エンディングがなんとも言えない余韻を残してくれた。
サイードとハーレドという二人の若者。自動車修理工場でのやりとりを見ても、どこの国にでもいそうな今風の男たちだ。違っているのはそこが被占領地であること。平和な世の中で過ごしていると、彼らの心の奥底に潜んでいるものが見えてこないのかもしれない。
まず驚かされたのが、普通に帰宅しようとしている人たちの近くで爆撃音がこだまするシーン。被害を被らないように皆一様に体を低くするのですが、その直後には何もなかったかのようにまた歩き出す・・・このような出来事は日常茶飯事なのだろう。
そうしたパレスチナ問題が残るイスラエル占領地。サイードとハーレドがテルアビブでの自爆攻撃の任を与えられる。未来のある二人が仕事や家族や恋愛を顧みて悩み続けるのかと思っていたら、「英雄になれる」と喜んで命令を受けるのです。真っ先に思い浮かべるのが第二次大戦中における日本の特攻隊。その自爆という行為によってすぐに問題が解決するわけではないのに、積み重ねて礎となることが名誉であり、平和への糸口になると教え込まれているかのようだった。
「死をおそれない者は天国に行ける」と信じている彼ら。先の見えない占領地においては、生きる希望よりも未来の祖国を祈る気持ちのほうが強くなるのかもしれない。また、圧倒的な軍事力を持つイスラエルに対抗できるのは自爆テロしか手段がなかったのかもしれない。しかし、英雄の娘であるスーハの言葉からもわかるように、解決の手段はどこかにあるはずなのです。
映画の作りとしては、かなり真面目に取り組んであった。フレームの端でコーヒーだとかエキストラのちょっとしたアクセントも面白いし、一見して平和そうな場所から路地に入ると爆撃痕の残る建物が平然としているアンバランスさも見事に捉えていた。イスラエルへと侵入する場面だとかに緊迫感がなかったことが残念だったけど、二人の心情変化が対照的だったことが脚本の力を感じさせてくれました。
パレスチナ問題を真摯に取り組んだ映画、しかもパレスチナ内部から、自爆テロ志願者からの描写なんて珍しい。欧米では敬遠されるような内容であるかもしれないけど、ファシズムによる戦火の中で戦っていたレジスタンスと意志は共通であろうし、歴史が変われば彼らの存在は尊い犠牲者として受け入れられることになるのでしょう。手段は間違っていても、平和な世界を夢見ていただけ。遠く離れた見知らぬ国であっても一傍観者であってはいけないのだと痛感させられました・・・
★★★★
サイードとハーレドという二人の若者。自動車修理工場でのやりとりを見ても、どこの国にでもいそうな今風の男たちだ。違っているのはそこが被占領地であること。平和な世の中で過ごしていると、彼らの心の奥底に潜んでいるものが見えてこないのかもしれない。
まず驚かされたのが、普通に帰宅しようとしている人たちの近くで爆撃音がこだまするシーン。被害を被らないように皆一様に体を低くするのですが、その直後には何もなかったかのようにまた歩き出す・・・このような出来事は日常茶飯事なのだろう。
そうしたパレスチナ問題が残るイスラエル占領地。サイードとハーレドがテルアビブでの自爆攻撃の任を与えられる。未来のある二人が仕事や家族や恋愛を顧みて悩み続けるのかと思っていたら、「英雄になれる」と喜んで命令を受けるのです。真っ先に思い浮かべるのが第二次大戦中における日本の特攻隊。その自爆という行為によってすぐに問題が解決するわけではないのに、積み重ねて礎となることが名誉であり、平和への糸口になると教え込まれているかのようだった。
「死をおそれない者は天国に行ける」と信じている彼ら。先の見えない占領地においては、生きる希望よりも未来の祖国を祈る気持ちのほうが強くなるのかもしれない。また、圧倒的な軍事力を持つイスラエルに対抗できるのは自爆テロしか手段がなかったのかもしれない。しかし、英雄の娘であるスーハの言葉からもわかるように、解決の手段はどこかにあるはずなのです。
映画の作りとしては、かなり真面目に取り組んであった。フレームの端でコーヒーだとかエキストラのちょっとしたアクセントも面白いし、一見して平和そうな場所から路地に入ると爆撃痕の残る建物が平然としているアンバランスさも見事に捉えていた。イスラエルへと侵入する場面だとかに緊迫感がなかったことが残念だったけど、二人の心情変化が対照的だったことが脚本の力を感じさせてくれました。
