砲弾1発はいくらですか?命ひとつはいくらですか?
冒頭から難民の集団映像、劇場を住居とする難民、カタリーナクラスの大雨で水没してしまう村。そして海岸で大量のシーツを干し、銃弾に倒れる男・・・衝撃的なほど悲しくも美しい映像によって3時間弱の映画が短くさえ感じられた。
この映画のために、『シテール島のへの船出』、『ユリシーズの瞳』、『永遠と一日』の3本でテオ・アンゲロプロス監督を予習しました。アンゲロプロスの代表作『旅芸人の記録』さえ見てないのに、偉そうなことは何も言えないのですが、上記3本とは明かに違いがありました。彼独特のフィルム長回しは健在ですが、観客に行間を埋めさせる技法とでもいうのでしょうか、静かな展開が続くので、余計なカットは必要ないとバランス優先で作ってあると思われるのです。例えば、ニコスがアレクシスをバンドに誘う台詞、空爆(集落が焼け焦げたシーン)、不当逮捕の原因、アレクシスと恋に落ち双子を出産するエピソード等々は存在しません。すべて観客に想像させるのです。
そして、人々の歩調の相違。上記3本はいずれも老人が主人公なので、歩く速度が微妙な不自然さを保っているのに対し、この『エレニの旅』では若者が主体となるので通常スピードなのです。言いかえれば、上記3本はロメロゾンビ、この映画は走るゾンビ。そのくらいの差があります。
もう一つの相違点は回想シーンや幻想的なシーンの排除。むしろ戦争の悲惨さを現実問題として提起するため、現実描写に力を注いだのではないでしょうか。公式サイトで知ったのですが、ギリシア神話をモチーフにした壮大なドラマの予定を3部作として分割したこと。これが今までの彼のスタイルを若干変化させたような気がするのです。また、水の引いた湖に実際の村を建造するという大掛かりなセッティング。迫力ありすぎです。
エレニから見たギリシア現代史のはずだが、実際の視点は恋人アレクシス中心。アコーディオンの腕を買われて音楽家としてアメリカに旅立つまでが印象的です。そしてヨーロッパ全土に広がるファシズムによって、一般庶民が戦争の犠牲となる姿。戦火の中でも音楽を愛し、海岸でアレクシスの作った曲ををバンド仲間が演奏するシーンには涙いたしました。
終盤の二人の息子が兵士として敵味方に分かれてしまうところなどはちょっと急ぎ足でした。もっと描いてあったら最高の映画になったと思います。反戦映画にはしたくなかったのでしょうか?ちょっと残念。
★★★★・
冒頭から難民の集団映像、劇場を住居とする難民、カタリーナクラスの大雨で水没してしまう村。そして海岸で大量のシーツを干し、銃弾に倒れる男・・・衝撃的なほど悲しくも美しい映像によって3時間弱の映画が短くさえ感じられた。
この映画のために、『シテール島のへの船出』、『ユリシーズの瞳』、『永遠と一日』の3本でテオ・アンゲロプロス監督を予習しました。アンゲロプロスの代表作『旅芸人の記録』さえ見てないのに、偉そうなことは何も言えないのですが、上記3本とは明かに違いがありました。彼独特のフィルム長回しは健在ですが、観客に行間を埋めさせる技法とでもいうのでしょうか、静かな展開が続くので、余計なカットは必要ないとバランス優先で作ってあると思われるのです。例えば、ニコスがアレクシスをバンドに誘う台詞、空爆(集落が焼け焦げたシーン)、不当逮捕の原因、アレクシスと恋に落ち双子を出産するエピソード等々は存在しません。すべて観客に想像させるのです。
そして、人々の歩調の相違。上記3本はいずれも老人が主人公なので、歩く速度が微妙な不自然さを保っているのに対し、この『エレニの旅』では若者が主体となるので通常スピードなのです。言いかえれば、上記3本はロメロゾンビ、この映画は走るゾンビ。そのくらいの差があります。
もう一つの相違点は回想シーンや幻想的なシーンの排除。むしろ戦争の悲惨さを現実問題として提起するため、現実描写に力を注いだのではないでしょうか。公式サイトで知ったのですが、ギリシア神話をモチーフにした壮大なドラマの予定を3部作として分割したこと。これが今までの彼のスタイルを若干変化させたような気がするのです。また、水の引いた湖に実際の村を建造するという大掛かりなセッティング。迫力ありすぎです。
エレニから見たギリシア現代史のはずだが、実際の視点は恋人アレクシス中心。アコーディオンの腕を買われて音楽家としてアメリカに旅立つまでが印象的です。そしてヨーロッパ全土に広がるファシズムによって、一般庶民が戦争の犠牲となる姿。戦火の中でも音楽を愛し、海岸でアレクシスの作った曲ををバンド仲間が演奏するシーンには涙いたしました。
終盤の二人の息子が兵士として敵味方に分かれてしまうところなどはちょっと急ぎ足でした。もっと描いてあったら最高の映画になったと思います。反戦映画にはしたくなかったのでしょうか?ちょっと残念。
★★★★・
アンゲロプロス監督の作品を見る時は体調を整えていかないと、睡魔に襲われそうになる瞬間がありますよね?
