易そうに見える。ただ、腕の振りが思いのほか鋭いので、右打者は外に逃げるボールゾーンの球でも手が出てしまう。
 今春のドラフト候補で、私は3位くらいの順位なら十分指名があると思った。

[註]4/21の東亜学園対創価の観戦記は<ホームページ>に掲載。http://kosekijunjihomepage.com/