久しぶりに友人の話でもしようか。
多分私が16歳の頃だっただろうか。友人の両親がもっているリゾートマンションに招待され、
クラスメイト4人で新潟にある岩原スキー場へ出かけていった。
私は両親がスキー場で知り合ったということもあり、
物心ついた頃から、スキーを習っていた。
私はやはり、3歳からスキーをしていたということもあり、一番最初に滑り出し、途中で友人を待って、
また友人が来たら、滑り出すという繰り返しだった。
私は遅れてくる友人を眺めながら昇っていくリフトに乗った小粒のスキーヤーたちをぼんやりと眺めていた。
何度か繰り返しているうちに、そのリフトを利用する常連のスキーヤーを認識するくらい
私たちも繰り返し同じコースを滑っていた。
変わらないリフトの一方通行をずっと眺めていると、とまっているように見えた乗客が動き始めた。
なにやらストックを振り回しているようだった。
「誰か知り合いでもいるのかな?」
と思った私は、別段気にもせずぼんやりとしていた。
すると今度は
「おーい、おーい」
と声を張り上げて叫んでいた。
さすがの私も周りをきょろきょろして該当者を探すと、
周囲には見事に誰もいなかった。
ひょっとして自分のことかと思い、私もストックを振り上げて、返事を返した。
「単なる挨拶だったのか・・・」
と思った私はまた滑っては友人を待つという繰り返しをしていた。
そして、リフトの上から挨拶をしてきた彼らは私が友人を待っているときに
必ずリフトに乗って頂上まですすんでいた。
そんな秘密のやり取りを見ず知らずの人と続けているうちに、友人がいち早く気づき
きゃっきゃしながら、
「なになに、かっこいい人でもいたの?」
といってきた。
「いや、顔見えないし・・・ただストック振ってきたから、振り返しただけ」
とかぶりを振った。
そして、そろそろ冷え込んできたので、帰ろうかと話していると、私たちの横に4~5人のスキーヤーが
ザザーッと、雪しぶきを上げて止まった。
「こんにちはー。元気ー?」
と彼らは私たちに声をかけてきた。
私はその喋り方や態度になぜか不快感を覚えた。
友人たちはやはり、楽しそうに会話をしていたのだが、
私はどうしてもそこから彼らと行動を共にするのだけは嫌だった。
友人たちはさっき私がストックを振り合っていた相手だと思い込んでいた。
私は確信は持っていなかったけれど、今目の前にいる彼らじゃないと、なんとなく感じていた。
彼らはしつこく、カラオケだのに誘ってきて、友人たちもすっかりその気になっていたが
私は頑としてゲレンデから動こうとしなかった。
続く