ヤケクソもこれ兵法の一つ也。
宣伝文句にある「10万の敵にたった1人で挑む。」は釣りなのかもしれませんが、それ以上の収穫がありました。中国戦乱の時代に“非攻”を唱える墨家という集団があり、大国・趙によって落城間近と思われた小国・梁が彼らに援軍を求めたというオープニング。日本にも“墨守”という言葉が存在するほど、守りに徹する思想なのですが、援軍としてやってきたのは革離(アンディ・ラウ)たった1人。しかし、梁国の人間も次第に彼を信用するようになるというストーリーです。
ヒロインとして登場するのが「ベルばら」でいうとオスカルのような女剣士逸悦(ファン・ビンビン)。なんと、そのヒロインにも糞を撒かせる主人公革離。オスカルに糞を・・・なんて妄想していたら、これが意外にも防戦に役立ってしまうし、敵に毒水を川に流されても当然のことのように読み取ってしまう戦略家でもあったのです。何しろ趙の軍勢は10万なのですから、どうやってこれを防ぐのか?と、前半は奇想天外な作戦が見所になっています。
対する趙国の大軍を率いるのは巷淹中(アン・ソンギ)。本来ならば北方の大国・燕を攻めるのが大儀でもあり、ちょうど国境沿いに存在する梁が邪魔だったわけです。「こんな小国、さっさとかたづけて燕へ行こうぜ」というおごり高ぶりのせいで革離の策にことごとくはまっていきます。撤退を余儀なくされた巷淹中。しばらく休戦かと思わせておいて、更なる奇策で梁を攻めようとはりきるものの、革離だって負けてはいない。頭脳戦の様相を呈してきたり、相手の偵察を敢行して危機に陥ったり・・・息もつかせぬほど展開が激しくなるのです。
壮大な戦闘シーンもさることながら、やがて梁国内での疑心暗鬼や裏切りなど、王や腹心と革離たちとの人間関係が悪化するドロドロ政変ドラマへと変貌します。墨守に徹して自国を守ることが目的だったのに、いずれは大国主義に成り行く醜い心が浮き彫りにされる。「愛するものを間違ってる」という言葉通り、革離よりも権力を握っている者がそれを間違ったらとんでもないことになることは、そのまま現代の世界にも当てはまる。平和を愛する革離にしたって、「敵をいっぱい殺す」という方針が間違っていたと苦悩するところがいい。敵だって人間なんだ。むやみに殺していいわけがない。
防衛庁が防衛省になり、専守防衛であるはずの自衛権の概念さえ変えられようとしているきな臭い日本。他国を侵略しないための拠り所である憲法第9条まで変えようとする動きのある日本。そんな現状だからこそ、2千年以上も前にこうした思想があったことを研究すれば、人を傷つけずに平和になる可能性があることも知らねばならないと思う。人を殺さずに墨守することの明確な答えはなかったけれど、そうしたヒントをこの映画は与えてくれる。しかも、日本の原作で3カ国4地域による合作の映画だということも意義あることです。“非攻”と“兼愛”が平和のための永遠のテーマでありますように・・・
★★★★★
墨家十論
兼愛
自分を愛するように他人を愛せ
非攻
侵略と併合は人類への犯罪
天志
天帝は侵略と併合を禁止する
明鬼
鬼神は善人に味方して犯罪者を処罰する
尚賢
能力主義で人材を登用せよ
尚同
指導者に従って価値基準を統一せよ
節用
贅沢を止めて国家財政を再建せよ
節葬
贅沢な葬儀を止めて富を蓄えよ
非楽
音楽に溺れず勤労と節約に励め
非命
宿命論を信ぜずに勤勉に労働せよ
宣伝文句にある「10万の敵にたった1人で挑む。」は釣りなのかもしれませんが、それ以上の収穫がありました。中国戦乱の時代に“非攻”を唱える墨家という集団があり、大国・趙によって落城間近と思われた小国・梁が彼らに援軍を求めたというオープニング。日本にも“墨守”という言葉が存在するほど、守りに徹する思想なのですが、援軍としてやってきたのは革離(アンディ・ラウ)たった1人。しかし、梁国の人間も次第に彼を信用するようになるというストーリーです。
ヒロインとして登場するのが「ベルばら」でいうとオスカルのような女剣士逸悦(ファン・ビンビン)。なんと、そのヒロインにも糞を撒かせる主人公革離。オスカルに糞を・・・なんて妄想していたら、これが意外にも防戦に役立ってしまうし、敵に毒水を川に流されても当然のことのように読み取ってしまう戦略家でもあったのです。何しろ趙の軍勢は10万なのですから、どうやってこれを防ぐのか?と、前半は奇想天外な作戦が見所になっています。
対する趙国の大軍を率いるのは巷淹中(アン・ソンギ)。本来ならば北方の大国・燕を攻めるのが大儀でもあり、ちょうど国境沿いに存在する梁が邪魔だったわけです。「こんな小国、さっさとかたづけて燕へ行こうぜ」というおごり高ぶりのせいで革離の策にことごとくはまっていきます。撤退を余儀なくされた巷淹中。しばらく休戦かと思わせておいて、更なる奇策で梁を攻めようとはりきるものの、革離だって負けてはいない。頭脳戦の様相を呈してきたり、相手の偵察を敢行して危機に陥ったり・・・息もつかせぬほど展開が激しくなるのです。
