「そもそも企業価値とは」というタイトルなのですが、お持ちの方はご覧いただきたいと思います。
Q&Aの冒頭部分を紹介しますと、
Q:そもそも企業価値とは
A:ニッポン放送のような上場企業の株式は、日々市場で株価がつく。株価に発行済み株式数をかけた金額が株式時価総額だ。いわば会社の値段で、株主にとっては株式を売って回収できる金額に当たるもので「株主価値」ともいう。
と書かれています。
ここで注目すべきは「企業価値」=「株主価値」と捉えている点です。
実は平成16年度の診断士2次試験(事例Ⅳ)で「D社の企業価値を算出し、買収提示額の是非を問う」問題が出題されました。
非常に悩ましい問題で、受験校の解答もさまざまです。
*事例Ⅳの問題をお持ちでない方は下記からダウンロードできます。
*私の再現答案も張っておきます。
事例Ⅳの問題はこちら
http://www.nipponmanpower.co.jp/add/train/cyuushou/answer2004-02/data_files/cyu_2nd_q4_041012.pdf
事例Ⅳ第3問の振り返りはこちら
http://blue.ap.teacup.com/motokuni/65.html
M&Aで企業の買収価格を評価する場合、通常は株主価値で判断するのはご承知のとおりかと思います。
ファイナンスの理論では「企業価値から負債価値(正確には長期負債価値)を差し引いた株主価値」で判断するのが定石です。
これをそのまま適用すれば
企業価値:2,325百万円(FCF93百万円をWACC4%で割り引く)
負債価値:648百万円(時価ベースのものを使用するのが理想的だが、情報は与えられていないため、B/S上の簿価を使用せざるを得ない)
よって株主価値は2,325百万円から648百万円を差し引いた1,677百万円ということになり、買収提示額1,500百万円は妥当ではないという結論に至ります。
設問に戻りますと、まず「企業価値」を求めさせ、それから「買収提示額の是非」を問うています。
「企業価値」は2,325百万円であり「買収提示額」は1,500百万円です。
そのまま解釈すれば2,325百万円と1,500百万円で買収の是非を判断することになります。
ここで日経新聞のように「企業価値」=「株主価値」と解釈するならば1,677百万円と1,500百万円で比較を行うことも可能です。
いろいろ調べて見たのですが、学者によっては「企業価値」と「株主価値」の違いをあまり区別せずに用いているケースがあるようです。
今回の出題者が「企業価値」=「株主価値」と捉えて作問していたならば、1,677百万円もありえるような気がしています。
なおこの問題では法人税率がわからりません。そのためFCFを「営業CF-維持的投資」で求めざるを得ず、営業CF算出で営業外損益を含めている(負債の利子分の調整が済んでいる)と見る考え方もあります。
このあたりが診断士試験をさらに難しくしているのでしょうね。
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