発砲されたらジグザグに逃げろ!
1943年のナチス統治下にあったフランス。ユダヤ人の子供たちが親と別れ、支援組織が秘かに運営する児童施設に匿われていた。ある児童施設で13歳の少女ファニー(レオニー・スーショー)が幼い2人の妹エリカ、ジョルジェットと共に入所する。まもなく、密告者によってナチスの魔の手が近づいてくると判断し、マダム・フォーマン(セシル・ドゥ・フランス)が経営する施設へと移る子供たち。
それでもなお、ナチスの影はちらついてくる。再度の逃避行を始める前夜に、フォーマンは子供たちにフランス人ぽい名前を与えて、彼らに復唱させるのだった。もしかすると、うっかり本名を言ってしまう子供がいるんじゃないかと思っていたら、みんな健気にフォーマンの言いつけを素直に守るのです。どこに向かうかと問われたら必ず「林間学校に行く」と答えるように教えられ、とにかくスイスまで逃げなくてはならない。5歳くらいの小さな子にしたって、ナチスの怖さがどんなものか知らないハズなのに、自分を守ることに懸命になる。このいじらしさがまた涙腺を刺激する。
フォーマンはアンヌマスに到着すれば合流できるから!と、ナチスが乗り込んだ列車から子供たちを引き離すように奮闘し、自らが偽造パスポートで最大限の演技をする。橋が爆破されたとかで、貨物列車に逃げ込む子供たち。この駅では料理人の兄さんと離ればなれになってしまい、年長でもないのにフォーマンからは「あなたがリーダーよ」と告げられたファニーは怪訝そうな顔をしながらも皆と共に貨物に紛れるのだった。
列車、トラック、徒歩と、様々な移動手段を使ってスイス国境を目指す9人の子供たち。17歳のバイオリンを弾く17歳の少女はドイツ訛りがあるため、喋れないふりをしていたり、自分たちの命を守る本能が働いている。ユダヤ人を売って自らが助かろうとする密告者のいたり、彼らを助けてくれる優しい人もいる。旅に出てからはひたすらにユダヤ人であることを隠しているファニーたちだったが、この人なら助けてくれると確信すれば「私たちはユダヤ人です」と身分を明かす潔さ。この言葉には驚かされ、胸にぐさりと響いてくるのです。
子供たちの演技は幼いながらも素晴らしい。「うんちコアラ」とか、子供らしい発想でふざけてる様子や、空腹のため森の中の赤い実を食べて腹を下したり、過酷な逃亡生活の中でも自然な振る舞いが臨場感を出していて、つい観ている者もも子供たちの仲間入りしてしまいそうになる。終盤までハラハラさせられるし、上映時間も96分とお手頃サイズ。過酷ながらも清涼感のあるロードムービーでした。
★★★★★
目力はほんとにありましたね~
やはりリーダーに任命されたからでしょうか。
年長者じゃなくてもリーダーに選んだフォーマンもえらい!