結構見るのに精神力のいる作品でした。
映像の素晴らしさ(シンメトリー多用)と哀切漂う音楽ですっかりやられてしまいました。
3本も予習なさって尊敬いたします!
何箇所かでかなりやばかったのです、睡魔。
でも、予習した3本に比べると集中して観ることができましたね~
無駄な長回しがないというか、独特の映像のおかげですっきり目が覚めました。
やはり圧巻は洪水シーンですよね?
ニューオリンズも思い出してしまうし・・・
kossyさんのブログでお勉強したことが2つ。
「エレニの旅」のベースにはやはりギリシャ神話のモチーフがあるということと、大学生の頃、友人が大絶賛していた「旅芸人の記録」がこの監督の作品だったということ。自分で調べればよさそうなものですが…
3本も予習見するなんてほんとすごいです。
観客は30人ほどでしたけど、みなさん静かでした。何人か眠ったに違いないと想像するのですが、いびきは聞こえてきませんでした(笑)
公式ページにはかなりネタバレなストーリーとギリシア神話について書いてありました。これは観てから読めばいいかと思います。
カンヌ映画祭の常連監督だけに、いい作品がいっぱいあると思うのですが、今のところ俺的には一番かなぁ。三部作になるらしいので、決定はしませんけど・・・
予習ってほどじゃないのです・・・たまたまケーブルTVのムービープラスで特集をやってたものですから・・・
この映画のためにアンゲロプスを3本予習ですか?
kossyさん、やはりただものじゃない。
初めてアンゲロプロス作品を観るときは注意が必要ですよね。
前日に十分睡眠をとって・・・とか(笑)
予習というほどでもなく、ただテレビで見ることができたので、チャンスだと思いトライしました♪
「エレニの旅」金沢でも公開ですか。
こういう作家映画というのは僕はとても好きで、アンゲロプロスの映画が来るというだけで落ち着かない毎日を過ごしていました。
見た後も、あの圧倒的な映像にしびれいまだに印象度の高い映画です。
ひょっとしたら今年のベスト1かも。
いい加減ギリシャの国情も宗教も文化も分からないといけないのに、そこはアバウトに見てます。
でも、ギリシャの映画は文明の香りがしますよ。
そこが素晴らしい。
では、また。
商売柄、つい歴史ものや、政治的にいろいろ絡んでくるものには、ついついのめりこんでしまいます。さすが、アンゲロプロスでした。
かってにBMさしてもらってました。ご了承くださいませ。
さすがです。
1位ですかぁ。
ギリシアの雰囲気だけで十分です。政治的なものは俺も何もわかっちゃいません。
大学で選択のギリシア語まで勉強していたのに・・・さっぱりです(笑)ちなみに数少ないAを取ってたりします。
>sakurai様
エレニが国を意味する言葉・・・すごい洞察力です。
そうなのか・・・
なんとなくわかってきました!
そういう意図があったのですね。
石川県ではアンゲロちゃんの映画もやるんですね。
それに比べて長野県は・・・新党より脱ダムより映画をくれって言いたいです、と微妙に政治話
私的には反戦という狭い思想(立派だけど)の中にとらわれず、涙にむせぶ人間と歴史の無情さとかで、ぽわわーん、としたベールに覆われていた感じが素晴らしかったと思います。ぽわわーんってバカ丸出しな言い方ですいません。
視点ということで考えると、エレニの視点、アレクシスの視点それぞれエモーションびんびんでツボだったのですが、なんといっても魂だけ抜け出し、時空を浮遊しているアンゲロっちの視点で全て統一されていて良かったのかな・・と思いますです。
私の今年度ベスト当確の作品でした。