もちろんこいちゃんといっくんにさせるためで、以前から甘いものを制限するなど歯には気を遣っていた。
特にいっくんは歯磨きが嫌いで口をしっかり磨けないこともあり、この際にフッ素で虫歯になりにくい歯にしてもらおう、とその知人と待ち合わせてフッ素塗布をして貰うことにした。
老人保健施設の為、老人が多く集まり、この集まりの説明、金太郎の寸劇やストレッチ、歌などが盛り込まれ、それが済んでからようやく歯科衛生の話などが始まった。
「歯をみがきましょ」の歌をみんなで歌い、うずら卵にフッ素を塗布し柄の色落ちを実験するなど、子供に判りやすいようにゆったりと進む。
フッ素を含む食品や、キシリトールを含む食品のクイズなどが始まった頃、とうとういっくんは退屈でうろうろし始めた。
並べられた椅子を渡り歩きながらあっちへキョロキョロ、こっちへキョロキョロ。
「困ったな…」と思っていたらやっと「それではフッ素塗布の方は…」と別のスペースに移動するように言われて「ホ…」。
そこでは歯に優しいおやつの作り方と試食会。
ちりめんじゃことチーズをご飯にまぜ煎餅型にしてホットプレートで焼いたものや、ホットケーキミックスに豆腐を混ぜてあげたものなどで、美味しくて、おかわりも沢山させてくれるしこいちゃんもいっくんも嬉しそうによく食べた。
そのあと各自持参した歯ブラシで歯磨きをして検診を受ける。
そしていよいよフッ素塗布となった。
こいちゃんはおとなしく検診を受け、リンゴ味のフッ素薬に大喜びし、すんなりと終了。
ところがいっくんは違った。
検診で口を開けさせようとした途端大泣きをし始め説得しても脅しても聞く耳持たずで逃げようとする。
仕方ないので無理矢理体を押さえ、検診を済ませた。
虫歯もなく安心したが、次はいよいよ本番のフッ素塗布。
「これのために来たのだから…」と必死でリンゴ味をアピールするも泣きやまず、またも体を押さえつけてフッ素薬を付けた歯ブラシでブラッシング。
やっと終わったときには親も汗だく、いっくんも鼻水とヨダレと涙でぐちゃぐちゃ。
「えらかったねー」と抱き上げて帰ろうとした瞬間、いっくんはやっちゃったのだ。
私の服に向かって「げぇ~………」と。
ショックのあまり私は何も言えなかった。
だって、先ほど「塗布後30分は飲食しないでください。フッ素が流れて落ちますので。」とおっしゃっていた…。
いっくんももちろん可哀想だったが、私は引きつりながら開口一番に聞いたのだ。
「あの…フッ素は………」
大慌てでタオルを持ってきた女性が私の服を拭きながらすまなさそうな顔で「……直後でしたからね…流れてますね……」と言った。
私は14時からの小一時間何をしていたのだろうか…。
帰路、試食会で食べたじゃこチーズ煎餅や豆腐ドーナツを全て吐き戻したいっくんは清々しい表情で、それはもう気持ちよさそうにベビーカーの風を楽しんでいた。
参加賞に貰ったキシリートールガムと消しゴムの詰め合わせを嬉しそうに握りしめニコニコ。
私はどっと疲れが出てがっくりとなってしまいほとんど無口だった。
帰宅するとこいちゃんといっくんはキシリトールガムを食べたがった。
ガムも制限しているため食べさせたことがなかったが、せっかくだからと与えると、なんとこいちゃんは1センチ四方はあるだろうガムを舐めた後ごくりと飲み込んでしまった。
「甘かった…けど、ちょっと苦しかったよ…」と複雑な顔をして言った。
詳しい食べ方を教えなかった事をひたすら謝った。
いっくんには「食べないように!」と念押ししてガムを食べさせたが、しばらくしてからそろそろいいだろう、と「口から出して」と言うと「ひゅー……」と空気だけを出す仕草をした。
こちらもしっかり飲み込んでいた。
その後は二人とも胃からわき上がるミントの香りを気持ち悪がり、水を飲んだり、塩を舐めたり…
子供達にとっても、親にとっても散々な「初のフッ素塗布」はこうして終わった。
次に誘われても、もう行くかどうかは判らない………
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