小関順二公式ブログ

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ドラフト1位候補・福谷浩司(慶大・投手)の異変

2012-04-16 09:04:17 | 2012年観戦記・大学野球

 右足内転筋肉離れで出遅れていた福谷浩司(慶大・右投右打・183/95)が4月15日(日曜日)に行われた慶応大対法政大1回戦にリリーフ登板した。「今季絶望的」と紹介する記事もあっただけに大丈夫かと思ったが、ストレートは神宮球場のスピードガンに最速「146」を映し出した。力感もちょっと見には以前と変わらず、胸を撫で下ろしたが、何となくせっかちな投げ方にも見えた。そこで家に戻って昨年の大学選手権当時と「投球タイム」を比較すると、投球フォームに大きな差があることがわかった。

「投球タイム」とは、右投手なら左足が動いた瞬間から、投げた球が捕手のミットに収まるまでの所要時間のことで、福谷のタイムは次の通りである。

◇2011年6/8(大学選手権、東農大生産学部戦)2.45~2.65秒

◇2012年4/15(リーグ戦、法政大戦)1.95~1.96秒

  およそ0.5秒速くなっているのがわかる。ともに投げ方はワインドアップで、見た目の差異はない。ストップウォッチを使わなければこれほど大きな違いがあることに気づかなかっただろう。

 軸足に体重がたっぷり乗ってそれ以降の体重移動がスムーズだった昨年夏と、軸足への体重の乗りが不十分なため上半身が前に(せっかちに)行きたがり、投げ終わったあと体が一塁側に流れ、結果的にボールが右打者の外角方向に集中していた昨日の差異――もし右足内転筋肉離れが原因なら、完治するまでマウンドに上げないほうがいいと思う。

 よかったのは105、6キロのスローカーブ。腕が振れて変化は真縦。昨年までのカーブは115キロ程度の横変化だった。体が完全に直り、緩急を縦横に駆使する福谷を私は見てみたい。

[註]慶大対法大の観戦記は<公式ホームページ>に掲載

http://kosekijunjihomepage.com/


島袋洋奨(中大)、微妙な今季3勝目

2012-04-12 15:21:26 | 2012年観戦記・大学野球

 

◇4月10日(火曜日)晴れ

東都大学リーグ/神宮球場

中央大8-4日本大

  選抜大会準々決勝が行われていた4月1日、島袋洋奨(中央大・2年・左投左打・173/71)が東都大学リーグの開幕戦、東洋大戦で延長15回を完投し、21奪三振を記録したとスポーツ新聞に紹介されているのを大阪で読み、里心がついた。

 日刊スポーツによると、「1試合最多奪三振は92年秋の日大・門奈哲寛が対国学院大戦、02年秋に日大・堤内健が専大戦で奪った18個が最高。参考記録では78年秋に東洋大・松沼雅之が国士舘大戦の延長14回で22個を奪っており、それに匹敵する記録だった」と紹介されている。昨年とどこがどう変わったのか、興味津津でこの日、神宮球場を訪れた。

 1回表の投球前、丁寧に歩測してステップする場所をならす姿がまず印象的だった。試合が始まると、走者の有無に関係なくセットポジションで投げる姿に注目した。島袋の投球フォームで最も特徴的なのは、大きく体を横回転させる“トルネード”。これをやめ、セットポジションで投げるということは意識が制球重視に向かっているということであり、これも非常に評価できる。

 力6分くらいの脱力感で投げ、ストレートの最速は144キロ。変化球は120キロ程度のチェンジアップがあり、これをスライダーのような感覚で多投する。たとえば、9回無死満塁で日大の4番村田穏行(3年・三塁手・右投右打・177/83)を打席に迎えたときの配球は次の通りである([ ]内の数字は球目)。

[1]外角チェンジアップ(見逃し)[2]内角ストレート(見逃し)[3]外角低め143キロストレート(ファール)[4]内角143キロストレート(ファール)[5]外角低め126キロチェンジアップ⇒中前へ2点タイムリー

 ストレートが続いていたので村田は「次は変化球」と凡その見当をつけることができた。そして、変化球はチェンジアップが多かったので、その軌道だけを待つことができた。難しいコースでも対応することができたのはそういうことである。深読みすれば3、4球目のファールもチェンジアップを待っていた形跡がある。中大バッテリーはスライダーを選択してもよかった。

 7回まで日大打線を1安打に抑えていたが、8回に1点入れられ、緊張感がなくなったのかもしれない。この時点で8対1と大量得点差がついていたので、降板させてもよかったと思う。

 

[註]駒大対青山学院大戦の観戦記は<小関順二公式ホームページ>に掲載

http://kosekijunjihomepage.com/

 なお、ストップウォッチランキングもそのつど<ホームページ>に掲載しています。