パレスチナ問題を真摯に取り組んだ映画、しかもパレスチナ内部から、自爆テロ志願者からの描写なんて珍しい。欧米では敬遠されるような内容であるかもしれないけど、ファシズムによる戦火の中で戦っていたレジスタンスと意志は共通であろうし、歴史が変われば彼らの存在は尊い犠牲者として受け入れられることになるのでしょう。手段は間違っていても、平和な世界を夢見ていただけ。遠く離れた見知らぬ国であっても一傍観者であってはいけないのだと痛感させられました・・・
★★★★
この映画は、そのバックグラウンドをきちんと知らないと、きちんと理解できないですね。
私なんか、無知なまま鑑賞してしまったので、「なんか、思ったほどのことはなかったな」なんて感想を持ってしまいました。
「それにしても、自爆テロをやめて戻ってきても、居場所はあるんだろうか」とかね。
しかし、後でゆっくりパンフレットを読むにつれ、ことの重大性が理解できてきました。
そもそも、この街は塀で囲まれていて、外に出ることもできない。教養があってもまともな人生を送れる余地がない彼らを突き動かすのは、八方塞がりの政治状況をなんとしても変えたい、という願いなのですね。
このパンフレットのなかで、足立正生さんという元赤軍派の人が監督と対等に論議していて、驚かされました。
また、監督も「本当に日本人には感謝している。あのときのあの閉塞感を打破してくれたのは日本人だ」などと発言していて、「そんな時代」があったことを改めて認識してしまった次第です。
自分らの知らないところの現実を見せ付けられました。
こんにちは。
俺もよくわからない部分があって・・・ようやく把握できたのが映画も中盤になってから・・・(汗)
パレスチナの問題。冒頭でもうちょっと説明があってもよかったかなぁ。とにかく占領されている地だということ、なんだか戦時中の日本軍のことまで考えてしまいました。
パンフを買わなかったのが失敗・・・なかなか興味深い内容のようですね~
逃げ出せない占領地。こういう状況下に置かれないと、彼らの気持ちがわからないのかもしれない。平和で自由な時代に生きていると鈍感になっちゃいます。
もっとこのテーマで映画を作って、世界中に広めてもらいたいものですよね。
>くまんちゅう様
お久しぶりです。
自爆テロの実態と、彼らの心理。よくわかるようで、わからない。もっと他の手段はないのかと悩んでしまいました。
日本の特攻隊をも思い出してしまう映画でしたけど、指導者というのはいかなる時代も自分がかわいいんでしょうね。
>マヌケ様
そうですよね。自爆テロなんて言葉は使わないように心がけたいものです。
俺は中東問題に関しては無知。貴重なご意見、本当に助かります。
小さな地域から抜け出そうにも、銃を持ったイスラエル兵があちこちにいるし、悲惨な状況を伝える手段さえ与えられない。ほんとうに辛いことです。
しかし、軍事力や経済力があったら、更に多くの犠牲者を出し、悲しみ・憎しみ・恨みは深まる。
恨み合う者同士が顔をつきあわせ、同じ土地に住むことはできず、追い出すか、新たな国境を引くしかなくなる。
肥えるのは死の商人の懐のみ。
日本は戦時中に多くの命を奪い、失った。
被爆し、今も苦しむ方がいる。
経済大国となった今も言いなり。
だが、戦争を知らない世代の私には、アメリカに憎しみはない。
複雑で、簡単に解決できる問題ではないが、アカデミーノミネートで注目され、少しでも好転してくれたらと思いました。
イスラエル側の映画はあっても、パレスチナ側の映画はほとんどないですもんね。
アメリカ人にもっとも見てもらいたい映画のひとつなのかもしれません。
日本も映画においてはアメリカ主導で発展していったという経緯があって、アメリカを告発するような内容のものは少ないんですよね。
映画人も戦争を知らない世代が大半を占めてるだろうし、古きを知る人は若い世代へ残していってほしいですよね。
テルアビブに入り込むこと自体は、簡単なんでしょうね。侵入行為のところをドラマチックに描くと、ちょっと戦争アクションみたくなってしまうのかもしれません。
そっかぁ~意外と簡単なのですね。
ドラマチックになると、普通のアクションになるのかもしれませんね。
パレスチナ側から撮っているから、映画を撮ること自体大変だったんでしょうね~