壮大な戦闘シーンもさることながら、やがて梁国内での疑心暗鬼や裏切りなど、王や腹心と革離たちとの人間関係が悪化するドロドロ政変ドラマへと変貌します。墨守に徹して自国を守ることが目的だったのに、いずれは大国主義に成り行く醜い心が浮き彫りにされる。「愛するものを間違ってる」という言葉通り、革離よりも権力を握っている者がそれを間違ったらとんでもないことになることは、そのまま現代の世界にも当てはまる。平和を愛する革離にしたって、「敵をいっぱい殺す」という方針が間違っていたと苦悩するところがいい。敵だって人間なんだ。むやみに殺していいわけがない。
防衛庁が防衛省になり、専守防衛であるはずの自衛権の概念さえ変えられようとしているきな臭い日本。他国を侵略しないための拠り所である憲法第9条まで変えようとする動きのある日本。そんな現状だからこそ、2千年以上も前にこうした思想があったことを研究すれば、人を傷つけずに平和になる可能性があることも知らねばならないと思う。人を殺さずに墨守することの明確な答えはなかったけれど、そうしたヒントをこの映画は与えてくれる。しかも、日本の原作で3カ国4地域による合作の映画だということも意義あることです。“非攻”と“兼愛”が平和のための永遠のテーマでありますように・・・
★★★★★
墨家十論
兼愛
自分を愛するように他人を愛せ
非攻
侵略と併合は人類への犯罪
天志
天帝は侵略と併合を禁止する
明鬼
鬼神は善人に味方して犯罪者を処罰する
尚賢
能力主義で人材を登用せよ
尚同
指導者に従って価値基準を統一せよ
節用
贅沢を止めて国家財政を再建せよ
節葬
贅沢な葬儀を止めて富を蓄えよ
非楽
音楽に溺れず勤労と節約に励め
非命
宿命論を信ぜずに勤勉に労働せよ
この考えが世界中に広がってほしい!
これ、評価割れてるみたいですね。。。
わたしはだめでしたぁ、、、、
中国の歴史は奥が深いですね。
軽く原作が日本だから面白いかもと思って観に行きましたがこれだけのものが作れるとは!これからのアジア各国の合作に期待したいです。
いいものを見た気がしました。さすが中国4000年!
渋くて壮大で、楽しめました。
ヒロインの扱いには驚きましたが、そこもサプライズってことで(笑)
実は私は恥ずかしながらこの映画を観るまで墨家という集団が存在したことを知りませんでした。
こんな世の中だからこそ、非攻、兼愛の精神をもつこの墨家の思想を見直すべきなのかもしれませんね。
この映画で一番驚いたのは逸悦の声でしたけど(笑)
この後半がおもしろかったですね~。
前半は、なんだか見せ方がごちゃごちゃして言われてみたら、おもしろい戦術を取って戦っていたのにあんまり印象になかったりします^^;)
ビンビンちゃんは、私はあんまり評価していないんですけどね~~。
必要ないような気がするし^^)
アジア発信の非攻の誓い。
いいですよね。
アメリカにまでこの願いが届くのはいつになることやら。ですね(笑)
>mig様
賛否両論、多分そうでしょうね。
単純に武侠ものとして楽しむならだめだろうし、歴史だけとかアクションだけでもだめだろうし・・・
俺は墨守に徹するという画期的な内容だけに満足でした~
>ゆかりん様
中国史はほんとに長い・・・
なんたって紀元前の話だし、
秦によって統一される前の話だし。
史料も残ってないほど昔なんですよね。
アジア合作、これからもどんどん作ってほしいです!
>微妙さま
さすが中国四千年の歴史!(笑)
こんな考えが昔からあったなんて驚きでした。
墨家なんていうのも名前だけしか知らなかったし、戦乱の世で随分と失われたものがあったんだろうな~と思います。
女性の立場も弱かったんでしょうね。映画でも奴隷がいっぱいいたということもわかるし・・・
>Hitomi様
あ、俺も墨家なんて知りませんでしたよ。戦乱の世に思想だけで遊説する人たちがいたことは知ってましたけど、具体的なものは何一つ・・・
まぁ、かなりの脚色はあるのでしょうけど、守りに徹するという根本は一緒なのかと。
逸悦の声、彼女も吹替えだろうし、アンディ・ラウだって本人じゃなさそうだった。
北京語と広東語の違いさえわからない俺は何もいえません(汗)
>ぷちてん様
あっさり敵をやっつけるという内容かと思っていたら、後半に人間の醜さが浮き彫りになりました。
戦術に関してびっくりしたのが、硫黄攻撃!
ううむ、こりゃすごい。
いや、何よりびっくりしたのは糞守備でしたけど(笑)
ビンビンちゃんの扱いに関しては、報酬をもらわないことを徹底させるために登場したのかな。ハリウッド映画のようにならないところも面白かったりして・・・
…アンディ・ラウの声って吹き替えだったんですか?
うわ。ちょっと声が違うかな?とは思ってましたが。気がつきませんでしたよ。
この映画では北京語?なのかな。
言葉の響きがきれいでした。
…じゃあ、アン・ソンギももちろん吹き替えですね(笑)
すごくいい作品だったとは思うんですけど、アホな君主が最後に笑うというのは到底受け入れがたい結末でした。革離は梁を助けるべきではなかった、としか思えませんでした。
暇があったら見に行ってきます。