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『ホワイトハウスのピアニスト ヴァン・クライバーンと冷戦』 ナイジェル・クリフ

2018年03月06日 | 読書日記

『ホワイトハウスのピアニスト ヴァン・クライバーンと冷戦』 ナイジェル・クリフ(松村哲哉・訳)
¥4,800+税 白水社 2017/9/10発行
ISBN978-4-560-09567-6

本文470頁、索引・注と典拠・参考文献で67頁という大部。図書館で借りて読んだのだけど、カウンターで手にしてちょっと怯んだ。
が、読み始めたらぐんぐん引き込まれて、さすがに一気読みとは言わないまでも、この量にしてはずいぶん早く読めました。

ヴァン・クライバーン。
クラシック・ファンならもしかしたら知ってるんだろうけど、私はそもそもピアニストの名前って知らないもんな……。イマ、BGMとしてクライバーンの演奏をナクソスで再生してます。このピアノにアメリカとソ連の女の子たちが熱狂したのね。エルヴィス・プレスリーに負けない人気だったとか。クラシックのピアニストが。時代もあるとはいえ、すごいことだなあ。

ソ連が、国の威信をかけて開催した第一回チャイコフスキー・コンクールで、アメリカ人でありながら優勝してしまったヴァン・クライバーン。一次予選、二次予選で聴衆を魅了し、本選では熱狂的なファンが会場に詰めかけ、モスクワ中が彼の噂でもちきりになった。

クライバーンを語るには、時代背景を語らねばならない。
当時は冷戦の真っただ中。ソ連がアメリカに先駆けて人工衛星を打ち上げ、宇宙開発競争と軍拡競争はエスカレートするばかり。

レーニン時代のソ連と、文化大革命時代の中国の怖いこと。劉詩昆の運命に涙せずにはいられない。

クライバーンは、いい意味で政治に無関心で、それ故に米ソの架け橋であり続けた。
アメリカ人でありながら、チャイコフスキーを愛し、ロシアの国と国民と音楽を愛した。ソ連もまた彼を愛した。
そしてまた、ホワイトハウスで歴代大統領のために演奏し、アメリカに益した。
アメリカとソ連に翻弄されたピアニスト。

 

> […]RCAビクターから発売されたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番のレコードは、[…]ビルボード・LPチャートのトップに輝き、しかも七週連続で首位にあった。ビルボードは「ビクターでは昨今、プレスリーとクライバーンが同じように扱われている」と報じた。(291-292頁)

> 1987年、[…]ソ連の大統領ミハイル・ゴルバチョフとライサ夫人が12月に首脳会談でワシントンを訪れる予定になっており、その際、ディナーの後の夜会でヴァンにピアノを弾いてほしいと要望してきているというのである。[…]
> 重い雰囲気に包まれていたパーティは、声を張り上げての歌の集いへと変貌した。[…]
> 大統領夫妻が書記長と一緒に部屋を出ていき、ヴァンが書記長夫人をエスコートする。副大統領のブッシュはその様子を見ながら貴族的な戸惑いの表情を浮かべ、「ホワイトハウスでこんな光景を目にするのは初めてだ」とつぶやいた。(451,460頁)

 

いやー、おもしろかった!


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