手話通訳者のブログ

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手話の読み取りはパズルに似ている

2016-04-02 05:26:02 | 手話
ろう者のRさんの通訳のため病院に行った。
待っている間、Rさんが話しかけてきた。


「この町に転居してきて10年。×××はすぐ怒る。私、いつも悩む」
へー。もう10年になるんか。×××って、誰?


×××は読み取れなかった手話。
しかし、この手話、よく見る手話である。「本当」という手話。
でも、上記の文に「本当」を当てはめても意味が通じない。
誰か、人物を表していると思われる。そこで、この表現をそのまま使って、「誰のこと?」と尋ねたわけ。


「男。私を殴る。悲しい、泣く、いつも」
ご主人がRさんを叩くの?
「結婚、昔、別れた、ひどい男」


ここまで会話して、ようやく、冒頭の×××の意味が明確になった。
つまり、離婚した元夫、という意味だ。
そして、いま暴力を受けているのではない。忘れられない記憶としての苦い思い出である。
元夫のことを表すのに、どうして「本当」の手話を使うのか、は不明。
不明のままでよい、と思っている。

例えば、読み取り通訳をしている時なら、意味不明の手話があっては困る。
しかし、上記のように待ち時間の雑談の場合、突っ込んで聞いてはならない、と思っている。

地元に、
「あの人、手話はうまいけど・・・」
と、ろう者に嫌われている手話通訳者がいる。
相手のことを根掘り葉掘り聞くのだ。
嫌がられて当然だ。