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追憶

2017-06-26 20:25:52 | 映画2017
 刑事、被害者、容疑者となる3人はそれぞれ親に捨てられ、喫茶店“ゆきわりそう”を営む涼子(安藤サクラ)と常連客の光男(吉岡秀隆)の世話になっていた。涼子にはヤクザの男がつきまとい、子どもたちはいつもいじめられていた。ある時、幼い篤、啓太、悟の3人はその男を殺そうと計画を立てる。しかし、子どもの力では到底及ばず、助けに入った涼子がそのまま突き刺さったナイフを深く刺し男を殺してしまうのだ。「あんたたちこのことを忘れてしまいなさい。今後はバラバラになって二度と会うんじゃないよ」と言い、一人罪を被って服役する涼子。

 東京で婿養子に入り義父のガラス会社を継いだ悟(柄本)は、経営難のため輪島に住む啓太(小栗)に無心するため富山を訪れていた。そこで彼は刑事になっていた篤に25年ぶりに偶然出会った。そして翌日死体として発見されたのだ。銀行の袋とともに・・・

 富山、石川が舞台となった作品(方言はほぼ富山弁)。喫茶ゆきわりそう、啓太の住居、工事現場は石川県輪島市、他は富山県といったところか。ともかく全体的に暗いイメージが残り、『ゼロの焦点』なんかに似ている。その象徴されている暗さは、幼なじみ3人が共通して持つ過去の隠さなければならない事件を表し、3人それぞれの家族の問題をも表現しているように思う。刑事になっていた篤にはほぼ別居状態の妻(長澤まさみ)と、自分を捨てた母親(りりィ)との確執。悟には借金まみれの会社。啓太は初めての子を宿す妻真理(木村文乃)や、義父が裕福そうだったから順風満帆な生活が窺えるが、篤が容疑者だと考えたため暗い雰囲気もある。さらに出所した涼子が3年前に事故に遭い障がい者となって、福祉施設で涼子を世話する光男の姿がさらに追い打ちをかけるほどだ。

 幼なじみが殺人事件の被害者、容疑者、担当刑事になるという構図が面白く、さらに過去の事件に対するそれぞれの思いも推測され、感情線のもつれが美しい夕陽にさらされていく様子が心地良い。特に篤と啓太の贖罪には方向性が違うものの、過去を背負っている男気のようなものが感じられた。もうちょっと時間が長ければ重厚な映画になっていたに違いない。

 終盤、篤が悟と会っていたことがわかり、捜査本部から外されることになる。しかし、幼なじみとして事件の真相を探ろうと篤が啓太を訪ね、突如真理の具合が悪くなり病院へというシークエンス。同僚刑事たちも彼らを追いかける。そこに真犯人逮捕の情報が入る。そこで、啓太は篤に真理の過去についても語るのだ。妻真理は両親のことを知らずに里親に出されていたのだが、彼女の母親は涼子であり刑務所で生んだのだ。父親は刺し殺されたヤクザ。そこまで涼子のことを想っていたことを篤は知り、自分よりも過去を背負っていたのだと理解する。

★★★★・

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