草原会長の近刊「武道文化としての空手道」を読了した。武道について内容や歴史について細かく丁寧に考察されていた。さすが文科省の元役人と感心できる内容だった。物知り物語としてはかなり興味深く一気に読むことができる。200ページくらいで1,700円税別と高価だが、買って損はしないと思う。
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だがしかし、草原氏は日本空手協会の現在会長の任にある。その観点から見るともう一つ深入りして欲しかった、と自分は感じた。どの点が物足りなかったかと言うと、第一に武道としての空手の本来内包する矛盾と武道文化を継承しようとして確立した組織の矛盾についてである。武道としての空手は、氏もご指摘されているように教育的空手、競技空手、生涯空手などいろいろな面を内包しているが、それらは互いに矛盾しているところもある。また組織的に言っても、空手道という技術を高める部門とそれを運営していく部門とはその手段や規模などにおいても、一致しない部分が多い。これらの点においてその対応や対策、考え方などもう少し具体的なことをご指摘いただきたかった、と残念に思った。